小説

選ばれし者達(59)


香織が落ち込み、なかなか復活出来ない姿をみて、愛子はしばらく考えていた。

「ねぇ香織、元気出してよ。この間香織がくれた無料食事券で、おいしい物を食べに行こうよ。」
愛子は見かねて提案をしてみた

「行く!行く!、絶対に行く。」
香織は愛子の話を聞くと今まで落ち込んでいたとは到底思えない満面の笑顔で目を輝かせて答えた。

愛子は作戦大成功と思いつつ、復活の早さに関心していた。

そんな事をしている間に香織の家に着いた。愛子にとっては香織の家に来るのはかなり久しぶりの事だった。

香織は手慣れた様子で玄関の鍵を開けたが、まだ鍵を探している様子で、なんと玄関に鍵が3つもある事に愛子は驚いていた。一方、姫はよく来ているのだろうか、鍵の事は知っている様子で、黙って待っているようだった。

「お待たせ!、さぁ入って」
香織と共に家に入り、早速、香織の部屋に向かった。

「ちょっと待っててね。飲み物、ジュースでいいかなぁ?」

「そんな、気を使わなくていいよ。」
愛子がそういい終わると同時位に、「香織、ちょっとパソコン借りるね。」姫はそういうといきなりパソコンを起動させていた。

香織がジュースを持って戻ると姫はパソコンで香織のサイトにアクセスしているのはわかった。
しかし、ちらりと見えた画面は愛子には初めて見る画面だった。

「ねぇ、こんな画面有ったっけ?」
愛子が香織に尋ねた。

「あぁ、これね。愛子にはあまり見せたく無かったんだけど、愛子の成績表。」

「え?成績表?」

「そう、《民》の能力の覚醒状況とか書いてあるの」
香織が説明すると

「うん。問題無いみたいね。ちょっとバランスが悪いけど、合格ラインには行っているみたいだし、こっちから報告して置くね。」
姫は香織にそういうと、何やらファイルを添付してメールを出した様だった。

「ねぇ、どういう事?」
愛子は訳が分からず、香織に聞いてみた。

「そっか、説明していなかったっけ?《民》の合格認定には二人が合格を出すのが必要なの。と言う事で、私と姫の二人で、正式に《民》として合格と言う事で…まぁ正式には、まだちょっと残っているんだけど、今までの成績から問題ないのは分かっているから、見込み合格だけどね。後で愛子のおばあちゃんから正式な通知が来る事にはなるから。」
香織はニコニコしながら答えた。

「わかった。じょあ一様合格なんだね。」

「一様だよ?」
香織はなんだか強調をしている様だった。

「さて、じゃあ始めようよ。」
話を聞いていた姫が突然言い出した。

「始めるってなに?」
愛子はきょとんとしていた

「馬鹿ね、あんた何しにここに来たのよ。」
香織が愛子に話しかけると愛子は目的を思い出した。

「あ、そうだった。では香織先生、よろしくお願いします。」

「もう、愛子ったら、今日の先生は姫なんだって説明したじゃない?」
香織がそういうと姫は咳ばらいをした。

「あ、そういうば、そんな事言っていたね。」

「もう、愛子ったら…」

「それで、香織は私が教わっている間、何してるの?見物?」
愛子はふと気になり聞いてみた。

「残念だなぁ、肝心な事忘れてない?」
突然、姫が割り込んで言った。

「え?なに?」
愛子は気付いていないようだった。

「二人だけじゃ、無理でしょ?」
姫がヒントを出したが、愛子はまだわからない様子だった

「まぁいいや。とりあえずは始めようよ。まず、オーラの球を飛ばす奴からね。では姫様どうぞ」
香織は言った。

「ご紹介に与りました姫です。では始めます。」
姫が説明を始めた。

「まず、手に集中させて集める様にする。ある程度集中したら、指先に集める。更に指先1センチ位先に、集中を移してから、球が出来たら、意識で飛ばす。以上おわり。」

「ちょっと、そんな事言われても…」
愛子は戸惑っている様だった。

「大丈夫だってやってご覧よ。」

「うん。」
そういうと愛子は言われた様に集中を始めた。
指先に集中するまでは難無く出来たがやはり離れた場所に集中する事は難しい様だった。

「まぁいい線してるから、後は家で練習してよ。」

「え?後は家で?」
愛子はてっきり出来るまで付き合ってくれるかと思っていたので拍子抜けした感じだった。

「では次。相手の意思をコントロールする奴だったよね。オーラの球を飛ばす方法は球が出来た段階で、意識を込めて飛ばせば出来るから、この説明でわかるでしょ?と言う事で、いよいよ肝心な奴ね。」
姫がここまで話すと何故か香織は下を向き元気を無くした様に愛子には見えた。

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選ばれし者達(58)


「ひ、姫?!」
香織は目を丸くしていた。

「うん。だって髪型をオカッパにしてごらんよ。どうみても日本人形みたいでしょ?」
愛子は理由を説明した。

「確かそう見えないとも言えないけど…ねぇダーリンはどう思う?」
香織は姫と呼ばれる事になったダーリンに聞いてみた。

「私は別に…だってダーリンの前の名前、香織知ってるでしょ?それに比べたらね。」

「確かにそうだけど…」
香織は返事に困っていた。

「ねぇ、香織、ダーリンの前は何だったの?」
愛子は気になり聞いてみた。

香織はダーリンに確認をとるように目を見てから答えた。
「きみとか、奴とか、お前とか…」

「何それ?」
愛子は驚いて聞き直した。

「だからね。はっきり決まってなくて適当だったの。それでいろいろ大変で、なんとかたどりついた呼び方がダーリン。そういう事」
香織は事情を説明した。

「そうなんだ。じゃあ姫でいい?」
愛子は改めて聞いてみた。

「OKです。」
ダーリン改め姫は了承した。

「じゃあ、愛子、姫、私の家に行こう。」
香織は促した。

「ちょっと、これじゃ愛子姫になってるんだけど…」
愛子は香織に指摘した。

「ははは、確かにそう聞こえるね。じゃあ、別名、お姫様。」
香織は勝手に呼び方を考えてしまった。

「お姫様じゃちょっと呼ぶには恥ずかしいでしょう…」
愛子か指摘した。

「うーん。困ったなぁ。じゃあお嬢様。」
香織が悩んだ末に言った。

「まぁいいかな?」
愛子が言った。

「じゃあ、愛子、ダーリン改め姫、時々気分によりお嬢様。行こう。」
香織が促した。

「ちょっと、天気予報じゃないんだからさぁ…」
愛子は笑いながら答えた。

「とりあえず、なんでもいいから行きましょう。時間が勿体ないですから…」
ダーリン改め姫はこう言うと漫画喫茶を出で3人で香織の家に向かった。

途中、愛子は田中先生の痴漢の話しを思い出し、姫に聞いた。
「ねぇ、姫?この間の田中先生の痴漢の時の被害にあった子って、姫の下で田中先生を監視する為に近くにいたって聞いたんだけど、本当?」

「ええ。まさか、直接被害に遭うなんて、思いもよらなかったけど…。」
姫は特に隠す事もなく答えた。

「ねぇ、痴漢に遭う位、可愛い人なの?」
愛子はずばり核心を聞いてみた。

「ううん、全然。だって監視をするために近くにいる役目にした《草》だよ。始めから目立たない子だから、今回使う事にしたんだけど…」

「そうなんだ…」

「だっ胸ないし…背も小さいし…まるで小学生。」
姫は愛子の胸を見て話した。

「え?私より無いの?」
愛子は改めて自分の胸を見て言った。

「うん。本人はすごく気にしているんだけどね。髪型をショートにして、パンツを履かせたら男の子に見えると思うよ。」

「そうなんだ…」

「うん。一様痴漢に遭った時はスカートを履いていたけど、ミニだった訳じゃないし…私からしたら本当に謎。」

「それってもしかして、ロリコン?」

「わかんない。でもそうなら有り得るかもね。でも今となってはわからない話しだけどね。」
姫はつぶやいた。

会話に一段落が付くと、愛子は思い出した様に突然香織に声をかけた。
「ねぇねぇ香織。この紙、覚えてるでしょ?」
愛子は朝、愛子の机に叩き付けていった『馬鹿』と書いてある紙を取り出した。

「これがどうかしたの?」
香織は愛子が何を言おうとしているのか全く分からなかった。

「何?これがどうかしたの?」
姫はそういうと愛子から紙を奪い取った。

「ん?何?」
こう言ったと思った途端に姫は大爆笑をし始めた。

「ちょっと、か、香織…お腹苦しい…パ、バンツまる見えだし、カエルみたいに…あぁもうダメ…」
道の真ん中で大爆笑し始めた姿に通行人が数人振り返ったが、姫は笑いが止まらない様子で笑い続けていた。

「ちょっと何よ。」
半分ムッとしながら香織がさらに奪い取ると、香織はやっと理解したようだった。

「派手にまぁ香織はドジなんだから…」
姫は香織に半分笑いながら言った。

「そんな事言っても、あの時は急いでいたし…でも、まさかバンツがまる見えなんて…」
香織はまさか、転んだ時にスカートがめくれ上がりパンツが見えた事実を知り赤面していた。

「大丈夫、後ろに誰もいなかったんだし、そんな変なパンツじゃないじゃない?香織らしい可愛い、花柄だし…」

「そんな事言っても…」

ここまでの会話を聞いていた愛子が話しかけた。
「ねぇ見えてるの?」

「あぁごめん、愛子はまだ見えないんだよね。大丈夫、見える様になるから…」
香織は愛子に説明したが、愛子は状況が見えない事に少し寂しさを感じていた。

「いいなぁ」
愛子は一人つぶやいていた。

「それにしても、まさかこんなのが残ったとは思って無かったなぁ…」

「でも香織、こういう事ってよくある事だよ?転んだ瞬間とか無防備になるから。」
姫は必死に香織を慰めていたが、香織には姫にドジな姿を見られた事と、バンツの事まで言われ落ち込んでしまった。

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選ばれし者達(57)


香織はすぐに愛子が必死に笑いを堪えている事に気付いたが、何がそんなに面白いのか、全くわからなかった。

原因は多分自分だろう事は推測出来たが、理由はわからず、必死に考えていた時に担任が入ってきてしまってそれっきりになってしまった。

「みんな、おはよう。欠席はいるか?いたら手をあげて教えてくれな。」
担任は張り詰めた空気を和らげたかったのだろうか?ベタなギャグを言ってはみたが、誰ひとり反応する人はいなかった。

完全にスベッた事を掻き消す様に話しを続けた。
「まぁいろいろ聞きたい事があるとは思うが、全校集会の後に説明する。とりあえずはこれから、講堂で校長が説明をするから、急いで移動をして欲しい。以上!」

それだけ言うと担任は教室を出て行った。

余りにもそっけない話しにあっけにとられた感じだったが、仕方なくゾロゾロと講堂に移動を始めた。

講堂は普段月1回程度の朝礼や特別な行事がない限りは使われる事のない場所で、普段は鍵がかけられ誰も入れないのに、掃除だけは毎日させられる為に生徒にとっては嫌な想い出を皆が持っている場所でもあった。

時間になり全校集会が始まったが、生徒は飛び交った噂の話しでもちきりでなかなか静かにはならなかった。しかし、校長は雑踏を無視をするかの様に、予め用意してあった文章を丸暗記した物をただ読み上げている感じだった。

愛子はいかにも形式的な話しに学校のメンツの問題なのかな?などと考えながら話しを聞いていたが、すでに知っている内容で、別にどうという事もなく、ただただ退屈な時間にすぎなかった。

全校集会が終わり教室に戻ると、担任から、プリントが配られた。いかにもマニュアルと言った内容で、校外での対応について事細かに書いてあった。

愛子は昨日からのバタバタを知っていただけに、馬鹿馬鹿しい小学生なみの対応マニュアルに思わず笑いそうになっていた。

「いいかぁ?このマニュアルに従って、校外では対応する事。当たり前だが、こういう紙が配られた事は秘密にする事。さらにまさかそんな奴はいないとは思うが、対応を思い出せないからと言って、その場でかばんから取り出して読んだりするなよ。あくまでも、この内容は頭に入れておく事。お前達の頭なら出来ると信じているからな。」

担任は普段より声を張り上げ生徒全員に言った。

「さて、質問はあるか?」

「それで田中先生は今どこで何をしているんですか?」
突然生徒の一人が質問をした。

「それなんだが、正確には誰もわからない。ただ捕まった日にすでに退職扱いになっているから、詳しくは誰も知らない。一部の先生の噂話しだと、実家の家業を継ぐらしいという話しはあったらしい。」

「実家って何の仕事をしているんですか?」

「詳しくは知らないが、洋服を売っているらしいぞ。」

「え?あの体格で洋服を売るんですか?あんな怖い外見でお客さん逃げたりしませんか?」
生徒の間で笑いが起こった。

「そこまでは俺は知らん。ただ、家庭科の先生が顔負けする位、洋裁は得意らしいぞ。」
この話しに教室はざわめいた。

「あの、やくざみたいな怖い体育の先生が裁縫がうまいんですか?」
生徒の中では笑いが起きていた。

「そうらしいぞ。なんでも昔に大会で優勝した記念に、部員全員にマスコットを作ってプレゼントをした事があったらしい。何でも渡す時は卒業した先輩が作ったとか言ったらしいんが、こっそり家庭科室のミシンで作っていたのを見た生徒がいたらしい。」
教室の中ではさらに騒がしくなりあちこちで信じられない話しに笑いが起きていた。

「ほら静かにしろ!もう辞めてしまった先生だ、みんなもいろいろと口外はしない様にな。わかったか?」
担任はこう言って話しを締めた。

「さて、これからだが、昨日連絡した通りに父兄に説明会を開く事になっている。話しの内容はさっき話した校長の内容とほぼ同じだが、父兄なりにいろいろと言いたい事があると思う。生徒には聞かれたくない話しもあると思うので、この話しが終わったら、すぐに下校をすること。後1時間位したら、教室棟には鍵をかけセキュリティロックをかける事になっているからな。
わかっていると思うが警報を鳴らした奴は、それなりにそれなりの事があるからな。これで話しは終わりだ。すぐに下校をするように。」
ここまで話すと、日直に挨拶の号令をかける様に指示を出し、挨拶をすると解散になった。

愛子は朝、香織にメールを貰った様に直接病院にリハビリに向かい、その後にいつもの漫画喫茶に向かった。

漫画喫茶に入ると香織はまだ来ていなかった。仕方なくパソコンを起動させ香織の掲示板にアクセスをしてみた。

掲示板は大体いつものメンバーがいて田中先生の話しで盛り上がっていた。
愛子が病院に行っていた時間に書き込まれた記事を読み終えて、次に何をしようか適当にサイトを見ていた時に香織が一人の少女を連れてやってきた。

「愛子、やっぱり愛子の方が先になったね。」
香織はいつものように見つけるなり話しかけてきた。

「うん、そうなったね。横のかわい子ちゃんがダーリンさん?」

「そう。紹介するね。ダーリンさんです。」
香織は一緒に来た少女を紹介した。

「こんにちは、自称ダーリンです。あなたが愛子さんね。よろしくね。」
ダーリンは今時滅多にみない90度のおじぎをした。

「ねぇ、愛子、ダーリンの新しい名前考えてくれた?別にダーリンのままでも構わない事は構わないんだけど…」
香織は以前から頼んでいたダーリンの新しい名前について愛子に聞いた。

「うん。いろいろ悩んだんだけど、今、会った第一印象でひらめいたから、それにする。」

「何?」

「ジャーン!姫ってどう?」

「姫?!」

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選ばれし者達(56)


翌日、愛子はいつも学校に向かう時間に家を出た。

他の生徒より遥かに早い時間。学校に向かっている途中に香織からメールが入った。
【ヤッホー。愛子は今学校に行く途中なのかな?学校が終わったら、秘密の隠れ家で待っててね。迎えに行くから、それからダーリンに逢わせるね。】

【隠れ家ってあの漫喫?私今日病院にいかないといけないんだけど…】
愛子はすぐに返信をした。

【うん。そこだよ。病院なんだ、そっか。わかったからとりあえずは、いつもの席でパソコンで遊んでいてちょ。こっちもちょっと時間が掛かるから】

【わかった】

愛子はいつもの様に巡回をしてから教室に入り、手早く荷物をしまうといつもの隠れ場所に向かった。

意外にも、今日に限り他の生徒が早く学校に来ている様だった。

愛子が時間を潰してから教室に戻ってみると、教室は田中先生の話題で盛り上がっていると思っていたが、何故だか異常なほどに静かな感じだった。

香織は珍しくまだ学校にはついていなかった。

珍しいなぁと思いつつ、何気なく窓の外を眺めていた。


香織は愛子が学校に着く前にすでに学校に着いていて、直接保健室に寄っていたのだった。

「みゆき先生。今大丈夫ですか?」

「えぇ、大丈夫よ。香織さん、こんな早い時間に来て、私の事が心配になって来てくれたの?」
みゅーみゅーは朝一番に保健室に来た香織の行動が少し嬉しかった。

「それもあるんですけど、この間の話しです。今なら、まさか生徒が来たりしないと思うから、大丈夫かと思って。」

「あぁ、この間の話しね。するとOKが出たと言う事でいいのかしら?」

「はい。本人からは私に任せると言われたんで…。それで先生は誰だかわかりますか?」

「そうね。想像がつかないわ。だって、この間の話しだと香織さんの時より、私が気付きにくい訳なんでしょ?つまり、私がなんとなく香織さんの事に気付いた位なんだから、私にはわからないって事になるじゃない?だから、私にはわからないわ。」

「そうですか…勘で答えるかと思ったんですけど。じゃあ、教えます。実は愛子です。」

「え?愛子さん?!だって、あなたと愛子さんって仲が悪いんじゃ無かったの?確か話しでは、かなりきつく愛子さんに接しているって聞いていたわよ。」

「そうですね。あれは、関係がわからない様にするためのカモフラージュなんです。」

「そんな、信じられないわ。」

「前にも話した様に力の事は秘密にしないといけない事です。それは愛子も同じですが、力の事でいろいろ連絡を取る必要が当然出てきます。その時にどうすれば、他人から怪しまれず二人だけになれるか。一番怪しまれない様にする為に考えた方法です。」
香織はいろいろ考えたんだと主張する様に話した。

「そうなの。確かに呼び出したりする様に見せかけて二人で話しをする機会は作れるわね。」
みゅーみゅーは関心していた。

「はい。おかげでうまくいっています。」

「そう。それで、前にも話したけど愛子さん経由であなたに連絡をとってもいいかしら?」

「はい。それは別に構いません。みゆき先生が愛子を呼び出す事は、この間の事故の事もありますからね。誰も不審に思わないですしね。」

「そうね。あ、それより、そろそろ教室に戻った方がいいわよ。あなた、朝いきなりここに来たんでしょ?いろいろ準備もあると思うし…」

「はい。一様用件も済んだんで教室に行きます。これから先生方いろいろと忙しくなりますからね。先生も頑張って下さい。」

「ありがとう。まずは午後の説明会が難題よね。」

「そうかも知れないですね。では失礼します。」

香織はそういうと保健室を後にすると急いで教室に向かった。

香織が教室に入ってのを見た愛子は、まだ学校に来ていないと思い込んでいた為に驚いた。

香織は小走りで自分の席に戻る途中、愛子の横を通り過ぎた時に【ばか】と書いた、手紙を机に叩きつけた。
その想像以上の音の大きさに教室は一瞬静寂に包まれた。

愛子は手紙を見た瞬間に香織の意図する事がすぐにわかり、手紙を手に取り残留思念を読み取る事にした。

『愛子の事、みゅーみゅーに伝えたから、よろし、あっ!痛ってぇ…やばっスカート…もぅ、洗ったばかりなのに…』

【なんじゃこりゃ?】
愛子は最後の乱れた意識について、意味が分からなかったが、ふと香織の方を見るとさかんにスカートの汚れを払っていた。またよく見るとスカートのヒダに変な後があり、何があったのか、容易に推測出来た。
その瞬間、思わず笑いそうになったのを必死に堪えた。

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選ばれし者達(55)


「香織からの話しじゃないよ。私の方で調べた情報。」
ダーリンは香織の疑問にあっさり答えた。

「あ、そうなんだ。びっくりした。でも可愛いかなぁ??」

「まぁ会えばわかるね。じゃあこっちは明日の準備を始めるから、そろそろ切るね。」

「了解。」
そういうと電話が切れた。

香織は再びパソコンに向かい掲示板の画面を見ていた。

内容は在宅確認の電話が誰まで廻ってきたとか、遊びに行く連絡や田中先生の話題で、盛り上がっていた。


愛子は昼食の後、なかなか勉強をする気持ちになれず、香織同様に、掲示板を眺めていた。

しかし、すでに事実を知っている愛子にとって田中先生の話しは、さほど盛り上がれる内容でもなく、飽きがきていた。

『しょうがない。頑張らないとなぁ、勉強でもはじめるか…』
そんな事をつぶやきつつ、やっと勉強を始める事にした。

夕方になり、再び学校から在宅確認の電話が掛かってきた。
「愛子、はい。OKっと。」

「先生、給料安いのに大変だね。」
愛子は疲れた先生の声を聞き思わず言ってしまった。

「ははは、確かに仕事の割には安いかもな。ちょっと変な事を言うとエッチだの、ひいきだの、言われるしな。」

「そうかもね。」

「さて、連絡事項な、まず明日は普通通りに登校して欲しい。それで、朝、全校集会で今回の事について、校長から話しがある。その後はクラスに戻ってから、詳しい話しと注意事項や質問に答える。それが終わり次第、生徒は下校。と言う事で授業はない。」
担任は、何度も説明しているせいか、すらすらと予定の話しをした

「はい、わかりました。先生、午後は遊びに行ったりしてもいいんですか?」
愛子はすでに知っていた事だが、知らない事にして黙って先生の話しを聞いていた。

「あぁ、一様午後は遊びに行ったり何をしても構わないんだが、いろいろ騒いでいる人もいるから出来たら、家でおとなしくしていて欲しいのが、本音なんだがな。」

「確かに、いろいろありますよね。」

「まぁ、なぁ…。それより、今お母さんいる?」

「あ、ちょっと待ってて」
愛子はそう言うと母親を呼び電話を代わった。

電話は多分、午後からの父兄に対しての説明会についてだと思いながら、会話の内容を聞いていたが、電話がなかなか終わらないので、部屋に戻り、夕食までの時間勉強の続きを始める事にした。

夕食になり、母親の光子は愛子に話しかけた。
「ねぇ、愛子。明日、説明会があるんだって。」


「そうなんだ。私の方は午前中で学校は終わるんだけど、午後は病院に行った後に香織と一緒に遊びに行く予定。」

「あ、そうなの。ねぇ、明日やっぱり行かないとダメなのかなぁ?」
光子は行きたくないのがバレバレだった。

「別に説明会なんだから、どうでもいいんじゃないの?直接、田中先生にお世話になった訳じゃないし、周りが騒いでいるから、仕方なく説明会を開くみたいな感じだし…」

「そうよね。まぁ時間があるから、どうするか考える事にするわ。」

「それでいいんじゃない?」

「そうよね。」
光子はなんだか納得した様子だった。

夕食が終わり、愛子が部屋に戻り、テレビのニュースを見ていた時に香織から電話が掛かってきた。

「もしもし、愛子。勉強してた?」

「うん。まぁね。」
愛子は、実際には全く勉強をしていなかったが、勢いで答えてしまった。

「私は、全然だぁ。それで明日なんだけど、午後休みは聞いたでしょ?」

「うん。」

「愛子、私の家に来ない?昼間に話したけどダーリンに合わせてから、例のあれをやろうと思って話しをつけたんだけど」

「うん。いいよ。始めから香織と会いたいと思っていたし会う事はわかっていたから…それより、すると、とうとう教えて貰えるんだね。」

「愛子、そんな事を言ってもやり方を教えるだけだから、出来るかどうかはまた別の話しだよ?まずはダーリンとの引き継ぎと顔合わせ、それがメインかな?」

「まぁそうだけど、私にとっては、力の使い方の方が重要なんだし…」

「まぁ、気持ちもわかるけどね。」

「ねぇ、そういえばダーリンってどういう人なの?」
愛子は香織からダーリンについて何も聞いていなかったので聞いてみた。

「そうだったね。何も話してなかったね。歳は秘密にして欲しいって事なんで、今は秘密ね。実は私と同じ《探りし者達》の一人だったんだけど、《探りし者達》の下につく《草》を統括出来る人がいなくて、自ら志願してくれた人なの。
つまり、力は私と同じ位。《草》だからと言って力が弱いとかそういう事じゃないからね。れっきとしたBクラスの《民》の一人。

あとの個人的な事は素性は明かせない事になっているから、内緒。こんな感じかな?」

「うん。わかった。じゃあ私達と同じ位の力はあるんだ。」

「まぁそうだけど、実際には私以上の所も沢山あるかな?なんせ《探りし者達》として立派に活躍出来る能力があるんだから…」

「え?香織より上なの?」

「まぁ、得意、不得意の分野があるからね。」

「そういえば、前にそんな話し言ってたね。」

「うん。でも私が何が不得意なのかは内緒だよ。」

「いいじゃん。教えてよ。」

「ダメ!でもまぁ明日にはバレちゃうかな?多分ダーリンが話しをしちゃうと思うし…」

「そうなんだ。じゃあ、今でもいいじゃない。」

「ダメ。お楽しみはとっておかないと…」

「全く、香織は相変わらずなんだから…」

「いいじゃん。明日までなんだから…。あ、それより明日、朝、ちょっと愛子の時間に合わせては行けないから、学校、一人でいい?」

「うん。別にいいけど…」

「ありがとう。ちょっと、こっちもいろいろあってね。愛子のこの先の事を考えての事なんだけど、はっきりしたら、教えるからね。」

「うん。別にいいけど…」

「うん。まだはっきりはしていない事なんだけどね。じゃあ、明日学校でね。」

「うん。じゃあ明日ね。」
愛子がそういうと電話は切れた。

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選ばれし者達(54)


愛子は香織との電話が終わるとすぐに母親に昼ご飯は後で食べる事を伝え、病院に向かっていた。
約1時間のリハビリを終えて、病院から家に向かって歩いている時に愛子の携帯電話に香織から電話が入った。

「もしもし、愛子?今大丈夫?」

「うん。今病院の帰りで家に向かって歩いている所、そういえば、担任からの在宅確認の電話終わったの?」
愛子は、もう電話が来ている頃だと思い聞いてみた。

「うん。終わった。私も事情を知らないふりをして聞いてみたけどやっぱり教えてくれなかった。」

「やっぱり、そうなんだ。」

「うん、それでね。みゅーみゅーがなんだか私に話しをしたいって事で、みゅーみゅーと話しをした。」

「へぇ、みゅーみゅーから話しをしたいなんて言うなんて珍しいね。」

「うん。実はちょっと私の話しの刺激が強すぎてショックだったみたい。なんか不安になって話しをしたかったんだって。」

「あ、なるほどね。」

「うん、それでいろいろ話をしたんだけど、愛子さぁ、今度みゅーみゅーに愛子が私の仲間だって事、話してもいいかなぁ?」

「え?私と香織の関係を話すの?そんな事して大丈夫なの?まぁ香織の考えがあっての事だから、私は別に構わないけど、秘密の方は大丈夫?」

「うん。秘密の方は大丈夫。ちょっとね。私がやりたい事をするのにみゅーみゅーに愛子の事を知ってて貰った方が後からいろいろ説明するより楽かな?って思ってね。」

「まぁ香織を信頼してるからその辺は任せる事にする。」

「わかった。じゃあタイミングをみてみゅーみゅーに話をすることにするね。あとね、みゅーみゅーからこれからの予定を聞いたんだけど、明日午後は生徒は休みになるんだって。それで午後、時間大丈夫?」

「へぇ、午後は休みなんだ。病院に行った後なら大丈夫だよ。」

「よかった。明日ね。学校、生徒は午前中だけで帰らせて、午後から父兄に説明会をするんだって。それでね。明日ダーリンに愛子を合わせようと思っているんだ。それで、もし、もっと時間があれば、前に例のダーリンから教えて貰った方がよく分かるって話をした球にして飛ばす方法とか、教えて貰おうかな?って思ってるの。」

「へぇ、いよいよ教えて貰えるんだね。ねぇそれが出来たら私、一様一人前って事にになるんでしょ?」

「うん。そうだね。まぁ、正式にはまだちょっと先だけど大体はこれで終わりになるかな?」

「そうなんだ。これで香織先生のシゴキも終わる?」

「ははは、シゴキはまだまだかな?。」

「え?そうなの?まぁ仕方ないかぁ…あ、香織、そろそろ家に着くから一旦切るね。携帯電話を持ったままだと、玄関が開けられないし…」

「うん。わかった。また夜にでもまた電話するね。これからダーリンと話しをしないといけないしね。」

「うん。わかった。じゃあね。」
愛子はそう言うと電話を切った。

家に入ると母親が昼食を作って待っていた。遅くなった昼食を食べた後、勉強をしなくちゃと思いつつも、なかなか気分が乗らずに、パソコンを起動して、しばらく、あちこちアクセスをして時間を持て余していた。


一方、香織は愛子との会話の後、とりあえず、愛子と合わせたいと言う事をメールにしてダーリンに送信をした。それから、メールの返事を待つまでの間、掲示板を見ることにした。


ダーリンは香織からのメールを自宅で受け取った。ダーリンは昼間アルバイトをし、夜は学校に行く生活をしていた。

メールを見るとメールより直接話した方が早いと思いすぐに香織に電話をかけた。
「もしもし、香織お姉様?」

「もう、びっくりした。メールでもよかったのに…」

「何よ。散々人を待たせておいて、たったの1行メールなんだから…」

「だって、それしか書く事ないし…」

「まぁ、いいわ。それでやっと香織の下から、愛子の下に引き継ぎをすると言う事でいいの?」
ダーリンは以前から聞いていた、ダーリンが仕切っている班の引き継ぎの話しだけかと思っていた。

「うん。それもあるんだけど、まずは顔合わせがメインで、時間があれば愛子に力のコントロールでダーリンに先生になって欲しいんだけど…」

「え?また私が教えるの?まぁ確かに香織が苦手なのはわかるけど、それで例の練習台は?」
実は過去にも、香織はダーリンに同じ事を依頼した事があった。

「今、考え中。」

「あ、そうだ!香織が練習台になろう。どう?」

「ぎょ!えっ私?」

「そう、それなら引き受けてあげる。昔に練習台になってくれた事があったじゃない。変な事を仕込んだりしないからさぁ…」

「確かに前に練習台になったけど、一瞬で落としてくれるんならいいけど、あのじわじわやるの止めてよ。あれやられると、永久に暗闇を落ちていく感覚を味わいながら、意識が飛ぶんだから…」

「ははは、あれね。確かにそうだけどね。私なら一発だけど愛子が出来るかわからないからなぁ…、その時は我慢してよ。」

「そうなんだけど、あれ嫌だなぁ…。」

「いい加減、覚悟をきめなさいって!あんたが愛子の面倒みるって約束したんでしょ?かわいい、弟子なんだから、やらせてあげたら?」

「わかったわ。また、はっきり時間が決まったら連絡する。」

「じゃあ、よろしくね。そういえば愛子って外見って可愛いんでしょ?会えるの楽しみにしているから。」

「うーん。可愛いと言えばそうだけど、私そんな事話ししたかな?」
香織は確か愛子の事については何も話していなかったのに…と思いながら話しをしていた。

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選ばれし者達(53)


電話の保留音はすでに2分近く続いていた。なかなかみゆき先生が見つからないのだろうか?

いい加減、電話を切ろうかと思っていた時に保留音が止んだ。

「もしもし、香織さん?」

「みゆきお姉様、お電話遅いですわよ?」
香織は散々待たされたのでふざけて返事をした。

「ごめんね。いろいろ今コダゴタしてるのは、知ってるでしょ?」

「えぇ、何やら予想外の方向に動いているみたいですね。」

「そうなの。それより、香織さんが始めに話してくれた事。私正直驚いているの。どうしたらいいのか、わからなくて…」

「それより、その話しは秘密なんですから、今ここでその話しをして大丈夫なんですか?」

「あぁ、今、保健室から電話をしているから大丈夫よ。今日は生徒は学校にいないし、先生達は、今、在宅確認や保護者からの電話の対応に追われている最中よ。誰も来ないから大丈夫。」

「それなら、安心しました。それで、話しなんですが、みゆき先生はいつもの様に普通にしていればいいんですよ。確かに、話をした様に物事が動いているかもしれないけど、直接先生に関係する事じゃないし、話しをした通りにすべてが動いている訳じゃないし、ちょっと、先の出来事を知っただけじゃないですか。」

「そうなんだけど、私、動揺しちゃって…」

「確かにいきなり言われて動揺してしまうのは、そうかも知れないですね。でも、これで私の話しを信じて貰えたかと思います。
あとついでに話しをすると、実は校内にもう一人、私の様な力を持っている生徒がいます。その人と私は頻繁に連絡を取っているんで、みゆき先生は、変な心配しなくて大丈夫です。先生の力の事もその人は知っていますから。」

「あらそうなの…。ねぇ、もし、教えられたら誰なのか教えて貰えない?つまりは香織さんの仲間なんでしょ?学校で毎回香織さんを呼び出すのも変に思われるし、仲間なら、連絡する時はその人でもいいでしょ?」

「そうですね。先生は秘密を守ってくれる事だし、もしその本人が教えてもいいと言う返事を貰えたら教えてもいいですよ。でも、先生からしたら以外な人かな?みゆき先生は私の力の事に気付く事が出来たけど、その人は私以上に完璧にコントロールが出来ているんで誰だか聞いたら驚くとは思います。」

「わかったわ。その時は教えてね。それでなんだけど、これから先は成り行きはどうなるの?」

「実は実際に何が有ったかは把握していますが、今学校の置かれている状況までは私もわからないんです。」

「そうなの?私はてっきり全て知っていると思っていたんだけど…」

「元々、私はそっちの力は専門じゃないんで、そんなに完璧じゃないんです。」

「え?そうなの?私はてっきり…」

「まぁ、未来を見るのはどっちかというと不得意の方なんです。と言っても、何に得意なのかとかは、まだ話しをしませんが…」

「そうなのね、やっぱりまだ秘密なのね。」

「それより、私も知りたいんで、今学校がどうなっているのか、教えて下さいよ。」
香織は正確な情報が入らないので聞いてみた。

「そうね。まずは実際に本当は何が遇ったかは知っているわよね?だから、今学校で起きている事を話すわ。本当は秘密なんだけど、香織さんは特別だから。
今は、いろいろ飛び交った噂のせいで、先生達はその対応について、どうするべきか話し合っている最中よ。それで、とりあえず決まっている事を話すわね。

多分、今日の夕方の在宅確認の時に連絡があると思うけど、明日は生徒は朝登校して、全校集会、それから教室に戻ってから、各担任から説明があるわ、その時にこれからの生徒が周りから聞かれた時の対応について説明をする予定なの。
それで生徒は下校して、午後から父兄に対しての説明会を開く事になっているの。

一様、まだ予定を決めた状態で今はどう説明するか、想定される質問とか、対応を考えているみたい。

だからまずは明日の午後は、生徒は休みになるわよ。」

「そうなんですか。わかりました。ありがとうございます。すると、先生はまだこの後、また会議なんですか?」

「そうね。もう少ししたら、会議がまた始まると思うわ。今は在宅確認の為に担任をしている先生方の為に、一時中断に近い状態だから…。
とりあえずは、いろいろ話しをありがとう。また、何かあれば電話をするわね。後、担任の先生が、私が香織さんに私が話しをしたいなんて言って、多分疑問に思ってると思うから適当にごまかしておくわね。」

「はい、わかりました。」
そう返事をすると電話が切れた。

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選ばれし者達(52)


「先生、それより一体何があったんですか?今日学校に行ったら、校門の前で今日は臨時休校だから帰れなんて言われるし。せっかく学校まで行ったのに…」

「なんだ、おまえ学校まで来たのか?連絡網を朝から廻したんだけどなぁ。おまえの家は4番目だぞ、そんなに時間が掛かる筈は無いんだが…」

「先生、甘い!主婦の長電話を知らないでしょう…。私が知ったのは学校についてすぐ親から連絡があったんだよ。だから前の3人で1時間以上は話しをしてるんじゃないの?」

「そっか、余りにも突然の予想外の電話だったからなぁ。いろいろ話しをしたくなる気もわからなくもないなぁ。」

「それで、本当の事はどうなんですか?なんか田中先生が生徒を妊娠させたとか話しがありますけど…」
愛子は聞いた噂の中で1番酷い話しをしてみた。

「え゛…」
担任は言葉が出なかった。

「先生?」

「………」

「先生??」

「……あ、ごめん。そんな話しになっているとはな、事実は明日にでも学校で話す。今は何も言えない事になってるから…。
でも、これでなんでこんなに大騒ぎになったのか分かった。今学校も凄い事になっていてなぁ…」

「凄い事って?」

「悪い、詳しくは話せないんだ。じゃあ、まだ在宅確認をしないといけないから。また電話するな。」
そういうと一方的に電話がきれた。

愛子はそのままになっていた携帯電話を手に取り香織との話しを再開した。
「あ、香織ごめんね。待たせちゃったね。」

「ううん。大丈夫。ねぇ愛子、なに、やっぱり担任?」

「そう、担任。在宅確認だって。」

「そっか、在宅確認かぁ。でも面倒だよね。」

「うん。全くね。校則に在宅確認でいなかったら欠席扱いにする。なんて書いてあるし…」

「全く、面倒だよね。それで何か担任言ってた?」

「ううん。とりあえず、知らないフリをして、何があったのか聞いてみたんだけど、教えてくれなかった。」

「そうなんだ。やっぱり、口止めとかされているのかも知れないね。」

「うん、多分そうだと思う。何でも学校凄い事になっているんだって、何が凄いのかはわからないけど…」

「へぇ、そうなんだ。まぁ何にしても、これだけ噂だの事実だのごちゃごちゃになってると、もうどうにも出来ないし、《草》を使って情報を集めても、多分まともな話しが手に入らないしね。」

「うん。とりあえず、落ち着くまでは、何も出来ないね。」

「ねぇ、愛子はこれから病院に行くんでしょ?」

「うん。ちょっと早いけどね、空いてるうちに行こうかなって思ってる。」

「そっか。私は何にもやること無いからなぁ…、本当に何しようかなぁ…」

「香織は勉強大丈夫なの?」

「あぁ、テスト勉強?まぁなんとかなると思うけど、そんな気分じゃないしね。」

「そっか…。それより、そろそろ担任から、そっちに電話があるかもよ?」

「そうだね。じゃあそろそろ電話、切るわ。」

「うん。またね。」
そう言うと電話が切れた。

愛子は予定よりかなり早いけど、病院に行く事にした。

香織の方は、仕方なく、復旧させた掲示板を見ていた。

サーバーが落ちていたせいか、なかなかアクセスは無かったが、段々、増えて来てかなり賑わってきていた。

チャットの内容は、それぞれの担任から来ている在宅確認の電話についての不満なども、田中先生の出来事に混ざりやり取りがされていたが、相変わらず事実とはかけ離れたとんでもない内容で盛り上がっていた。

そんな感じで掲示板やチャット画面を眺めて30分位した頃、やっと担任から電話が掛かってきた。

「おぉ、香織、ちゃんと家に居たんだな。」

「先生、当たり前じゃない。欠席になりたくないもん。みんな家にいるんじゃないの?」

「まぁ、今の所はな。でも、電話が終わった途端に遊びに出るのは目に見えているけどな。」

「多分そうだろうね。でも抜き打ちでまた電話したりするんでしょ?」

「バレバレだな。と言ってもそんな暇じゃないけどな。」

「それより、先生、本当のところ何があったんですか?」
香織も愛子同様に知らないフリをして聞いてみる事にした。

「あぁ、実はまだ話せないんだ。ただ、生徒を妊娠させたとか、襲ったとか、そんな事はないからな。何だか噂が広まっているんだろう?」

「うん。でも、あの先生なら有り得る話しだから…」

「まぁ確かに、生徒からみたら、好き勝手をやってる様に見える所もあるからな。」

「でしょ?」

「でも、今更だが、そんなに悪い先生じゃないんだぞ。」

「そんな事言ってもねぇ…痴漢をしたんじゃもす信用も出来ないし…」

「まぁ、そう言われると返す言葉がないんだが…。そうそう、何だか知らないけど、みゆき先生が話しをしたいらしいんだ。今、廻すからちょっと待っててくれるか?」

「あ、はい。」
そう香織が返事をすると、エリーゼの為にの保留音が流れてきた。

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選ばれし者達(51)


表示されたメッセージはどうやら、サーバーで何かが起きて繋がらない状態になっている為のお知らせや注意、お詫びなどの羅列だった。

予め、香織から聞いた管理者モードでアクセスを試してみると、何回かの挑戦でなんとか管理画面に入る事が出来た。

ログイン者リストを見ると香織はいないみたいで、自分以外の誰もどこにも入れずに始めの英文の画面を見ている状態だったのが分かった。

愛子自体、何が起きているのかわからないけど、とりあえずはいろいろとステータス画面を表示させて見ると何となく理由がわかりかけてきた。

掲示板は完全にアクセス不能でエラーコードを出して止まっていた。チャットルームには何故か、ログインしていない人の名前が表示されてフリーズしている。続に言うゴースト化状態。

『これって、落ちたって言う状態なのかなぁ』
愛子ははっきりわからないけど何となくそんな気がした。

『どうしよう』
悩んでいる時に、香織がログインして来たのが分かった。

愛子は香織に電話して聞いてみようと思い、携帯電話に手を伸ばした時に突然に掲示板のアクセスが遮断されたのか【相手先サーバーから接続が遮断されました。】と表示された。

愛子はもう一度接続をしてみた、すると今度は文字の羅列ではなく動物のサイだろうか?5色のマスクを被ったキャラクターが出て来た。

『今度はなに??』
愛子が呆気に取られていると5匹揃って変身ポーズを決め。

【お詫び戦隊 五面なサイだー!】

と吹き出しが出てポーズを決めていた。

愛子は『五面なサイだー』と言う文字を見て、一瞬理解出来なかったが、理解した瞬間に笑いが止まらなくなってしまった。

笑いが落ち着いた頃に手に持っていた携帯電話に香織から偶然電話が掛かってきた。

「あ、愛子。ごめんね。サーバー落ちてたね。今直したから…」」

「うん。大丈夫。あのお詫び戦隊で、いま大笑いしていた所。」

「あぁあれね。そっか…あれ、出てたんだね。あれさぁ…なんか馬鹿にしているみたいでどうかな?って思っていたんだけど、愛子がうけたんなら大丈夫かな?」

「うん、あぁいうのもいいんじゃない?」

「そっか、それならあのままでいいね。それより、今日はこれからどうするの?」
香織は学校が休みになり時間を持て余す事になってしまった。

「私?とりあえずは病院にリハビリに行ってから、試験勉強かな?試験前に休んじゃったのは大きいから。」

「そっか…。私は掲示板でも1日見てようかな?なんか、落ちる前の掲示板の内容を見たら、なんかとんでもない話しになっているんだよね。」

「え?そうなの?」
愛子は、まだこの時は多少尾鰭がついた位の話しだと思っていた。

「うん。まずは、事実は知ってる?」

「うん。痴漢で触ったんでしょ?何処を触ったのかは知らないけど…。」

「うん。まぁ合ってる。実際は胸を軽く触った所を偶然にいた痴漢警戒中の警察官に捕まったのね。それであっさり、出来心で認めて、厳重注意で終わり。まぁそんな話しで、それほど大事じゃ無かったのが、本当。」

「なんだ、痴漢と言っても酷い痴漢じゃなかったんだね。」

「そうなんだけど、ここからが、ネットで凄い展開になっていてね。まず、[胸を触った]が[手で胸を触った。]になったのね。まぁ手で触ったのは当たり前だから、いいんだけど…。
ところが、それが[手を付けた。]になったのよ。ここからおかしな流れになるんだけど、[手を付けた]って言ったらあれでしょ?大奥の見すぎかも知れないけどつまりは[あれをしちゃった]になっちゃった訳。それで、後は暴走状態。もうぐちゃぐちゃ。[無理矢理あれした]とか[出来ちゃった]とか[脅して日常的に…]とか[ホテルに行く途中に捕まった]とか、噂が噂をよんで何が事実なのか、わからない状態でアクセスが殺到して、システムダウン。
ダウンしたタイミングが悪かったみたいで、今は噂が事実になって飛び交っているみたい。私もどうなっているのかわからない。まぁ今の現状はこんな感じね。」

「あらら…。悲惨。」

「悲惨と言ったら悲惨だよね。でも年頃の高校生ばかりの中での話しだから、まぁこういう展開も予想出来なくもないよね。」

「確かにねぇ…。それで香織、先生はどうなるの?」

「うん、今の所は学校を自ら辞める事にしたみたい。まお形の上で自分から辞める形にしたのかはわからないけど、昨日の時点でやめた事になっているみたい。」

「そうなんだ。じゃあ、今日、先生達はこれからの事を話しているのかな?」

「多分、そうだと思う。後は噂が凄いからその対応策だろうね。」

「本当に凄い事になっちゃったね。」

「うん。私もまさかここまでなるとはね。」

「うん。すごいね。あ、香織ごめん。電話だ。ちょっと待ってて。」
香織との会話が一段落した時に、家の電話がなった。

「もしもし?」

「おぉ香織かぁ。ちゃんと家にいるな。」
電話は担任からだった。

「先生、いなかったら欠席扱いになるんでしょ?でも先生、私これからリハビリに行くんですけど、いなくても欠席にしないでね。」

「あぁ、それは分かってる。その腕じゃ遊び回るにも、楽しくないだろうしな。」
愛子はリハビリに行っている間に電話が来たらどうしようと不安になっていたが、この言葉を聞き安心した。

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選ばれし者達(50)


愛子と香織は、塩1つだけ入れたかごを押してレジを済ませた。

「ねぇ、こんな重いのどうやって持ち帰るの?」
香織は余りの重さに愛子に聞いた。

「♪ジャン!これがあるんだなぁ。」
愛子はスポーツバックの中からナップサックを出した。

愛子は手際良くナップサックに塩を入れると香織に手伝って貰い背負った。

「凄い、準備万全なんだ。」
香織は驚いて呟いた。

「私、賢い主婦になれるかな?」
愛子は香織に微笑んだ。

二人はスーパーを後にして家に着いたら、掲示板を見る約束をしてから、互いに家に帰る事にした。

愛子はやっとの思いで家につき、玄関を開けた途端に目の前にとてつもなく大きな段ボール箱があり驚いた。仕方なく、廻り込んで玄関に入った。
「ただいま!ちょっとこの段ボール箱なに?」

「あ、愛子お帰り。」

「あ、塩ありがとう。やっぱり重かった?」
母親の光子は愛子の苦労を気にも留めていないみたいだった。

「あのねぇ。腕を怪我してる、か弱い娘に、なんで5キロもある物を買って来いなんて言うかなぁ?」

「まぁ、いいじゃない。リハビリ、リハビリ。」
光子は笑いながら言った。

「それより、母さんこの荷物なに?」
愛子は玄関を塞いでいる邪魔な巨大な物体について聞いた。

「あ、これ?これ安かったのよ。トイレットペーパー1グロス3500円!掘り出し物でしょ?」
光子は自慢をしているかの様に胸をはり堂々と答えた。

「なに、またお母さんの必殺技の特売の大量買いなの?全くこれじゃ、まるで社会の教科書に出てるオイルショックみたいじゃない。」
愛子は呆れて答えた。

「オイルショックね。たしかに昔そんな事もあったわね。まぁいいじゃない。腐る物じゃないし、有って困るものじゃないし…」

「それより1グロスって12ダースでしょ?ねぇ144個もどこに置くの?」

「大丈夫よ、トイレの奥の棚に積み上げるから…」
光子はそういうと段ボールを開け、トイレットペーパーをトイレの棚に積み上げ始めた。

「ほら、全部入ったでしょ?」
愛子がトイレを覗くとトイレットペーパーが綺麗に棚に天井近くまで積み上げられた壮観な風景が出来上がっていた。

「ねぇ、もしトイレに入ってる時に地震が来て崩れて来たらどうするの?」
愛子は母親の光子に聞いた。

「大丈夫よ。トイレットペーパーくらいで死ぬ事はないから…」
光子はあっけらかんと答えた。

「あのね…。死なないのは分かるけど。私トイレットペーパーに埋もれて、もがくなんて事、ぜったいに嫌だからね。」
愛子は真剣な顔をして訴えた。

「大丈夫だって、もしトイレットペーパーに埋もれても家族しか知らないから…。」

「そういう問題じゃないでしょう?もし母さんがトイレットペーパーに埋もれたら写メしてブログに書いちゃうからね。」
愛子はトドメの一言を放った。

「ちょっと、写メなんか撮らないでよね。」
光子は笑いながら答えた。

「それより、今日、学校休みになるなら、早く連絡来れれば良かったのにね。全く電話が来たのなんか9時過ぎよ?だから、そんなこんな話しで20分も話しをしちゃたわよ。」

「お母さん。そんな事で盛り上がってるから、なかなか次の人に連絡が廻らないんじゃないの!」
愛子が鋭い指摘をした。

「ははは、確かにそうね。つい電話となるといろいろと話しが盛り上がっちゃってね…。」
光子は照れ笑いをしながら答えた。

「私、もう部屋に行くね。後で多分、学校から家にいるか確認の電話が来るから、電話はしばらく私が出るよ。」
愛子はそういうと部屋に行った。

愛子は早速パソコンを起動させ、掲示板にアクセスをした。いつもの画面が表示されると思いつつ今日に限って見たことの無いアルファベットのみで埋め尽くされた画面が出て驚いた。

「なんじゃこりゃ??」
思わず大声で独り言を言っているのに気付き、慌てて自分の口を押さえていた。

愛子は完全にウィルスにやられたと思ったが文字を読んでいくと、Attention、information、serverなどの単語からウィルスでは無さそうな雰囲気に落ち着きを取り戻し、机から英語の辞書を持ち出すと表示された英文を少しづつ訳しながら読んでいった。

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選ばれし者達(49)


みゅーみゅーは10分程で学校についた。その足で職員室に向かうと、何故か誰もいない事に戸惑っていた。

廊下を進むと大会議室で人の声がするので、そちらに向かった。会議室の中にはほとんどの先生が集められていた。急な呼び出しに、どこのクラスの生徒が問題を起こしたのか、先生同士で話をしていた。

みゅーみゅーはすでに呼び出しの電話が来た時点で香織の話しから、事の真相を知っていたが、まさかそんな信じがたい事を話す訳にも行かずに適当に話しを合わせるしか無かった。

しばらくすると教頭が田中先生を連れ会議室に入って来た。
みゅーみゅーはその光景をみた瞬間に香織の話しが事実だった事を知ったが、他の先生には、どういう事なのか知るよしも無かったし、単なる偶然に入ってきたと思い気にも留めなかった先生もいた。

会議はいきなり田中先生の謝罪から始まり、教頭から今日付けで退職する旨が告げられた。これからの対応については順次決めると言う話しで、いよいよ会議の本題が始まった。

内容は田中先生がやった痴漢の内容の説明とこれまでの経緯、まだ知られてはいないがマスコミへの対応などが話し合われた。

その後に、授業のローテーションや生徒へのケアの話しになり、みゅーみゅーが大きな役目を追う事になった。

会議は片付けを含めるとすべてが終わったのは夜0時を廻っていた。

みゅーみゅーはただ一人、別の意味で驚いていた。そして、香織の事について真剣に考えながら帰路についた。

ただ、この時点で先生方は大変な事を忘れている事に誰も気付かなかった。


翌日、香織は愛子の家に予定通り迎えに行き家を出た。

「ねぇ、香織。学校から休みの連絡有った?」
愛子は尋ねてみた。

「ううん。全然無い。まさか休みにするのを忘れたりなんかして…。」
香織は冗談半分で話しをしていた。

香織と愛子がこんな話しをしながら学校に向かっている頃、朝出勤した先生は朝練をしている生徒を見て、休みにする事が伝わっていない事実に気付いた。

会議の冒頭で学校を休みにする話しは出ていた。しかし、あまりにも会議が長引き結局生徒に連絡できないまま、朝になってしまっていた。

慌てて教頭に連絡をして各担任から連絡網で臨時休校の事実が廻された。

しかし、そんなバタバタのなか愛子と香織は連絡を受ける間もなくとうとう学校に着いてしまった。
そして、朝早く学校に来ていた一部の生徒同様に校門の前にいた教師によって学校が休みになった事実を知った。

「ははは、やっぱり、休みだ。」

「うん。そうだね。ねぇどうする?」
愛子と香織でこんな会話をした後、とりあえずは学校前にある喫茶店に入った。

「そうそう、愛子。約束のビックパフェ今日、おごるよ。」
香織は以前の約束を思い出した。

「え、いいの?」
愛子は少し驚いて返事をした。

二人はビックパフェをたべながら、これからどうしようか話しをしていた。先程の先生の話しではまた会議をするとの事だから、多少遊んでも大丈夫だと思いながら、世間話をしながら、パフェを食べていた。

その時に愛子の携帯にメールが入った。母からだった。

【今、学校から連絡網で今日は臨時休校で自宅待機だって、急いで帰って来なさい。悪いんだけど、帰りにスーパーで粗塩を買って来てね。】
愛子はこのメールを見るなりため息をついた。

「何?どうしたの?」
香織は愛子の様子をみて尋ねた。

「これ、見てよ。」
愛子は携帯電話を香織に渡しメールを見せた。

「これがどうかしたの?」
香織は愛子のため息の意味が全く解らなかった。

「ねぇ香織?粗塩って買った事ある?」
愛子は香織に聞いた

「え?塩でしょ?なんで?」

「そっか…ねぇスーパーに付き合ってくれる?理由がわかるから…。」

「うん、いいよ。」

二人はビックパフェを食べ終わると喫茶店を出てスーパーに向かった。

香織がカゴを取り、中に入ろうとすると愛子はすかさず、台車を持ち出した。

「え?たった塩1つ買うのに、押して行くの?」
香織は驚いて聞いた。

「まぁ、必要になるから…」
愛子はそう言うのと塩を売っている、棚の所に向かった。

「香織、悪いんだけど、私持てないから、その塩を取ってくれない?」
愛子は香織にお願いをした。

香織は何で自分で取らないんだろうと思いつつ片手で塩の袋に手を伸ばし、持ち上げようとした。
「え?重い…。」
香織は驚き、仕方なく両手を使い持ち上げた。
「愛子、ねぇちょっとこれ何キロあるの?」

「5キロ…」

「え゛5キロ?!」
香織は余りの重さに驚いた。

「だから、ため息も出るし、押して行きたくなる気持ち分かるでしょ?」

「ははは、そうだね。まるで拷問みたい。」
香織は笑いながら答えた。

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選ばれし者達(48)


香織、愛子がチャット画面でチャットの成り行きを見ている頃、当事者の田中先生とタマはこんな大事になっているとは、夢にも思っていなかった。

駅員室から駅前の交番に移動した二人は、別々で状況を聞かれていた。

タマの方は、胸にパットを入れていたので、始めては触られた感覚は殆ど無かったが、触られた感じは微かに有った。それより、『なんで私?』と言う疑問と戸惑いの方が遥かに大きかった。
またその戸惑う様子が、横にいる婦人警官には、いまだに痴漢に遭ったショックが続いていると見えてしまうみたいで、やたらと優しい言葉をかけてくれたり、聞きもしない自分の痴漢体験なんか話したりして、その気遣いがタマにとっては余計にどうしたらいいかさらに動揺を拡大させていた。

田中先生の方はあっさり痴漢を認め、調書を取られていたが、過去に痴漢行為が無かった為に、厳重注意でその場は収まった。

その後、田中先生は事情聴取が終わると、タマより先に解放された。

外に出てから電源を切っていた携帯電話の電源を入れた時、絶え間無く続く無数のメールの着信通知に、田中先生は、何が起きているのか全く理解出来なかった。

偶然目に留まった届いたメールの1通を見て血の気が引くのを感じた。

【痴漢先生!】

『え…もう?まさか…』
田中先生はその瞬間軽い目眩を感じた。

【最低!】

【学校やめちゃえ!】

【強姦魔!】

【………】
無数の痴漢の事実を軽蔑するメールが届き続けていた。

田中先生は、完全にパニックになり立ち尽くしていた。


一方、交番で落ち着きを取り戻す為に出されたジュースを貰い、ゆっくり飲んでから出てきたタマは、そんな田中先生の姿を横目に見つつ、その場を後にした。
人の来ない場所を見つけるとダーリンに状況を報告し、その時にダーリンから、痴漢の事実がもう広まっている事を聞かされた。
タマ自身、何より痴漢に遭った自分の名前が出ているのではないかと不安になっていたが、名前が出ていない事を知ると安心した。


一方、茫然と立ち尽くしていた田中先生は、携帯電話の通話の着信音でやっと我に返った。
通話ボタンを押すと、教頭先生からだった。

「今から、申し訳無いが、学校に来で下さい。これからの事を話し合うつもりです。」
これだけ伝えられると電話は切れた。

田中先生はこれからの事を想いつつ、重い足取りで学校に向かう事にした。

学校に残っていた教頭の元には、PTA役員から学校に田中先生が、痴漢をしたらしいと子供達が話をしていると言う話しが学校に入ってから、すでに1時間程経っていた。
学校内にはすでに教師はほとんどいない状態だったが、あらかじめ用意してあった、教師が事件を起こした時に対してのマニュアルに従い、教頭は機械的に教師を学校に集め対策会議を開く用意を始めていた。

学校から電話が来た時、みゅーみゅーは自宅で香織の話しが信じられず、昔のアルバムを出し当時の親友の事を思い出していた。

「臨時職員会議を開くから学校に来て欲しい。」

電話の教頭の声は普段の様子では無く、すかさず何が有ったのか聞き返してみたが、全く教えて貰えず、教頭はただ学校に大至急来て欲しいと繰り返すだけだった。

みゅーみゅーは電話を貰った時点で、これから職員会議で話される事実を知っていたが、誰にも言えずに重い足取りで学校に向かう事にした。


事の成り行きを、パソコンのチャット画面を見ながら見守っていた香織と愛子は、絶え間無く流れる文字を追いながら、学校に連絡が入った事など、細かい展開を画面を通して把握していた。
「ねぇ、香織。とうとう学校に連絡が行ったみたいだね。」
愛子は、チャット画面に表示される事実について、逐一香織と会話を続けていた。

「うん。今頃は、先生達が集められている頃かもしれないね。」
香織は時計を見ながら、ダーリンの報告の時間から推測して話していた。

「うん。みゅーみゅー驚いているだろうね。」

「うん。そうだね。」

「あ、香織悪い。そろそろ私、マジで勉強しないと…。」

「あ、そうだったね。勉強してる途中だったんだよね。後は明日にならないと多分、動きは無いと思うから、明日にするね。また明日迎えに行くよ。」

「そう。わかった。今日と大体同じ時間?」

「そうだね。少し早いけど、もし学校が休みの連絡が有ったら、また連絡するね。」

「うん。わかった。」
愛子はそういうと電話を切り、勉強を続ける事にした。

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選ばれし者達(47)


その時《草》の通称タマの身には想定外の事が起きていた。

元々《草》の中でも《探りし者達》の下で情報収拾役になるには特別な条件があった。
オーラのコントロールは第一条件だったが、さらに他人から印章に残らない目立たない存在でなくてはならなかった。
ごく普通にいる女の子。体型、身長も普通。さらに存在感が無く、影が薄いと普段言われる位の存在感が要求されていた。

タマは、ダーリンの下に付いている《草》の中でも1番目立たない存在だった為に、ダーリンは今回のターゲットの田中先生に、もっとも近い位置での監視役に付ける事にしていた。

ところが、予想外の事態が起きた。

その時タマは、電車の中でターゲットの田中先生の斜め後ろに立つ位置にいた。始めは全く気付かなかったが、なんと腕を組む振りをして胸を触ってきたのであった。

タマ自身、胸は決して大きい方ではなく、日頃同級生の男子には胸の無さを指摘されて精神的に凹む事も良くあり、いつも気にしていていた。
また、普段の存在感の無い印象を持たれている事からして、まさか自分が痴漢をされるとは夢にも思っていなかった。

タマ自身はこんな事を考えつつ、自分の身に起きている事態を飲み込めずにいたその時に、タマの横にいたミニスカートを履いた女性がいきなり田中先生の腕を掴み、「痴漢!」と言うと同時に、さらに後ろにいた男性が「確保!」と言う声を発し、あっと言う間にその男性が紐を取り出し腕を縛りあげた。

実はタマ自身、全く気付いていなかったのだが、痴漢警戒中の警察官に囲まれる形で自分が位置していて、なんとタマ自身が囮の様になってしまっていた。

次の駅でターゲットと共に駅員室に行く事になり歩いていると、なんと途中に各駅の駅員室の前に待機していた仲間の《草》と目が合ってしまった。

お互いに意識しない様にしていたが、まさか、監視役自身が痴漢に合うなんて言う事態は互いに予想もせず、互いに動揺しているのが感じとれた。

タマの動揺している姿は同行していた婦人警官には、痴漢に遭い動揺していると見えていたらしく、「大丈夫だからね。」などと優しい声をかけてくれていた。

幸か不幸か、タマは、ターゲットの様子を間近で見る形になり報告は楽になるのは確かだったが、痴漢の被害者と言う、想定外の事にホトホト困り果てていた。

その時、タマは気付かなかったが、実は駅員室に入る所は、田中先生に取って不幸な事に学校の生徒にも見られていた。

男が腕を掴まれ、後ろを「大丈夫。」と綺麗な女性が女子学生に声を掛けられながら入る様子を見れば、痴漢とその被害者と言う関係だと言う事は容易に察しがつく訳で、田中先生には不幸な事だが、捕まったわずか数分で、痴漢で捕まったと言う事実は、裏掲示板へと載せられてしまった。

猛烈な勢いで痴漢の情報が広がっていった同じ頃、駅員室前にいた《草》からダーリンを経由して香織の元に第一報が入っていた。

駅員室の中に入ったタマは、電話を掛けたいと伝えると、詳細をダーリンに報告、それが第二報として香織に入った。

香織はこの報告の時点で、愛子に家の電話から電話をかける事にした。

「もしもし、愛子。」

「あ、香織だったんだ、何?」
愛子は携帯電話にメモリー登録されていない見慣れない番号がいきなり表示されたので誰からの電話か、始めはわからなかった。

「田中先生が捕まった。痴漢した相手がなんと監視役に配置した《草》だって!」

「え?監視役を痴漢しちゃったの?」
愛子は意外な成り行きに驚いていた。

「うん。まさか同じ《民》が痴漢に遭うとはね。それより、今メールが携帯に、じゃんじゃん入っているんだけど、もう痴漢した事が漏れているみたい。」

「え?もうバレたの?」

「うん、そうみたい。あ、ちょっと待ってね。あ、理由わかった。痴漢で駅員室に入る所を見た生徒が居たんだって。それで早速掲示板にアップしたらしい。この感じじゃあ、生徒みんなに一気に広まっちゃうね。」

「あらら。」
愛子はそう話している時に、パソコンからチャイム音がして、画面に痴漢をした事の書き込みが上がった。
「あ、香織、今パソコン点いてる?」

「今、映画見てたから、点いてない。」

「今、掲示板に痴漢の話しが出たよ。早速チャットルームで話しが始まったみたい。凄いよ!一気にログインする人が増えてる、今チャットルーム、凄い事になってる。えっと、ざっと20人はいるかなぁ?」

「わかった。こっちもアクセスしてみるね。」
香織はパソコンを起動してサイトにアクセスをして、管理者モードでチャットルームの監視を始めた。

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選ばれし者達(46)


愛子は家に着くと、パソコンを起動し、香織の立ち上げた掲示板を見ていた。

掲示板の内容は、今日話しが有った試験の日程の話題で盛り上がっていた。

ふと画面のはじを見ると、掲示板のタイトルの横にあるバージョン表示のバージョンが上がっている事に気付いた。
『新しく機能を追加したらバージョンが上がるから上がっていたら、管理人モードて入り直してね。』香織が掲示板の説明をした時に、こんな話しをしていたのを思い出し、管理者モードでログインし直してみた。

すると、香織よりメールが届いていた。
【いろいろと機能を追加したよ。あと、愛子も私同様に掲示板の管理や制限を出来る様にしたよ。でもあんまり掲示板を増やしたりしないでね。】
愛子はメールを読み終わると早速、管理画面に入ってみた。

以前と比べ、コマンドやメニューが格段に増えていて驚いた。

試しに、掲示板ログイン者情報を見ると今アクセスをしている人の名前と横に何だか不明の時間をカウントしていた。

別にウィンドウを開いて、掲示板の内容を表示させてみてやっとカウントの意味がわかった。

書き込みをした瞬間にその人のカウントがゼロになりリストの順次が1番上に移動した。
リストの下の方には、10分を越えた人の名前が赤くなり15分を越えるとリストから名前が消えていた。

『なるほど、これで誰が今アクセスして書き込みをしているか分かるんだ…』
愛子は関心をしていた。

さらにチャットルーム管理画面に入ると、同様に名前と時間が出ていた。

チャットの内容は愛子が学校に来た事を話していた。

偽名を使ってチャットをしているとは言え、愛子には誰が何を言っているのか、まる見えの状態に少し優越感があった。

同時に開いていた、ログイン者総合リストに香織の名前があるのを見つけたと同じ頃、愛子の携帯電話が鳴った。電話は香織からだった。

「なんだ、愛子ログインしていたんだね。」

「うん。時間があるから覗いてみた。なんか大分、機能が増えたね。」

「うん。今ね、過去のログイン情報の統計が取れる様に改良中。」

「へぇ…。」

「そうそう、ちょっとこれからしばらくチャットルームの部屋数を制限するね。」

「え?なんで?」

「だって田中先生の話しを見たいじゃない?チャットルームが沢山あると話しが分散するでしょ?」

「あ、そういう事ね。」
愛子が返事をするとしばらくして、掲示板やすべてのチャット画面に管理者からのお知らせとして、チャットルームの臨時メンテナンスのお知らせが表示された。

愛子はチャットルームに行くと部屋数が3つに制限されていた。

「ねぇ香織、これからどうするの?」

「え、私?実はこの前DVD借りてきて、まだ見てないから見ようと思っていたんだけど…。愛子は?」

「うん、今日、学校に行ってみて勉強がヤバそうだから、ちょっとやらないとね。」

「そうなんだ。何にしても夕方までまだ時間があるしね。なんか情報が有ったら知らせるよ。」

「うん。わかった。」
愛子はそう返事をすると電話を切った。

愛子はパソコンをどうしようか少し考えてから、一様、チャットルームに人が着たときに音で知らせる設定にしてそのままにしておく事にして、勉強を始める事にした。

しかし、いざ勉強を始めても香織の田中先生が痴漢をするという話しが頭から離れなず、なかなか進まなかった。

一方、香織の方はこれからの事は全く気にしていない様子で、学校帰りに買ってきた、スナックの袋を手に取り、楽しみにしていた映画のDVDを見始めてていた。

実は同じ頃、ダーリンからの指示で田中先生の様子を伺っていた《草》は、実は以外な事態に陥っていたが、愛子も香織も、知るよしも無かった。

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選ばれし者達(45)


生徒指導室から出て来た二人の様子は対象的だった。

香織の方は何事も無かったかの様に跳ねる様に下駄箱の方に向かって歩いて行った。
その反面、みゅーみゅーの方は深刻な顔をしているのが自分でもわかっていた。
とりあえずは保健室に向かい、香織の話しを思い返してみた。落ち着かないといけないと思いつつ、信じられない話しに本当なのかと悩んでいた。

しばらく悩んだあと、とりあえずは、まさかとは思うが、香織の指摘の様に夕方の食事をキャンセルする為にメールを送る事にした。

香織の話しはかなり動揺する内容だった。自分でも気付かない間に何も手に着かなくなってしまっていたのに気付き、早めに家に帰る事にした。
脳裏に一瞬、香織が話していた職員会議の事も頭を過ぎったが、帰ってしまえば関係ないし、香織の話しが事実で有って欲しくないという気持ちも有った。

一方、校舎を出た香織の方は、これから起こるべき事を、早く愛子に話しをしたく、校門を出ると早速携帯電話の電源を入れ、愛子に電話をかけてみた。

数回の呼び出し音の後に、愛子は電話に出た。

「愛子、今、電話大丈夫?」

「うん今、病院の帰り。」

「愛子、今みゅーみゅーと話し終わったよ。それで愛子の事は話さなかった。」

「そうなんだ、それより、電話、別に夜でもよかったのに…。」
愛子は予定外の香織からの電話に少し驚いていた。

「うん、でもちょっとニュースが有ってね。」
香織は愛子がどんな反応をするか少し楽しみに思いつつ弾んだ様子で話していた。

「何?ニュースって」

「体育の田中先生知ってるでしょ?」

「あの、不良先生?」

「そうそう。実はね、元はダーリンからの情報なんだけど、これから大騒ぎになるよ。」

「何?どういう事?」
愛子はあまりの意外な話しに頭が回らなかった。

「ダーリンの先読みの情報なんだけど、夕方に痴漢をやるみたい。」

「え?痴漢?先読みって予知の事でしょ?」

「そう、私もちょっとは出来るんだけど、この話し確かみたい。」

「それって、大変じゃん。先生どうなるの?」

「まだはっきりは読めないんだけど、何故か、痴漢の事がバレて凄い大騒ぎになる事までは分かってる。それで明日、学校が休みになると思う。」

「そうなんだ。でも普通痴漢してもその場で怒られて、一時的に警察に行っても、そんな大騒ぎにはならないんじゃないの?」
愛子は、たかが痴漢くらいでそんなに大騒ぎになるのか、わからなかった。

「確かに、普通は認めてしまえば、それっきりで名前とか、隠されるから、実際は学校とかからはごまかされて処分とかすると思うんだけど、何故か大騒ぎになるみたい、その辺の事情はまだ読めないんだよね。」

「あ、そうなんだ。」

「うん、多分、その時が来たらどういう事かわかると思う。」

「そうだね。」

「うん、それでね、その話しをみゅーみゅーにして、私の事を信頼して貰う事にした。」

「あ、そうなんだ。確かに、みゅーみゅーは田中先生からなんか嫌がらせされていたよね。」

「うん。だから、実際に起これば信じてもらえると思って…。」

「うん、確かにそうだね。」
愛子は意外な展開になっていた事に驚いていた。

「でも愛子、この事はまだ内緒だよ。知ってるのは、私達とみゅーみゅーだけだから。」

「うん。大丈夫。明日はいつも通り学校に行く。これでいいんでしょ?」

「そうだね。何も学校から連絡が来るまではそういう風にしないとね。」

「そうだよね。とりあえずはこれからどうなるか?そういう事だよね。」

「そう。じゃあまた電話するね。まだ学校の前で見つかるとうるさいから…」

「うん。わかった。」
そういうと電話を切った。

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選ばれし者達(44)


香織はおもむろに話しはじめた。
「先生、先生が高校生時代の時の親友で、私の様な人がいましたよね?」

「え?」
みゅーみゅーは意外な切り出しで動揺を隠せなかった。

「私、先生のその親友と同じだと思うんです。」
香織は続けた。
「先生の親友が先生に話した事はまだ覚えていますか?」

「ちょっと、香織さん。あなたがなんでその親友の事とか、話した事とか知っているの?」
みゅーみゅーは完全に混乱していた。

「私、超能力があるんです。」
香織はきっぱりと言い放った。

「超能力って、親友にはそんな力無かったわよ。」

「確かにそうですね。私はその親友さんより、はるかに力がありますから…。だから、私は先生の過去の事もいろいろと知る事もできますし、今の事もわかるんです。」

「とりあえずはわかったわ。それで、何を話しをしたいの?」

「それは、私この学校を変えたいんです。いじめとか、派閥とか、そういうごたごたを無くしたいんです。」

「うん、確かにその気持ちはわかるけど…。」

「それで、先生に協力して欲しいんです。」

「そんな、協力って言われても…。」

「先生、先生にも力がありますよね?」

「えっ!あなた…。」
みゅーみゅーは誰にも知られた事の無い力の事を指摘され驚いた。

「それで、まず先生の力を借りたいのと、私の力の事を秘密にして欲しいのと、後は、私が学校でやろうとしている事について邪魔をしないんで欲しいんです。」

「そう言われても…、一体何をしようとしているの?」

「先生には迷惑をかけません。それに交換条件として、先生が今、抱えている問題を解決してあげます。」

「ちょっと待って、抱えている問題って…。」

「先生、体育の田中先生に付きまとわれているでしょ?」

「そ、それは…。」
香織の指摘は図星だった。

香織はしばらく、下を向き目を閉じて、トイレで確認したメールの内容が事実なのか、力を使い意識を飛ばしてみた。

しばらくの静寂の後、事実だと確認するとひと呼吸してから話しを始めた。
「実は、田中先生、近々学校をやめる事になります。」

「ちょっと、どういう事?」
みゅーみゅーは突拍子も無い香織の話しに驚いた。

「正確には、私が何かをするんじゃなくて自滅するんですけど、あと2時間もしたら先生にもわかると思いますが、臨時職員会議がこれから開かれます。そうそう、先生、今日は帰りが遅くなるから友達との食事の約束、キャンセルした方がいいですよ。」

「ちょっと、何が起きるのか説明してよ。」

「いいですよ。話をしますから、私の話しを信じて協力してくれますか?」

「わかったわ。約束するから…、話して。」
みゅーみゅーはしばらく考えてから返事をした。

「田中先生、今日、午後年休で休みですよね?実はもうじき、先生が若い女性に痴漢をして逮捕されます。多分、今から2時間後位に学校に連絡が入って臨時職員会議を開いて、対応策の話し合いをすることになると思います。
多分、明日はとりあえずは休校にする事にはなると思いますが、明日も先生達が全員が集められて、職員会議で生徒への説明とか対応など話し合うと思います。」

「ちょっと、それ本当なの?」

「本当です。今日の職員会議は夜10時近くまで掛かりますから、せっかくの友達との食事の約束残念ですね。」

「香織さん。あなたは…これから先の事や私が友達と今日食事をすることまで分かっているのね。」
みゅーみゅーはこれから、起こるであろう出来事について聞かされ、驚くより関心する気持ちの方が強かった。

「信じてもらえて、うれしいです。それでまずは、先生に1つお願いしたい事があります。」
香織は早速、仲間に入れるべくお願いをすることにした。

「何かしら?」

「先生なら簡単な事です。先生なら立場上いろいろな生徒と会う機会があると思います。それで生徒や先生の中で、私の様に何か違うと感じる人がいたら、教えて欲しいんです。当然私も直接会えばわかりますが、私の交流範囲からしたら、とても学校全部はカバー出来ません。だから、先生にお願いしたいんです。」

「つまりは、何かがあると感じた人がいたら、あなたに教えればいいのね。」

「はい、そうです。教えて貰った人には私がこっそり近づいて、とんな力があるのか、私自身が調べます。だからとりあえずは、怪しい人を見つけて欲しいと言う事です。」

「わかったわ。約束するわ。」
みゅーみゅーは承諾をすることにした。

「ありがとうございます。ではよろしくお願いします。いつの日か必ず、お礼をしますから…」
香織は頭を下げお願いをした。

「話しは終わりかしら?」

「はい。」
そう会話をすると、二人は生徒指導室を後にした。

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選ばれし者達(43)


「ねぇ…私の弱点って何?」
愛子は気になり香織に聞いた。

「うん。それは、オーラの防衛力が弱いことなんだ。つまりは簡単に外から波長を合わせていじられると、影響を受けちゃうって事。」

「あんまり、よくわからない。」

「つまり、私がちょっと力を使うと、愛子、簡単に気を失っちゃうでしょ?バリアが弱いと言えば分かりやすいかな。」

「うん。簡単に倒れちゃうのは確かにそうだけど…。それって香織が強いからだと思っていた…。ねぇ、それより、それって鍛えられないの?」

「残念ながら難しいんだよね。生まれながらの物が大きくて、そんなには強くはならないんだよね。でも愛子の《民》の力には関係ないからそんなには問題じゃないんから安心して。だけど、弱い事は確かだから、知っておいた方がいいと思う。でも、実は《民》って何らかの弱い点がある事が多くて、私なんかはスプーン曲げとか苦手なんだよね。これって意外でしょ?」

「へぇ、全然知らなかった。」

「まぁ、だからあんまり気にしなくていいよ。あ、そうそう、愛子に渡したい物があるんだ。」

「何?」

香織はポケットから小さな帳面を取り出した。
「ちょっと待ってね。」
そう言うとページをめくり、何枚かのページを切り取り愛子に渡した。

「え?何?」
愛子が渡された物を見ると
【スペシャルバーガー無料券(2名様まで有効)】
【焼き肉60分食べ放題無料券(女性限定2名様まで)】
と書かれた紙だった。

「ねぇ愛子。これ以前約束した、おごるって言った奴ね。この間、頑張って福引きでクーポン券を当てたんだ。どれも2人までだから、一緒に行こうね。」
香織はニコニコしながら、言った。

「すごい!。よく当たったね。」

「これ根性で当てたんだ。後はケーキバイキングとビックパフェだったよね。しっかり覚えているから、きっとご馳走するからね。」

「うん。わかった。」

「あと、班を譲る話しね。あれは、愛子にオーラを球にして飛ばすのを教える時でいいかなぁ?紹介したい人がそっちの方に強い人だから、私より教え方が上手いから…。」

「うん、いいよ。」

「あとは夜の電話でね。実は私もいろいろ有ってね。他にも、まだはっきりしてないから言えないけど、今日、大変な事が起こりそうな感じなんだぁ…」

「うん、いいよ。じゃあ夜ね。」
愛子は微笑みながら答えたが、この時は、さりげなく香織が言った大変な事が、本当に大変な事になるとは、まだ知るよしも無かった。

時間的にそろそろ昼休みも終わる時間になり、バラバラにトイレを後して教室に戻った。


午後の授業も難無くこなし、本当は香織とどこかで待ち合わせをして話しをして家に帰りたかったが、香織の都合を聞き仕方なく一人で家に帰る事にした。

香織の方は、変な胸騒ぎがあり、学校では禁止になっていたが携帯電話の電源を入れメールの確認をした所、驚くべき内容のメールが入っていた。
しかし、まだ香織自体メールの内容について確証がまだ無かった。
香織はしばらく考えてから、まずは朝に交わした約束もあり、みゅーみゅーの元に向かう事にした。

みゅーみゅーは保健室で香織が来るのを待っていた。

「香織さん。待っていたわ。話しって何かしら?」

「先生、プライベートな話しなんで、二人きりで話しがしたいんですけど…。」

「いいわよ。じゃあ、生徒指導室に行きましょう。あそこなら、誰も来ないしね。」
左藤先生はそう言うと香織と友に生徒指導室に入った。

「さて、話しは何かしら?」
早速みゅーみゅーは話を切り出した。

「実は、私の事なんですが、先生、私が少し違う事知っているんでしょ?」

「違うって何が?」
みゅーみゅーは何の事なのか全くわからなかった。

「先生、私と愛子は、何が違うって言っていたでしょ?」

「あ、あの話ね。確かにそうね。何かあなた達違うわね。」

「その事なんですが、先生絶対に秘密にしてもらえますか?」

「一様、生徒の秘密は守る事になっているから、その辺は秘密にするけど、そんなに秘密にしたい事なの?」

「はい。」
香織は《民》の事について話すべきか悩みながら、落ち着いて話しを始めた。

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選ばれし者達(42)


愛子は教室に向かう事にした。

今頃は香織の本意では無いにしても、愛子が学校に来た事をクラスの中で話題にして、いろいろと噂が飛び交っている頃だと思いながら、愛子は廊下を歩いていた。

教室手前に着くと、一度深呼吸してから、愛子は教室に入った。

予想通りに入った瞬間に一瞬の静寂があった。
やはり、いろいろと詮索していたのは確かな様だった。

席に着くと、教科書などを机の中にしまいつつ、力を使い教室の中の様子を力を使いみてみる事にした。

休む前と比べ、明らかにピリピリした空気があった。しかし、大きく別れていた派閥が無くなり、小さいグループが沢山になり、それらの間で壁を作っている様だった。

愛子は何が有ったのか、これも香織の仕業なのか全くわからなかったが、何が変わってきてるのは確かで、もしかしたら、これに香織も少しは何か関係しているのは確かなんだろうと思った。

しかし、何にしてもいろいろ考えても仕方ないので、担任が来るまでの間に、早速愛子は香織からの課題に取り掛かる事にした。

『え?簡単じゃん。』
意識を教室全体に広げてみると、力があるオーラを出している人をあっけなく見つけだす事が出来た。
ざっと4人。とりあえずはこの4人を答えにする事にして、紙にメモをしておくことにした。

香織の方を見ると、寝ているのか、また力を使って何か探っているのかわからないが机の上に伏せたままだった。

そんな事をしている間に担任が教室に入ってきた。

「いよいよ、後期の試験の時期が近づいて来たが、今回は新しい試みとして、試験の予定について、みんなの意見を聞いてみる事になった。
まずは例年の様に、試験日を4日間に分けて、午後はカットにする方法。
次が、試験日を1日短くする代わりに、試験を1日6時間にしてやる方法。

みんなどっちがいいか考えて欲しい。

全クラスの多数決で、決めるので、明日の朝までに考えておくように。明日の朝、どっちがいいか聞くからな。」

そう話をすると、担任は教室を出て行き、間もなく教科担任が来て授業が始まった。

愛子の通っている学校は、珍しく試験が2回しかない。まぁ学校の方針だから仕方ないと思いつつも、試験の範囲が広いし、勉強も大変なので、生徒の間ではあまり評判はよく無かった。

授業が始まり、休んでいた間に、確かにかなり遅れてしまってはいたが、ある程度自宅で予習をしていた為か、授業の内容についていく事は出来た。

愛子は、休み時間に香織から呼び出しがあるかと思って用意をしていたが、呼び出しはなく、とうとう昼休みになってしまった。

昼食に買ったパンを食べ終わる頃に、やっと香織から呼び出しが掛かった。

愛子は、香織に腕をひっぱられ、トイレに連れ込まれた。

「愛子、課題の結果を教えて。」

「うん、これ。」
愛子は、課題の答えを書いたメモを香織に渡した。

「まぁ、合格かな?こんなもんでしょう…」
香織がさりげなく合格を口にした事に、愛子はもう少し、嬉しそうに合格を出してくれると思っていた事に、ちょっと残念な気分になった。

「ねぇ、朝、みゅーみゅーの所に行った時に話していたけど、放課後にあの話しをするの?」
愛子は香織に聞いた。

「うん、まだすべては話すつもりはないけど、ちょっと、その肝心な友達について、探りを入れてみようと思っている。まぁ、私が《民》の事はバレても構わないけと、愛子の事はまだ隠しておくつもりだよ。」

「なんで、私の事を隠しておくの?」
愛子は意外に感じていた。

「だって二人の関係を隠しておきたいから、まだいいかなって思って。」

「あ、そうなんだ…」

「あ、愛子、今日本当は、帰りにどこかで会って話しをしたかったけど、多分遅くなるから、電話するね。例の力の使い方を教える件は、また今度時間を作るからさぁ…」

「うん、いいよ。でも、合格出来てよかった。怪我したから大分時間が掛かっちゃったよね。」

「まぁ、あれは事故だったからね。でも、そのせいで、意外な事もわかったから…」

「意外な事って何?」

「うん、簡単に言えば、愛子の弱点かな?」
愛子は、自分の弱点が、香織によって見つけられてしまった事が、香織でよかったと思いつつ、悔しい様で複雑な気分になった。

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選ばれし者達(41)


「香織、そろそろ学校が近くなって来たから、別々に行った方がいいんじゃない?」

「うん、そうだね。」

「バッグ渡して。自分で持つよ。」
そう言うと愛子は香織からバッグを受け取り言った。
「香織、先に教室行っててよ。私、みゅーみゅーに会ったり、担任に挨拶したりしないといけないから…。そうそう、みゅーみゅーには、さっきの話し黙っておくね。」

「うん。わかった。学校に行って休み時間にでも呼び出しかけるから、その時までに課題の人を見付けておいてね。」

「うん、大丈夫。」
返事を聞くと、香織は走って学校に向かった。

愛子は香織と距離を取るようにしばらくゆっくり歩いてから学校に入った。

久しぶりの学校に何か新鮮な気分になったが、いろいろとやらなくてはならない事もあり、余韻に浸っている時間は無かった。

まずは、みゅーみゅーに会うために保健室に向かったが留守で仕方なく職員室に向かい歩いていた。いなかったら困るなぁと考えながら歩いている途中に偶然みゅーみゅーに会う事が出来た。

「みゆき御姉様、おはようございます。」
愛子は丁寧にお辞儀をし挨拶をした。

「あ、愛子さん。やっと来れる様になったのね。」
みゅーみゅーはいきなりの事で少し驚いた様だったが、愛子が学校に来た事が嬉しい様子だった。
「ねぇ、保健室に寄っていってよ。」

「あ、はい。」
愛子はそう答えると後に続いて歩き、保健室の中に入った。

「まぁ、適当に座ってよ。」
愛子はみゅーみゅーにそう言われても、座ると言っても座る場所もたいして無かったので、仕方なく怪我をした時などに使う丸椅子を先生の机の傍に移動させ座った。

「でも、来れて良かったわ。そうそう、お菓子食べる?」
そう言うと机の引き出しを開け、クッキーの箱を取り出した。
「みんなには内緒ね。」

「はい。」
そういうと二人揃って微笑んだ。

クッキーを食べながら少し話しをすると、突然に香織が入って来た。

「あ、香織さん。どうしたの?」

「あ、愛子来たんだ。取り込み中みたいね。佐藤先生、相談したい事があるんで時間か欲しいんですけど、時間空いてますか?」
香織は愛子が学校に来た事を知らなかったふりをして、先生に話しかけた。

「今、たいした用事じゃないけど、放課後ならいつでもいいわよ?ここか、職員室にいると思うから声をかけてね。」

「はい。わかりました。」
香織はそう言うと保健室を出て行った。

会話が終わると、愛子自身も何だか居づらくなり、職員室に担任に挨拶したいと告げると保健室を後にした。

職員室に入ると担任の方から声を掛けていた。

「おぉ。やっと来たかぁ。大分休んだからなぁ。元気かぁ?」

「はい。いろいろとお世話になりました。」
愛子は丁寧に挨拶をして、親から預かってきた菓子折りを渡した。

「なんか悪いなぁ…。みんなでご馳走になるよ。」
そう言いいながら受け取りながら続けた。
「もし勉強が解らなかったら、個人的に教えてやるからな。心配しないでいいからな。」
と言った。

「え、個人授業ですか?いやらしい…」

「何言ってるんだ。」

「だって、最近そういう先生多いじゃない?生徒に手を出しちゃう先生とか。」

「あのなぁ?俺がそんな事する様な先生に見えるか?」

「うん。見える。」
愛子の答えに担任はうろたえていた。

その姿を見て愛子はすかさず
「なんてね。冗談、冗談。先生可愛い。」
と付け加えた。

「全く、相変わらず、人をおちょくるのが好きなんだから…」

「まぁ、本当に分からなかったら、その時はよろしくお願いします。」
愛子は再び丁寧にお辞儀をした。

「全く、何を考えているのかわからん。」
担任は呆れていた。

「じゃあ先生、先に教室に行ってます。」
愛子はそう先生に告げると職員室を後にした。

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選ばれし者達(40)


「ねぇ、香織。そういえば大事な話しがあるって昨日言ってたけど何?」
愛子は突然に思い出し歩きながら香織に聞いた。

「うん。それなんだけど、みゅーみゅーの事なんだ。ねぇ愛子、どうしたらいいと思う?」

「どうって、どういう事?」
愛子はいきなり聞かれも答えようがなかった。

「つまりね。これから先、私達の力の事を隠して置くのは難しいでしょ?学校の中でも力を使う事もあるし、その辺の事を考えるとどうしたらいいかな?って思って…」

「そういう事なんだ…」
愛子は香織の相談の意味をなんとなく理解した。

「これから、愛子はもっと力を身につける事になるし、まだ詳しくは話せないけど、実は学校の中でもいろいろと力を使う必要が出てくるんだ。」
香織は続けて話した。

「そうなんだ…。」

「それで、あれから調べたんだけど、実はみゅーみゅー、もしかしたら、《民》の事を知ってる可能性が出て来たんだぁ。」

「え?そうなの?昨日の朝のメールだと、可能性は無いって言っていたじゃない?」

「そうなんだけど、高校時代に接触したみたいでね。具体的には当時の親友の中に《草》になるために訓練中の人がいてみゅーみゅーの力に気付いて、誘いを掛けたらしいんだ。《民》と言う名前は出していないらしいんだけど、そういう力を持つ集団とか《民》の種類がいるとかは知ってしまったみたいなんだよね。」

「何それ?それって《民》として、公開してはいけない事でしょ?まずいじゃない。」

「そうなんだけど、その親友の見極めが甘かったみたいで、完全に《民》の資格がある者と思い込んだみたいで、話しをしちゃったらしいんだよね。」

「そう…。ねぇそういう場合どうなるの?」

「実際の所《民》の名前とか出していないから、ギリギリセーフなんだけど《民》と言う名前は知らない物のそういう集団がある事については知ってるから、微妙な所なんだよね。」

「あ、でも一様セーフなんだ…。」

「そうなんだけど、この際だから話しをしようかな?って思って…」

「だって、話してはいけない事になってるじゃない。大丈夫なの?」

「確かにそうなんだけど《民》の存在を知る者には話しても構わない。決まりがあるでしょ?」

「まぁ、たしかに《民》として訓練を始める前には伝える必要があるから、話しても構わない事にはなってはいるけど…」

「そこなんだよね。決まりの上では、ギリギリ話して構わない事にはなってるから…」

「でも、みゅーみゅーは《民》になる人じゃないから、話してはいけないんじゃないの?」

「そうなんだけど、実は《探りし者達》の中では《草》の下について情報を得る為に《民》には満たない能力を持っていて手足となり動く人には、話しても良い事になっているんだ。つまりは、情報の収拾役として動く人限定なら《草》に満たない能力者でもOKって事。」

「それって、つまりは話す代わりに情報を得る為に動いて貰えば良いって事なの?」

「まぁそういう事になるかな?」

「まぁ、香織が問題無いと言うんなら、私は構わないけど、そもそもそんな大事な事、私達だけで決めちゃってもいいの?」

「うん。それは大丈夫。だって今覚醒して動いている《民》は私達だけだから、その辺はある程度は自由にやっても大丈夫。まぁいざとなったら、それなりにいろいろ方法あるし…」

「それなりって?」

「だから、それなり…。まぁ愛子は知らなくてもいいよ。私がうまくやるから…」

「それならいいけど…。」
愛子は少し不安になったが香織を信じる事にした。

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選ばれし者達(39)


翌朝の朝早く、まだ愛子が寝ぼけている頃、香織から家に着く大体の時間を知らせるメールが届いた。

愛子はそのメールの着信音で完全に目が覚めた。

手際良く身支度を整え、前髪のカールに悪戦苦闘して最中に香織が迎えに来た。

愛子は少しまだ前髪に不満が有ったが、待たせる事も出来なく仕方なく出かける事にした。

「おっは。」
相変わらず元気な様子で香織は挨拶をした。

「もうぉ、前髪がイマイチでさぁ…。」
愛子の方はなかなか決まらない前髪の事で頭がいっぱいだった。

「大丈夫。可愛いから。」

「そう?まぁいいっか。」
愛子はそう言うとあっさり納得する事にした。

「荷物持ってあげるよ。まだ大変でしょ?」

「そう?でもまだ何にも入ってないよ。」
そういうと中身の割には大きいバックを香織に渡した。

「なんで、こんなにバックが大きいの?」
香織はふと疑問に思って口に出した。

「まぁね。すぐに理由がわかるよ。悪いんだけど、ちょっと駅に寄ってくれる?」

「別に、構わないけど…」

愛子は学校に行く時の儀式ともなっている、教科書一式が収められたコインロッカーに行き、鍵を開けた。
そして、香織からバックを受け取ると、教科書などバックにいれ始めた。

香織はこの光景を見て、まさかこんな事をしているとは全く知らずに驚いていた。

すべての用意が出来た時、香織に話し掛けた。
「香織、わかった?こういう事。」

「これってどういう事?」
香織の方は何故こんな事をしているのか、まだ理解出来ないでいた。

「だから…」
ここまで話すと愛子はため息をついた。
「こうすると、いたずらされないでしょ?」

「あ、そういう事なんだ。」
やっと香織は理解した様だった。
「毎日、こうしてるの?」

「うん。そうだよ。だから学校のロッカーの中には何も入っていない。」

「そうなんだ。」

「じゃあ、ヨロシク。」
愛子はこう言うとバッグを香織に渡した。

「あ、私ね。はい、はい。」
香織はバッグを受け取り歩き出した。

「でも、流石に愛子頭いいね。こうやると絶対に大丈夫だしね。それに鍵のあれもそうだし。」

「でも鍵のあの方法は私が力が有ったから出来るんであって、無かったらどうにも出来ない事だし。」

「確かにそうだけど。見えないマーキングなんて、まさか誰も想像しないし…」

「でも、まさか香織が見抜いていたなんて、驚いたけどね。」
「香織が敵じゃ無くてよかった。」

「敵も何も愛子の仲間になる以外に私には道が無いじゃない。」

「え?どうして?」

「だって力の事は話せないし、愛子の鍵の謎なんかクラスの人になんか言ったら私が仲間ハズレにされちゃうし、愛子はいずれは力の覚醒をするんだから、私が力がある事がバレちゃうし。それに《民》は《民》同士で一緒にいないとこの先困る事になるし…」

「確かにそう言えばそうだね。」
「でも、まさかずっと私の事を見ていたなんて驚いたけど…」

「まぁ、これも役目だからね。でも愛子がここまで成長して良かった。」

「私って、どうなの?優等生なのかなぁ?」

「うーん。どうだろう…。少なくても手が掛かる面倒な生徒ではないから、楽は楽だったかな?」
「手取り足取り教えるのって難しい事だし、感覚って言うか、コツみたいなのを覚える事でしょ?」
「なかなか、教えるには難しいんだよね。」

「確かにそうだね。言葉じゃうまく説明出来ないし、大変なのは確かだよね。」

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選ばれし者達(38)


愛子は仕方なく、しばらくの間学校を休む事になり暇を持て余していた。

腕の方がまだ少し痛みがあるが、パソコンには幸いにもトラックボールにもなるマウスを使っていたので、不慣れだがパソコンも使える様になってきた。愛子としては香織が立ち上げた掲示板の設定だけは早く済ませたい気持ちがずっとあり、やっと設定を終える事が出来た。

早速アクセスをしたが、まだ書き込みをするにはだ辛いが掲示板を見るだけならなんとか出来る状態になっていた。

香織から話しがあった、情報収集に使っている班を1つくれると言う話しについては何の連絡もないままだった。

ここ数日はパソコンで掲示板を見たり、携帯で意味もなくゲームをしたり、携帯電話で裏サイトの掲示板を見たり、また通院したりの日々が暇な様で暇ではなく、続いていた。

そしてやっと、学校に行ける日が明日となったその晩に香織から電話が掛かってきた。

「愛子、明日学校に来るんでしょ?」

「うん、行くよ。大分空いちゃったから勉強心配なんだけどね。」

「大丈夫。愛子は頭いいし私がノート見せてあげる。」

「わかったけど、香織そんな事して大丈夫なの?」

「まぁ明日学校に来ればわかるよ。もう私の事は、虐めようと思わない様に完璧にコントロール出来ているから。」

「あんまりよく意味がわからないんだけど。」

「つまりね、私が仮に愛子と仲良く話しをしても、誰ひとり、私が愛子と仲良くしてるから私を無視しようよ。なんて思う考えを起こさない様な感覚になっていると言えばわかるかな?」

「すごい。マインドコントロールみたい。」

「うん。そこまで大袈裟な事が出来る力があるといいんだけどね。まだそこまではいかないんだよね。愛子なら出来ると思うけど?」

「え?私が?」

「まぁ、それは先の話しかな?それより、前に出した課題覚えている?多分もう出来るはずだから、学校に行ったら答えを教えてね。」

「あぁ、あの《民》には至らないけど、少し力がある人がクラスにいるから誰だか当ててってやつ?」

「そう。多分今の愛子ならあっけなく出来るはずなんだけど、一様これも区切りだからね。」

「うん、でも自信ない。」

「大丈夫だって、今の愛子の力、前と比べ物にならない位に上がっているんだよ。出来たら約束した力の使い方を教えるから…」

「うん。わかった。」

「でもあれは教えると言うよりは、コツを教える位で出来るレベルの事だから愛子なら1分も掛からないかもよ。」

「そうなの?」

「うん、でも直接会わないとうまく教えられないから、何にしても明日以降だね。」

「そうなんだ。」

「うん。まずは早く腕を直さないとね。例の《民》の班を譲る話しもあるしね。」

「そうそう。そっちどうなったの?」

「もうメンバーは揃って話しは済んでいるよ。後は班長を愛子に会わせて、二人で調整する位かな?結局、全部で《民》が数人その下にそれぞれ《草》が4人は就く事になるから、班としては10人くらいになるかな?」

「それって私が10人を動かすって事?」

「まぁ実際には愛子が班長に指示を出すと10人が動いて調べてくれると言う訳。でも《民》が4人いるから、個別に指示を出す事も当然出来るよ。まぁその辺も相談して決めてよ。それより、班長をなんて呼ぶか考えておいてよ。班長って言葉は普段使ったら不自然だから、個人名やあだ名みたいなのがいい。」

「香織はなんて呼んでいるの?」

「私?…ダーリン。」

「ん?ダーリン?」

「そうダーリン。他人からは彼氏の事だと思うでしょ?だから人のいる前で、連絡をとっても不自然じゃないし、あまり印象にも残らない。そういう事。」

「なるほどね。」

「愛子もそういう名前を考えておいてよ。」

「そんな事言われても難しいよぉ。」

「まぁそんな複雑に考えなくていいからさぁ。電話とかメールで後から何か見られても怪しまれない名前ならいいんだから…」

「あーちゃんとか、ちぃーちゃんとかでも平気かなぁ?」

「そんな感じでいいよ。ただ、さすがに、ポチとかタマとかミケとかは勘弁してね。それじゃペットだから。」

「猫じゃないんだから、そんな名前は付けたりしないよ(笑)」

「じつは、昔そういう人がいてね。まぁ実質的には支障ないけど、電話の時に不自然でね。猫が電話に出る訳ないんだから…」

「大丈夫。何か考えておくよ。」

「そうそう愛子。明日の朝迎えに行くよ。いろいろ直接話しをしたい事もあるし」

「え?でも大丈夫なの?」
愛子はわざわざ迎えに来る事に驚いていた。

「大丈夫。大事な話しをしたいんだ。」
香織はそう答えた。

「うん。わかった。じゃあ一緒に行く。」

「じゃあ明日ね。」
香織は明るく答えると電話を切った。

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選ばれし者達(37)

夕食中の会話の内容では、書類上もう少し学校を休めば保険が少し多くでるから、休む事にして書類を出してしまったとの事だった。

「お母さん、そんな勝手に休む事にしないでよ。」

「まぁいいじゃない。お金が貰えるんだし…」

「そうだけど、勉強遅れちゃうじゃないのよ。」

「何言ってんのよ。それくらいあんたの頭なら大丈夫でしょ?」
愛子は母親に訴えたが、相手にして貰えなかった。

仕方なく部屋に戻り、携帯電話でまたサイトを覗いて見ることにした。

内容は昨日に引き続いていじめがバレていないか心配する内容が並んでいた。

愛子が掲示板の書き込みを読み終わり、ベッドに横になった時に香織から電話が掛かってきた。

「愛子、先生どうだった?」

「うん。なんか話が盛り上がっていたみたいだけど、さっき帰った。」

「帰ったんだ、それでどうなったの?」

「結局、種類を持って来て、必要な所を親が書いてまた持って行ったみたい。それで訳あってもう少し学校を休む事になった。」

「そうなんだ。でももう学校に来れる位になったんでしょ?早くおいでよ。《民》の試験の事もあるし…」

「うん。私も行きたいんだけど、大人の事情が有って…」

「大人の事情?」
香織は大笑いしながら続けた。
「大人の事情って何?」

「簡単に言えば、私をだしにちょっとお小遣を狙ってるみたい」

「あぁ、そういう事なのね。」
香織は何となく理解した様子だった。

「香織、私、先生達と会わなかったから《民》の事は大丈夫だと思うよ。」

「うん、わかった。ねぇ愛子。最近力の方、鈍ったりしていない?」

「多分大丈夫。香織が置いていった写真でいろいろ見ていたから。」

「そうなんだ。それならもう大丈夫かな?」

「何?」

「実はね。愛子に私が動かしている《民》の班の1つを譲ろうかと思っているの。」

「どういう事?」
愛子は香織の突然の話で驚いていた。

「うん。もう少し詳しく説明するね。愛子も知ってる通り《探りし者達》としていろいろ調べる時に、大勢の人を使って調べているのは分かっていると思うけど、いくつか班に分けて、同時に幾つかの事を調べているだ。それで、愛子も大分力を付けて来ているし、今自由に動けないし、今回の事みたいに急に調べないといけない事もあるでしょ?
それで、今まではいちいち私に連絡して、私が動かして調べてって感じだったじゃない?でももう愛子自身でそういう調べられる事が出来るようにしてもいいかな?って思っているの。
ねぇ愛子、どう思う?」

香織の話を聞き確かにそうだと感じていたが、愛子自身は私にそんな事が出来るのか不安でもあった。

「話はわかるけど、香織は班を譲っても困らないの?」

「それは大丈夫。今新人が入って来ていて、班編成を変えたりして班が幾つか増えたから、大丈夫だよ。」

「でも私に使えるかなぁ?」

「大丈夫。連絡はメールで報告もメール。実際に会ってどうのって事は滅多に無いよ。そもそも《闇蜘蛛の民》って言う位で表に出ない様に動いている《民》なのは知ってるでしょ?
でもまぁ、実際に譲る時は、班長を愛子に会わせるけどね。
やっぱり、会わないと実感が無いし、報告も信じられない所があるでしょ?」

「そうだけど…。」

「一様相手も《民》だから、一度は合わせたいんだ…。あとね。使われる方からしたら、自分より力が無い人に使われるっていい気分じゃないでしょ?だから、Aクラスの《民》って感じじゃないと、恰好つかないから、力の方、頑張ってよ。」

「そうなの?まぁ、確かにそうだけど…」

「愛子、いずれは愛子も《民》を動かさないとこなせない役目を負っているんだから、早くそういう事に慣れないと…」

「うーん、わかった。」

「それじゃ、近いうちにまた連絡するね。愛子の為に優秀な人を集めているから、楽しみにしていてね。」

「そんなわざわざいいよ…」

「大丈夫。愛子に見合った力の人で揃えるから…」

「そう?わかったわ。」
そう答えると電話が切れた。

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選ばれし者達(36)


香織の携帯に電話をしたがなかなか電話に出なかった。10回ほどコールした時に電話が繋がった。

「もしもし…。」
愛子が呼びかけたが、何も返事がない。

「もしもし…香織、起きてる。」
もう一度呼び掛けた時に反応があった。

「ふぁ〜…。ん〜…。」

「香織。寝てた?」
愛子はバツが悪そうに聞いた。

「あ〜愛子?こんなに早くどうしたのぉ?まだ頭の中、寝てる。」
香織は寝ぼけている様子だった。

「香織、ごめんね。起こしちゃったみたいだね。」

「うん。大丈夫。今起きた。」

「香織、メール読んだよ。」

「あ、メールね。」

「香織、いろいろとごめんね。みゅーみゅーが来た時は注意するね。
それより、私このままじゃ、ブタになっちゃうよ?」

「え?な〜に?」
香織は自分がメールした事を忘れていた。

「だって、ケーキバイキングに、スベシャルハンバーガーに、びっくりパフェに、焼肉食べ放題をご馳走してくれるんでしょ?(^_^)」
愛子は香織がお詫びとしてご馳走すると言ったメニューを並べて言った。

「ははは、そんなに沢山になった?それたげ食べたらブタになるね。ごめんごめん。あのメール、昨日の晩あの電話を貰った時から今日の明け方までかかって調べた事をそのつどメールしてたから、あんまり考えてなかった。」

「まぁいいよ。今度何かご馳走楽しみにしてるね。それよりメールみたけど、とりあえずは気をつければ《民》の事は平気みたいだね。」

「まだ、確定とは言えないけど、多分大丈夫だと思う。」

「ありがとう。それじゃね。2度寝すると遅刻するよ。」

「ありがとう。多分大丈夫。」

そう言うと香織は電話を切った。

電話が終わる頃にちょうど起きる時間になっていた。

朝食を家族でとっている時、母親から、今日の午後に先生が家に来る事を聞かされた。

愛子は《民》の事もあり念のため先生達には会いたくないと母親に伝え適当な理由でごまかして欲しいと頼んだ。

午後になり、担任の先生とみゅーみゅー、それに何故か学年主任までついて来ていた。

愛子はすぐに帰ると思っていたが、意外にも話しが長くなり時間を持て余していた。

『早く帰らないかなぁ』
こんな事を考えながら携帯電話で香織が作ってくれた裏サイトを見ていた。

相変わらずのくだらない根も葉も無い噂レベルの話題で盛り上がっている中、愛子の家に担任が行くと言う話しが出ていた。
その書き込み以後、盛り上がっていた掲示板の雰囲気が変わり、神妙な雰囲気の書き込みが並んでいた。

愛子自身、どういう事なのか不思議だったが、遠回しに書かれた内容からどうやら、いじめの事がバレるのではないかと言う不安がある様だった。

この事を知り愛子はやっと学年主任がついてきた理由が何と無くわかった気がした。

掲示板の中で一番不安がっていたのは、いじめを主導していた4人だった。必死に口裏合わせをするように、細かくお願い事を書き連ねていた。

そもそもの事件に一番関係している香織の事は全く触れていない事に愛子は違和感を感じていたが、掲示板には、いじめの事実を隠す事で必死な書き込みが並んでいた。

夕方になり先生達がやっと帰って行った。
愛子はいじめの話しが出ていろいろと聞かれると思い、心の準備をしてからリビングに下りて行った。

片付けをしている母の様子はいつもの様だった。

「お母さん、随分話し長かったね」
愛子は恐る恐る言った。

「うん。案外に保険の書類ってややこしくてね。先生達も詳しくないみたいで、書くのに苦労しちゃったの。」
「とりあえずはいくらかは保険がでるみたいよ。」

愛子はいじめの事かと思っていたので安心した。

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選ばれし者達(35)


電話を切った後、香織の方はかなり動揺していた。まさか、こんな身近に《民》ではないとは言え、愛子との関係に気付き始めている人がいたとは、夢にも思っていなかった。

香織は、パソコンを操作して、「みゅーみゅー」の顔写真を探し出した。残念ながら、香織とのツーショットだった為に、クロップをしてなんとか、切り分けた。

慌てて、香織自身がとりまとめをしている《探りし者達》のリストの中から、写真から過去の割り出しが出来る人を探し出しパソコンを操作して、切り分けた写真を添付して過去の能力の開発の経緯など、調べて貰う様にメールを出した。
さらに電話をかけ、補足説明をして、大至急調べて貰う様にお願いをした。

香織はそれが終わると、《探りし者達》の掲示板から、みゅーみゅーに関係する情報を探し出そうとしたが、見つける事が出来なかった。

「とりあえずは、ここまでか…」
独り言をつぶやくと、裏掲示板にアクセスをし、日課になっているクラス内の情報収拾を始めた。

その頃、愛子は、携帯電話で裏掲示板を見ていた。相変わらず、実態の無い書き込みが溢れていて「相変わらずだなぁ」とつぶやいていた。…

翌日、愛子は朝から携帯に次々と届く香織からのメールの着信音で目が覚めた。

「もう、香織は何通メール、送ってくるのよぉ…」

寝ぼけ眼で携帯を見ると、香織が作った掲示板のメールシステムからだった。一様、夜中には送信しない様に気を使ったみたいで、その分一気に一晩に溜まったメールが来ていた。

内容は報告形式で細かく書かれていた。

何通にも小刻みに報告されているメールを総合すると「みゅーみゅー」は、元々は《民》とは無縁に近い家系らしい。仮に《民》との接触があるにしても、まれに生まれる強い力を持った人を覚醒者を探し出す民によって導く程度で、《民》との接触が有ったとは考えられないとの事だった。

ここまで愛子が10通以上メールを読んだにも関わらず、携帯でメールを読んでいる間も次々とメールの着信が入っていた。
「ちょっと、香織。何通メールあるのよぉ。」

次のメールを見て愛子は思わず吹き出した。
【愛子、ごめん。メールの嵐でしょ?今度、ケーキバイキングご馳走するから、許してね】
「おいおい。わかってるなら、メール減らせよ。」
思わず、愛子は一人ツッコミを入れていた。

その間にもどんどんメールが届いていたので、仕方なく届いた未読メールの処理をすることにした。

みゅーみゅーは中学時代に何かあると気付き、高校生になる頃はほぼ今の能力になったとの事だった。

愛子はよく一晩でここまで調べられるなぁと関心していた頃また香織からのメールがあった。
【本当にごめんね。携帯パンクしてない?今度、駅前のハンバーガー屋さんのスベシャルハンバーガーをご馳走するね。たがら、怒らないでね】

愛子は怒るつもりはなかったけど、スベシャルハンバーガーなんてあんな大きいハンバーガー、一人で食べられるかなぁ?なんて思いなから、未読メールとの格闘を続けた。

みゅーみゅーは高校時代にこの力の事が原因で失恋したらしかった。他にも高校時代のエピソードがいくつか届いていた。

また香織からのメールが有った。
【愛子、携帯電池切れになったらごめんね。今度、学校前の喫茶店の「びっくりパフェ」をご馳走するね。】

「え?びっくりバフェかぁ…。まぁ許してやるか…。」
愛子はつぶやいていた。

びっくりパフェとは、学校前にお店がある事から女子高生を狙って破格値で売り出している、様々なフルーツが乗った大きなパフェで、生徒の中では人気のあるメニューだった。


未読メールも後少しになり、愛子はメールを読む事にした。

みゅーみゅーは大学ではかなり優秀な成績だったらしいが、看護実習で病院にいる時に幽霊に襲われた経験があるらしかった。それで病院勤務をやめ、養護の先生になる事を決めたとの事だった。

愛子はやっと未読メールを全部読みほっとした頃に香織からメールが届いた。

【愛子、ごめんね。多分朝メールがたくさん届いていて、大変な事になっているでしょ?もしかしたら、寝ていたのを起こしちゃったかも知れないね。おわぴに今度、私が驕るから、焼肉食べ放題を食べに行こうね。】

愛子はメールを読み終えた事もあり、香織に電話をすることにした。

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選ばれし者達(34)

「実は…。実はね。」
「あのあなたが倒れた事件の事なんだけど、私どう考えても、納得できないのよ。だってあなた、貧血じゃないでしょ?」

「そんな事言われたって倒れたのは確かに私なんだし、理由を聞かれても私困ります。」
愛子はみゆき先生の指摘についてこう答えるしか無かった。

「確かそうなんだけど、何か変なのよ。あの香織さんの態度とか、最近、あなたと香織さんだけなんか違うのよ。」

「違うって何がちがうんですか?」

「あのね。存在感が消えるって言うのかな?なんか、幽霊が出て消えたみたいな感じ。」

「私って幽霊なんですか?」
愛子は意外な指摘に驚いていた。

「うまく言えないんだけど、あなたと香織さん。何か特別な何かがあるんじゃないかと思って。」

「何かってなんですか?」

「そうねぇ、超能力者とか?」

「え?私が超能力者?そんな馬鹿な事あるわけないじゃない。先生、そんな事で電話してきたんじゃないんでしょ?」
愛子は《民》の事に気付かれない様に話題を早く変えたかった。

「そうなんだけど…この話は今度にするね。それで本題なんだけど、今回の事故の事で、親御さんに説明したいと思っているのよ。保険の事もあるしね。その辺の説明もしないといけないし…。それで、都合の良い日を知りたいんだけど、わかる?」

「大体、家にはおかあさんがいるけど、土日なら確実にいると思うよ。」

「そう。それなら都合の良い日を電話でもメールでもいいから教えてくれる?」

「いいよ。聞いてみる。」

「それじゃあよろしくね。」
こう言うとみゆき先生は電話を切った。

愛子は電話の内容を母に伝え、都合の良い日を電話で伝える様にお願いをした。

愛子は香織に携帯電話から再び電話をかけた。

「あ、香織。電話、みゅーみゅーからだった。」

「そうなんだ。」

「保険の事で家に来るみたいなんだけど、それより私たちの関係についてなんか不審に感じているみたい。」

「え?そうなの?ちょっと待ってね。」
香織はパソコンを操作している様だった。

「愛子。みゅーみゅー、ちょっと注意しないと駄目かもしれない。」

「それって、どういう意味?」
愛子は気になって聞いた。

「みゅーみゅーね、《民》ではないけど、そこそこの霊力があるみたいなのよ。簡単に言えば、霊能者ね。例えば念を飛ばして、何か読み取ろうとすると、多分バレるよ。まぁ、私たちはそういう事はしないから直接は関係ないけど、いきなりオーラを飛ばすのは、わかっちゃう可能性があるかもしれない。」

「それって、《民》って事がバレるって事?」

「そこまでは平気だけど、何か力を持っているって事はわかっちゃうかもしれない。」

「それ、ヤバイじゃん。」

「うん。でも、《民》と言う存在については知らないと思うから、その辺は大丈夫かな。多分、バレたにしても、霊力があるとか、霊感があるって思う位だと思う。」

「それなら、大丈夫かなぁ?」

「でも、油断は出来ないよ。全くの素人じゃなくて、一様は力については、感じる事が出来るから、注意しないと…」

「わかった。」

「なんにしても、詳しく調べてみるね。私も大体の事しかわからない段階だし、知りたいから。」

「わかった。」

「保険の事で家に来るのなら、余計に気をつけないとね。」

「そうだね。でも、まさか力がある人がこんなそばにいるなんて、驚いた。」

「うん。まぁ無くは無い話何だけど。何にしても明日位には詳しい事を調べてメールするからね。」

「うんわかった、じゃあね。」
愛子はそう言うと電話を切った。

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選ばれし者達(33)

愛子にとって以外な事に愛子の骨折の事件は香織が愛子にちょっかいを出しその時に起きた事件だと思われていた。

香織が取り乱した事については、予想外に大事になり驚いたからと言う意見とわざとやった事で白々しいと言う意見が並んでいた。

香織が愛子の家にお見舞いに行っている事については、怪我をさせたんだから当たり前で仕方ないと言う意見と、以外にもさらにお見舞いの振りをして脅しているんじゃ無いかと言う意見もあった。

どっちにしても、香織と愛子の関係についてはまだ知られていないみたいだし、お見舞いに来ている事についても、それぞれ意見があるにしても、さほど不自然には思われていないのがわかった。

香織について悪口を書いているのは、わざとらしいと意見を支持している人が書いているのも段々わかって来た。

香織が愛子の為に設定した仕組みのおかげで誰が書き込みをしたのかはっきりわかるので、話の流れを正確に把握するのには困らなかった。

ここまでわかった時に香織から電話がかかってきた。
「香織、掲示板見たよ。なんか香織のせいで事故が起きた事になっているじゃない。香織大丈夫?」

「大丈夫だよ。あれね、私がそういう風になるように仕組んだの。」
香織の答えた理由に愛子は驚いた。

「え?わざと?でも香織の書き込みじゃなかったよ。」

「だから、この間少し話をした事あったでしょ。オーラの玉をぶつけて馴れさせて、コントロールするって言ったあれ。あれを使って、私が悪者になるように思わせたの。」

「でも、なんでそんな事したの?」

「愛子も分かっていると思うけど、愛子と仲良くしても不審に思われない様にする為の下準備。」

「でも、あの事件の本当の事は見ていた人がいればばれるよ。他に《民》がいないとも限らないし。」

「愛子。私の事分かってる?私は《探りし者》だよ。もし《民》がいたら私がもっと早く見つけているよ。だから《民》は他にはいないから、当然本当の事は誰も知らない。」

「あ、そうか…そうだったね。香織はそうだよね。それが役目だったもんね。」

「それより愛子、担任があの事故について詳しくいろんな人に聞いているみたいだよ。」

「そうなんだ。でも私の所には何にも連絡ないよ。」

「そうなんだ。なんでも学校での事故の保険の関係で詳しく知りたいみたい。まぁ愛子自身はいきなり倒れただけだから、聞かれても答えようがないよね。」

「確かそうだけど。力の事ばれたりしないよね。」

「それは平気だよ。」
香織がこう答えた時に、愛子の部屋を急に母親が部屋をノックした。

「香織、ちょっと待ってて、母さんが、なんか用があるみたい。」
愛子はこう言うと携帯電話を保留にした。

「何?」

「愛子、学校の先生から電話よ。なんか女の先生なんだけど…」
母親は初めて聞く電話の相手に戸惑っていた。

「今出るからちょっと待って。」
愛子は母親にこう言うと慌てて携帯電話を手にとった。

「香織、ごめん、学校から電話みたい。女の先生って言うんだけど、担任は男だから、誰だろう。一様出てみるから何かあったら電話するね。」

愛子はこういうと香織との電話を切り家の電話に出た。

「もしもし…」
愛子は恐る恐る電話に出た。

「もしもし。保健の佐藤です。愛子さん体はどうですか?」

「なんだ、みゅーみゅー?」

「ちょっと、一様先生と言われる立場何だから《みゅーみゅー》はよしてよ。」
電話の相手は養護の佐藤みゆき先生だった。しかし、先生とは言え、看護大学を出たばかりの経験が浅くて、また若く見える為にみゆきと言う名前からみゅーみゅーと呼ばれていた。

「はい。ではみゆきお姉様。どう言ってごようけんでしょうか?」
愛子は半分ふざけて返事をした。

「ちょっと、今度はお姉様?せめてお姫様にしてよ。」
みゆき先生も調子にのっていた。

「では、みゆき姫、どう言ったお話しでしょうか?」

「素直でよろしい。実は…。」

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選ばれし者達(32)

愛子は写真の一枚一枚を手に取り読み取りをしてみた。

自分でも気付いていなかった事だが案外いろんな事が読み取れる事に愛子自身も驚いていた。

「愛子、とりあえずはこれかな?って思う人をより分けてから一人に絞る様にしてごらん。いくら課題の人が力のコントロールが出来ないと言っても案外オーラって感じ方が変動する物だから、一発で特定は難しいと思うよ。」
香織からのアドバイスにしたがって愛子は写真のより分けをしてみた。意外にも枚数が多くなってしまったが、まずは気にしないで進めて行った。

大体10枚位に絞った所で愛子は困っていた。
「香織、これ以上よくわからないよ。」

「まずはいろいろとやってごらんよ。一枚ずつ見るのが合っているとは限らないよ。」
香織のアドバイスにしたがって愛子はとりあえずは残った写真を並べてみて全体を見てみる事にするとさらに何枚か除外する事が出来た。

「ねぇ香織。課題の答えって一人なの?」
愛子はふと聞いてみた。

「それは内緒。」
香織は意外にも鋭い質問だったが悟られない様に答えた。

「ねぇ。これ以上はわかんないよ。」
愛子はどうにもならなくなり香織に助けを求めた。

「しょうがないなぁ。とりあえずは残った人の写真を見せて。」
香織はこう言うと愛子が選別した写真を見た。

「わかった。やっぱりこの方法はまだ無理だったみたいだね。学校に行った時に教えてね。」
香織は残った写真の中に答えの人がいなかった現実を知り内心落胆していたが悟られない様に言った。

「わかった。じゃあその時に答えるね。ねぇ話変わるけどケイコの話が出た時に香織が日記帳みたいの見たじゃない。そんな大事な事、書いておいて大丈夫なの?」
愛子はふと気になっていた事を聞いた。

「あ、あれね。愛子に見せてあげるから見てごらん。」
香織はそういうと日記帳の鍵を開け愛子に渡した。

「じゃあ開けるよ?」
愛子が開くと1ベージ毎に名前が書いてあり、それぞれ携帯番号とメールアドレスや住所などがただ書かれていただけだった。

「これって住所録?」
愛子は思わずつぶやいた。

「そう。住所録。」
香織は落ち着いて答えて続けた。
「愛子、私がそんな大事な秘密にしないといけない事を見られる様な形で残すと思う?愛子なら分かるでしょ?私達仲間なんだから…」
香織の言葉を聞いて愛子はわかった。

「そういう事なんだ。ちょっともう一回見ていい?」

「いいよ。」
愛子は今度は紙に残されたオーラを見るようにして見てみたが何かがあるのがわかったがそれ以上はわからなかった。

「多分愛子なら何かあるのはわかるけど、読めないと思うよ。
悪いんだけど、秘密は《探りし者達》しか知られちゃいけない事だから、愛子でも読めないような方法で残しているの。探りし者達でも一部の人しか解明できないと思うよ」
香織の言った事は確かにそうだった。

「安心した。これでバレる事はないんだね。」
愛子は安心して言った。

「愛子だって力があるんだからこの方法で秘密にしたい事を残してもいいんだよ。」
香織は微笑んで愛子に言った。

「そうだね。私達二人しか解らない事だしね。」

「うん。じゃあ私そろそろ帰るね。この写真置いていくから、いろいろとやってみてもいいよ。」
香織はそういうと帰って行った。

愛子は香織が連日家に来る事について気になっていたので、裏掲示板を携帯電話からアクセスしてみた。

案の定、香織についていろいろと悪口が書いてあった。
愛子自身は香織に対しての悪口は、てっきり愛子の家にお見舞いに来ている事が理由だと思い込んでいたが、過去の書き込みを見ていくとどうやらそうでは無い様だった。

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選ばれし者達(31)

愛子は、初めての事だが香織に言われて試してみる事にした。
「わかんないよぉ。」
愛子はどうやったらいいかわからずにうまく出来なかった。

「愛子。私の写真も入っているからまずは私の写真を使って写真から判断する様にしてごらん。遠隔透視みたいだけど、実物が目の前にいるんだから、写真と同じ波長を感じ取れる感覚を掴むとうまく出来るよ。」

香織の助け舟を聞き愛子はなんとなくコツがつかめそうな予感がしてきた。

「わかった。やってみるね。」
愛子は早速写真の束から香織の写真を探した。
香織の写真は他のと違い、スナップの様に真っ正面を向きいつもと違い見たことの無い様な笑顔でピースをしている写真だった。
早速写真から波長の読み取りをしてみたが、何も感じなかった。《残留思念かな?》愛子は写真の残留思念を読み取ろうとした時に頭な中に突然に《ケーキ》のイメージが出てきた。
「香織、いろんな種類のケーキが次から次へと出てくるんだけど…」

「えっ…ケーキ?」
愛子がケーキて言った事を聞いた香織は動揺している様だった。

「うん。ケーキ。それもお皿いっぱいに乗せた入りきらない位のケーキ。」

「え゛…」
香織は完全に固まっていた。

「なに?」
愛子は香織に聞いた。

「実は、その写真を撮る前にケーキバイキングに誘われて、何食べようかな?って考えていた時の写真で…」
香織は白状した。

それを聞いた愛子は大きな声で笑い出した。
「香織、ケーキ大好きだもんね。だからこんなに笑顔なんだぁ…(笑)」

「まさかこんな事がバレるとは…。ちょっと想定外だったなぁ。」

「それにしても凄く沢山ケーキが出てきたけど…そういえば4次元別腹を持ってるって言っていたよね。どれくらい食べたの?」

「内緒だよ?30個位かな?ムース系ばかりだけどね。」

「30個?!…」
聞いた愛子は固まっていた。

「今度ケーキバイキングおごってあげるから、絶対内緒だよ?」

「わかったから」
愛子は約束をした。

「それより、愛子は写真からだと、写真が撮られた時の事が読み取れるタイプって事なんだね。他に何かわかる事ある?」
香織は愛子に聞いてみた。

「うーん。よく分からない。でも、この時、香織いつも力を抑えているのに、なんかうまく抑えきれていないよ。」

「え?って事はオーラの力とかわかるの?」

「うん。わかる。」
香織は意外な愛子の能力の開花に驚いていた。

「例えば、このケイコの写真。失恋したみたいで落ち込んでいるのに、ごまかしているのがわかるし…」
愛子は一枚の写真を手に取り言った。

「ちょっと待ってね。」
香織は愛子の話を聞き慌てて自分のかばんから、鍵の掛かる日記帳の様な物を取り出し、慌ててページをめくり何かを探している様だった。

「本当だ…確かに3日前に失恋している…。愛子凄いよ。」
香織は目を丸くして驚いていたいた。

「そんなにすごいの?だって写真にしっかり記録されているじゃない。」
愛子はただ感じた事を言っただけで凄いとは全然感じていなかった。

「愛子は写真からはその時の事を読み取れる能力のタイプって事なんだね。普通は写真からは、愛子の様にその時の事を読み取るタイプと、今現在を読み取れるタイプと、未来を読み取るタイプがあるんだよ。それで愛子は一番可能性が高い、今を読み取るタイプだと思って写真からの判別を試して見たんだけど、違ったんだね。」

「ねぇ、このタイプが違うてやっぱり問題なの?」

「ううん。全然大丈夫。《民》にはいろいろ能力差があるからね。全然大丈夫だよ。と言う事は、例の課題。まだオーラのコントロールが出来ないんだから多分愛子のこの力で出来ると思うよ。この写真の束から探し出してごらん。」
香織は自信を持って答えた。

「うん。やってみる。」

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選ばれし者達(30)

香織は続けた

「ちょっとこの仕組みを説明すると、このサイトにアクセスする段階で、携帯電話の登録データとメールアドレスで確認しているの。この事は大事だから覚えておいてね。パソコンからのアクセスにはクッキーを使ってる。この認識があってはじめて掲示板にログイン出来る様になってるの。
これで知っている人しか掲示板の存在すら知らない事になる訳。凄いでしょ?
後はログインだけど、これも携帯電話の情報とメールアドレスを使って判別してるの。パソコンからの書き込みはクッキーの情報とプロバイダのアクセスポイントとIPアドレスを使ってるわ。
つまり、これらの情報を使って書き込みをしている人の判別もしているの。
それで、画面を見るとわかるけど、これは私や愛子がアクセスした時だけにわかる仕掛けなんだけど、投稿者の色が赤なら投稿者が判別済み。黄色が推定段階で判別済み、青は未確認になってる。本当は誰かというのは名前の後ろにある括弧の中にある名前が本当の名前、確定出来ていない人は?が最後に着いてるからわかるやすいでしょ?。

個人の判別は私達の《探りし者達》の情報を使っているわ。だから時間が経てば青字の人も判別されていくから…。愛子は何もしなくても時間が経てばわかるから心配しなくていいよ。

もうほとんどの人は確定しているけどたまにしかアクセスしない人の中にはまだの人もいるわ。」

「凄いね。」
愛子は関心するしか無かった
「それより香織いじめとか大丈夫?」
愛子は今回の一件で香織がいじめられているのではないかと心配でしかた無かった。

「うん。実際の所いろいろと掲示板には書かれているよ。でもそんなに気にしないで大丈夫だよ。もう掲示板の内容は私が完全に把握している訳だし、ちょっといじれば情報操作も出来るしね。
それに愛子は完全に力が使える様になれば完全にクラスの事をコントロール出来るから大丈夫だしね。」
香織は安心している様だった。

「でも今はまだじゃない。なんか心配で…」

「平気だよ。これでも私はBクラスの《民》だし、何だったら人の弱みなんか簡単に手に入れられるから、それを逆手にとればいいし…。なんせ情報を操る《民》なんだから、情報を得るのは簡単だしね。」
香織は自信を持って答えた。

「ねぇそのBクラスって何?」

「あ、ごめん。うちの《民》の中では《民》の強さのランク分けをAからEで分けているの。ちなみに愛子の《輝ける者達》はAクラス。私達の《探りし者達》は大半がBクラス、《草の民》はCクラスがほとんど。まぁ他にも能力でランクが違う人もいるけどね。」
香織は愛子に簡単に説明をした。

「大体わかったわ。私のそのクラス分けを使ってもいい?」

「うん。いいよ。お互い決めておかないとうまく話が出来ないしね。」
香織は愛子に微笑みながら答えた。

「そうそう、もう1つ用事があるの。」
香織は続けた。

「ちょっとこの写真を見て」
香織は30枚位あるだろうか。写真の束をかばんから取り出した。

「これ何?」

「これね。様々な時に撮ったクラス全員の顔写真なの。愛子に出した課題の答えこの中から答えて」
香織は愛子にこう告げて写真の束を渡した。

渡された写真は休み時間や昼食の時間など、様々な時間に隠し撮りをした写真がほとんどだった。

「写真を渡されてもわかんないよ。」
愛子はいきなりの事に戸惑ってしまった。

「大丈夫だから、まずはやってごらん。愛子ならできると思うよ。」
香織は微笑みながら答えた。

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選ばれし者達(29)

香織は翌日も愛子の家にお見舞いに来た。
「愛子、調子はどう?」
香織は相変わらずのキャピキャピした感じで話かけてきた。

「うん。まぁまぁかなぁ?」
愛子は香織の元気の良さに少し圧倒されていた。

「今日も昨日のあれやってあげるね」
香織はそういうと愛子の横に座った。

「ちょっと香織…」
愛子は香織にそういう間もなく夢の世界に旅だった。

20分程して意識を戻した愛子は香織に言った。
「ちょっといきなり力を使うのやめてよ。」

「いいけど、あれめちゃくちゃ痛いよ?」
香織は答えた。

「そういう意味じゃなくて、いきなり失神させるのやめてよ。」

「あ、そういう意味ね。」
香織は笑いながら答えた。

「それより香織、毎日お見舞い来なくてもいいよ。」
愛子は香織に向かい言った。

「うん。そうだけど今日は用事があるの。」

「何?」

「この前のウィルス騒ぎの後でみんな闇掲示板の事がバレてあそこにアクセス出来なくなったじゃない?」

「うん」
愛子はあのウィルス騒ぎの事を思い出していた。

「実は私、新しい掲示板を立ち上げたんだ。」

「何?香織が?」
愛子は香織が掲示板なんて驚いていた。

「うん。ただ誰も私が作ったなんて知らないけどね。で、もう大分人が集まってきいるんだよ。
それで、実は他の誰も知らないことだけど、書き込みをした人が私にはわかるような仕組みにしてあるんだ。
それでね、愛子にも私と同じ様に誰が書き込みをしたのかわかるような設定をしたIDを登録したの。これがアドレスとIDとパスワードね。」
香織は愛子にメモを渡した。

「でも何でそんな事出来るの?」

「実は、元々は《民》用に動いていた情報収集用の一部の掲示板を私が自由に使える様になったからそれを利用する事にしたの。
当然私は管理者だから全てがわかる訳。そうそう当然愛子はこの掲示板の存在を知らない事になっているから、安心してね。
実は、この掲示板を《探りし者達》としての情報元にも使おうと思っているんだ。いい考えでしょ?」

「なるほどね」
愛子は納得した

「それよりちょっと複雑な作りになってるから、今アクセスしてよ。説明するから…」

「わかった」
愛子はとりあえず携帯電話からメモに掛かれたアドレスにアクセスをした。

画面には、接続パスワードを聞く画面が出てきた。

「これ何?」
愛子はいきなり現れたパスワード画面に驚いた。

「まずね。初めてのアクセスだから、メモの接続パスワードを入力してよ。まずこれが第一の関門で知らない人は接続すらできない仕組みにしているの。」
愛子は接続パスワードを入力した

「次に携帯電話の登録をするから、登録のボタンを押して。」

愛子は香織の指示に従って携帯を操作した。
ボタンを押すと、すぐに携帯からメール送信画面になり空メールを送信した。間もなくメールが届き改めてアクセスする為のURLが掛かれていた。

「このメールに書かれているページにアクセスして。」

愛子がアクセスをするとメールアドレスが登録されてやっと掲示板へのログインの画面が出てきた。

「ここでメモのIDとパスワードを入れて。」

愛子が入力をするとやっとアクセス出来た。

香織の作った掲示板は掲示板と言うよりはプロフに近くメールや自己紹介など出来る様になっていた。

「愛子、それでまずは下の方にある管理者アクセス画面のリンクに入って。」

愛子が管理者アクセス画面に入ると、《承認されました。》とだけ表示された。

「これで一様登録が終わったよ。腕が治ったらパソコンからもアクセスしてね。」

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選ばれし者達(28)

「それより香織、私もう少しで香織の課題出来そうな所だったんだよ。」
愛子はあの日の出来事について話し出した。

「あともう少しで分かるところだったのに、香織がいきなり凄い力を放ったから香織のオーラでみんな覆い尽くされちゃってわかんなくなっちゃって…」

「そうなんだ。じゃあ今度学校に行けばわかるね。」
香織は嬉しそうに答えた。

「ねぇ、香織の課題をクリアしたらどうなるの?」
愛子は香織に聞いてみた。

「うーん。まだ考えていないけど、もう1つ位課題を出したいと思っていたんだけど、予想外に力を身に着けているみたいだから、力の試験をしようかな?」
香織は悩みながら答えた。

「力の試験って?」
愛子はどんな試験か興味津々だった。

「まぁその時が来たら話すけど、実際に愛子の力を見せてもらおうと考えている。だってまだあれから、愛子の力を使った所は見せてもらった事ないしね。少なくても、私は愛子の下で動くんだから、やっぱりどの位の力があるか知りたいし、知らないと信頼して動けないしね。」
香織は答えた。

愛子は香織の言っている事もわかる気がしたが自分の力についてあまり自信が無かったのも確かだった。

「ねぇ。今度香織から教えてくれるって言っていた。オーラを球にして飛ばす方法とか、いじめられない様に気分を変える方法とか、今日香織が私にやった相手を気絶させちゃう方法とか、いつ頃教えてくれるの?」
愛子は早くいろんな事が出来るようになりたかった。

「そうだね。今度愛子の力を見せて貰ってからかな?その時の愛子の力の強さによって簡単に出来るようになるか分かるし、案外ちょっとしたヒントだけで出来ちゃうかもしれないし、その時に考えるよ。」
香織はこう答えさらに続けた。
「それより学校いつ来る?そのアザじゃちょっときたくないでしょう?」

「うん。2、3日は休もうかな?まだ腫れが引かないから引いてからかな?」

愛子は答えた。

「そうそう淋しいて思うからキティちゃん連れて来た。話相手にちょうどいいでしょ?」
香織は笑いながら15センチほどのぬいぐるみを取り出した。

「ちょってこれってキティじゃ無くてミミィじゃない?リボンが逆についているし…」
愛子がリボンが逆にあるのを見て言った。

「え!そうなの?ねぇミミィってミッキーマウスの彼女じゃなかったっけ?」
香織は思わず聞いた

「違うよ。ミッキーマウスの方はミニーマウス。こっちはミミィ。キティの双子の妹だよ。違いはリボンのついている場所。キティは右で、ミミィは左。だけど最近ミミィなんて珍しいよ。」
愛子はあっさりと答えた

「全然知らなかった。私リボンの場所なんて全然気にして無かった。
じゃぁそろそろ帰るね。また明日来てあげるね。」
香織はそう言うと帰っていった

愛子は香織が置いていったミミィをベッドの側に置いてあったけろっぴの横に並べて置き「仲良くしてあげてね。」と、つぶやき微笑んだ。

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選ばれし者達(27)

翌日、愛子は朝一番で退院をして自宅で静養をしていた。

午後になり香織がお見舞いにやってきた。
「愛子元気そうね。」

「うん。元気だよ。それより香織がうちに来た事がバレたら香織もいじめられちゃうよ。大丈夫?」
愛子は香織までいじめに遭う事が心配だった。

「大丈夫だよ。私レベルアップしたから、いじめられない様に相手の気分を変えられる事が出来る様になったんだ。愛子にも、もうちょっとしたら教えてあげるからね。そうしたらもういじめられない様になるよ。」
愛子は香織は話した事が信じられなかったが、真剣な顔から、もしかしたら本当かもしれないと思った。

「それより、香織、怪我が早く治る方法があるって言っていたけど本当なの?」
愛子は昨日の話を思い出し聞いてみた。

「あ、あれね。本当だよ。これからやってあげるよ。」

「え!今出来るの?」

「うん。でもちょっとね。」
香織はこういうと愛子が座っているベットの横に座った。

「ちょっと…何?」
愛子が怪訝な顔をして聞いた。

「かなり痛いから、ちょっと夢を見ててね。」
香織はこう言いかけたかと思うと、愛子の頭をだきしめた。

「ちょっと香織、ゆ…」愛子がいい掛けた瞬間に愛子は力が抜けた様に香織にもたれ込んだ。

「ごめんね。愛子。」
香織は優しく声を掛けると、微笑んで気を失っている愛子の骨折をした右腕を優しく両手で包み込み、手に意識を集中し始めた。

大体20分位した頃にまた、愛子の頭をだきしめ、手に意識を集中した。

その瞬間
「夢って言ったってそんな!」
愛子が突然に香織から逃れる様に押しのけながら言った。

「愛子終わったよ。」
香織は満面の笑顔で愛子に言った。

「終わったって何もしてないじゃん。」
愛子は香織に強く言った。

「愛子。時計を見てご覧?」

「え?時計?」
愛子は時計を見て驚いた。
「え?時間が…私、だって…」
愛子は完全に混乱していた。

愛子の感覚の中では、香織にだきしめられ、「ちょっと夢を見ていてね」と言われ「夢って言ったってそんな」と言って押し退けた。それだけだった。
しかし、時間は20分以上経過していた。

「私、タイムスリップした?」
愛子は真面目な顔をして香織に尋ねた。

「そんな事あるわけないって…愛子は全く気付いていないと思うけど、私がだきしめた瞬間に愛子は気を失って、その間に私が腕が早く治る様に力を使って治癒力を高める様にして、また愛子の意識を回復させたんだよ。」
香織はこの20分近くの出来事を話した。

「そんな事出来るの?だって私気を失ってなんかいないよ?」
愛子は真剣に訴えた。

香織はただ黙って微笑んでいるだけだった。

「じゃあ見ててね。」
香織は鞄から髪止めのゴムを取り出した。
「今、愛子の手には、何も付けて無いよね?」

「う、うん。」
愛子は何が始まるのか分からなかった。

「じゃあ良く見ててね。」
香織がこう言うと軽く愛子の頭に触れた。その瞬間に愛子はベットに倒れ込んだ。

香織は、髪止めのゴムを愛子の指にクロスになる様に人差し指から小指までかけていき、出来上がった時に愛子の体を起こして、頭に手を載せて力を集中した。その瞬間
「わっ!指!!」
愛子が飛び上がって驚いた。

「これで分かった?」
香織は愛子に話し掛けた。

愛子は目の前で起きた事が信じられなかったが、信じるしか無かった。

「ねぇ香織、これって私も出来るようになるの?」
愛子は香織に尋ねた。

「うん。出来るようになるとかの問題じゃ無くて出来ないと《愛の民》になれない…私がしっかり教えるから安心してね。お祖母さんと約束したしね。」
香織はニコニコしながら答えた。

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選ばれし者達(26)

「愛子、本当にごめんね。」
香織は、謝るだけて詳しくは話さそうとしなかったが、しつこい聞く愛子には逆らえずに素直に話をした。

愛子は自分の怪我の状態を知ってさらに驚いていた。
愛子自身は顔をぶつけた記憶が無いし、骨折した時の記憶も無かった。ただ愛子が覚えているのは、香織の「愛子」と呼ぶ声だけでその後の「ごめん!」と言った香織の言葉は聞いた記憶が無かった。

香織から状況の説明を聞いても貧血で倒れたと言う意識の失い形では無く、愛子自身が意識を失ったという感覚が無い程に瞬間的に意識を失った様で不自然だった。
そもそも、愛子は健康優良児で貧血で倒れた事は過去炎天下の時に1度あったのだけで、レバーの焼き鳥が大好物な愛子は普段から貧血では無かったから、倒れる事が不思議だった。

「ちょっと香織本当の事を説明してよ。」
愛子は香織に説明を求めた。

香織は観念したかの様に話し始めた。
「分かったわ。みんな話すわ。まず本当にごめんね。あれは事故だったの。私ね、2日前に《民》の能力が認められて、新しく力のコントロール方法を教わったの。
今回の事で今までは、地区長の指示で動いていた状況が自分の判断で動ける様になって、それに伴って力も強くなったの。
それであの時、力のコントロールの練習をしていて、力を小さく小さくする訓練をしていた最中だったの。
それで愛子が触れた瞬間に愛子の力も吸い取ってしまったみたいで、それで愛子は瞬間的に意識を失ってしまったみたいなの。
本当にごめんね。この力を吸い取ったり、逆に相手に注ぎ込んだりって元々は愛子の《愛の民》が一番得意な力なんだけど、愛子と私普段から近くにいるから波長が合ってしまったみたいで…。普段なら愛子の方が力が強いから、私の方が倒れるのが普通なんだけど、今回は不意打ちだったのもあるみたい。愛子にダメージを与えちゃった。
すぐに中断したんだけど完璧にタイミングと波長が合っちゃったみたいで愛子は多分瞬間的に意識を失ったと思う。
本当にごめんね。学校には、貧血って事にしてあるわ。《民》の事はしられていないから大丈夫だし、病院の治療費も学校内の事故扱いになったみたいで、保険からでるみたい。まずはゆっくりまずは休んで。」

「分かったけど…」
愛子はなんとなく事態が飲み込めた様だった。

「それより、なんで先に話してくれなかったの?つまりは香織偉くなったんでしょ?」
愛子は香織に聞いた。

「そうだけど、愛子もそうだけど、私もまだ上があって訓練とかしてる段階なんだよ。と言ってももうこれ以上は偉くなる必要もないけどね。もうすべて自分の判断で動けるから、不満ないし…」
香織は申し訳なさそうに答えた

「分かったわ。でも、香織のせいで怪我したんだから、後で何かしてよね。」

「分かったわ。じゃあもう私の判断で行動出来る様になったから、愛子が《輝ける者達》になったら私が愛子の情報収集役として動く様にするわ。これでどう?」
香織は愛子に約束をした。

「分かったわ。取りあえずはそういう事にしておいてあげる。」

「ねぇ愛子。それより、明日にでも退院出来るみたいよ。骨折は私が早く治る様に協力するから安心して。」

「早く治るって、そんな事出来るの?」

「まぁ、任せてよ。」
愛子は、香織の自信を持った返事を聞き一晩病室の中でどうやって治すのか、考えてみたが、分からなかった。

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選ばれし者達(25)

いよいよミニテストの時間が始まった。愛子はまずは自分の成績も気になるのでまずはテストに集中して回答を埋める事に専念することにした。
元々成績も良く完璧に理解していた内容だったので、思いのほか楽にテストをこなす事が出来た。

いよいよ、香織の課題に挑戦する事にした。

テストが終り机に顔を伏せて、意識を広げてみる事にした。

他のクラスメイトはテストに集中している。絶好のチャンスだった。
意識を教室すべてに広げた時に、明らかに異質なオーラの波長を出しているクラスメイトを見つけた。集中しているとオーラを強く発しているのが普通で、個々の生徒の存在がはっきり位置など分かる。その中で明らかに異質なオーラがある人を特定しようとした時である。突然に教室すべてを覆い隠す様な強烈なオーラがすべてを覆い全く分からなくてなってしまった。
出所はすぐ近くの席、香織だった。
愛子が、オーラを探っていると言う行為は香織には分かるはずが無く、それは全くの偶然の出来事だった。

それにしても今まで香織がこれほど強い力を出した事が無かったし、これほど強いとは全く知らなかった。仕方なく、香織の強力なオーラが収まるのをひたすら待つ事にした。
しかし、一向に収まらない。そんな事をしている間にミニテストの時間が終わってしまった。

続けて授業が始まり結局香織の課題をこなす事は出来なかった。
休み時間になり香織に文句を言ってやろうと思ってどう文句を言おうか考えているうちに授業が終わってしまった。

休み時間になり愛子は香織に文句を言おうと香織の席に近付いて行った。香織は目を閉じ休んでる様子だった。

「香織ちょっと…」
愛子が香織に声を掛けて肩に触れるか触れないか手を延ばした時だった。
愛子は指先から体の中身が吸い出されるかの様な不思議な感覚になった瞬間、『ふわっ』とした目眩を感じた。『え?何?』と思い体を支えようと腕を延ばそうとした時に遠くで香織が「愛子」と呼んだ様な気がした…。
後は何が起きたのか分からなかった。

周りにいたクラスメイトは香織の「愛子!ごめん!」と張り裂ける様な声で一斉にその瞬間を見てしまう事になった。

その瞬間、愛子は香織の肩に左手を置こうとした所、膝から崩れ落ちる様に前に倒れ、ムチを打つ様に顔面を前に有った机にとてつもなく大きな音を立てて強打し、倒れる時に「ゴキッ」と言う不気味な鈍い音が教室に響いた。

香織は、「愛子!」と泣き叫ぶ中、愛子は鼻血を流した状態で倒れていた。

見ていた女子のクラスメイトは悲鳴をあげ、偶然に通り掛かった体育の教師により、保健室に愛子は運ばれた。
目の前で倒れた愛子を見た香織はガタガタ震えただ泣きじゃくるだけだった。

保健室に運ばれた愛子は、まだ意識を失ったままだったが、腫れ上がった状態から、右腕を骨折しているのは明らかだった為に、救急車にて病院に運ぶ以外には無かった。

香織は自ら付き添いをかって出て病院に付き添った。

病院について愛子の状態はヒドいものだった。左顔面を強打した為に顔の半分に大きなアザが出来ていた。また右腕は肘から先の骨が折れていた。

愛子は3時間程して意識が戻ったが、事態が全く理解出来ない様だった。

「愛子、ごめんね。」
ベットの横に付き添った香織が意識の戻った愛子に真っ先に謝った。

「香織。何があったの?私、香織に話をしようと思って肩に手を延ばして…後はなんだか吸い込まれて、ふわっとして後は覚えていない。」
愛子は自分に起きた事を整理する様に話した。

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選ばれし者達(24)

「ねぇ、それより前から疑問なんだけど、香織が課題にしている民になる途中の人って私のあの鍵の謎も分かっているって事?」
愛子は心配になって香織に聞いてみた。

「大丈夫だよ。」
香織はあっさり答えた。
「あのね。課題にしている人は、力をつけた所で草の民になる位が限界だから愛子みたいに広い範囲での波長の読取りが出来ないし、今の段階では、見て波長の読取りも出来ないし、昔の愛子みたいに鍵を握ったにしても愛子みたいに数秒じゃ出来ないし、かなり集中しないと無理だから分からないと思うよ。」
香織は細かく説明した。

「安心した。」
愛子は安堵して答えた。
「後さぁ、あのオーラを玉にして飛ばしていた奴、あれって香織が相手をコントロールする為にやっているんでしょ?何をしようとしているの?」
愛子はふと感じた疑問をぶつけてみた。

「あれね。ちょっと聞き出したい事が有ってね。相手に抵抗されない様に細工をしようと思ったんだ。」
香織は隠して置けないと思い答えた。

「そうなんだ。あれって私でも出来る様になる?」

「うん。出来る様になるよ。と言うか愛子は出来ないと困るかな?まぁすぐに必要にはならないけど、いずれ必要になる事かな。急ぐ事じゃないから気にしないで平気だよ。まぁ覚えたかったら私が教えてあげるからいつでもいいよ。」

「ありがとう。まずはあの課題をクリアしないとね。」
愛子は元気良く言った。

「もう少しだと思うから頑張ってね。」
香織は課題が出来るのは時間の問題だと思った。

「じゃあ明日ね。」
こういうと愛子は電話を切った。

愛子は自然な状態で視覚に頼らずに力を感じる方法について考えてみた。
試しに普通に椅子に座った状態で試してみたが、自分の近くの範囲しか感じる事が出来なかった。
『こんなんじゃ教室全体なんか分かんないなぁ。』
愛子は目を閉じてやると出来る事は分かっていたので集中力の問題だと思い、集中力を付ける事が先だと思いまずはその方法を考えないといけないなぁと思った。

それからしばらくは愛子は時をみては集中力を付ける事を目標に訓練を家や学校など場所を問わずに続けていた。

訓練を続けて1週間後位より、目を開けたままどこを見ると無く、傍目からは辺りを見ている様な状態のなか約半径で20メートル程の範囲内ならオーラの波長を感じる事が出来る様になった。
『これだけ出来る様になれば、香織の課題出来るかな?』
愛子は一人つぶやき学校で授業中に試して見る事にした。

ある日の朝、実際に学校で試してみる事にした。しかしこれといって特徴のあるオーラの波長を出している人はいない様子でがっかりしたのだった。
そこで休み時間、愛子は力がある人が自分のオーラを抑えられない時について考えてみる事にした。そういえば愛子自身もオーラを小さく保つ事に苦労した経験から何かに集中している時には、オーラのコントロールが難しかったのを思い出した。

幸い次の授業時間はミニテストの予定だった。その時が絶好のチャンスだと思いその時に見つけて見ようと心に決めるとミニテストの時間が待ち遠しくなりワクワクしている自分に気付いたのだった。

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選ばれし者達(23)

愛子は以前使った紙に念を込めて香織にメッセージを出す方法を考えたが、教室で愛子から紙を投げる行為は不自然なので何か他によい方法が無いものか考えていた。
『何かいい方法ないかなぁ』
愛子の悩みとは関係無く香織は相変わらず明るく楽しく振る舞っている。
愛子は自分の机に伏せて目を閉じ方法を考えていた。その時ふと周りのオーラを感じてみようと偶然に思い付き試してみる事にした。
『あ!分かる』
席が近い香織のオーラはしっかり感じる事が出来る。
実際は見ずに、頭の中で思い描いた空間の中でしっかりと位置や力の大きさなどはっきりと感じる事が出来た。
さらに興味本位で、探る範囲を広げて見る事にした。
自分でも驚く位にクラスメイトの位置とそれぞれのオーラの力や大きさの差など明確に把握する事が出来るのに驚いた。範囲をさらに広げて教室すべてにしてもはっきり分かる。
愛子は、この方法なら香織の課題が出来るかも知れないと思いクラスメイト全てが揃う時に試して見ようと思った。

『でも駄目だぁ』
愛子は、クラスメイトが揃った時に机に自分が伏せた状態でも不審に思われない状況と言うのは、滅多には無い。
何か別の方法で同じ様な事をしないといけないと思い別の方法を考えないといけないと思った。

香織は愛子のこの気付きに全く気付いていない様子だった。

『そっか、私は周りの力を感じているだけだから、私からは力を発していないんだ』
愛子は改めてこの方法だと自分から何も力を発していない事に気付いた。

その夜、愛子は香織に電話を掛ける事にした。

「あ、愛子。どう課題、誰だか分かった?」

「駄目…まだ分からない。ねぇ香織、オーラを玉にして飛ばしていたでしょ?あれ何?どうやるの?」
愛子は香織にいきなり尋ねて見る事にした。

「え?愛子あれ分かったの?かなりマイナーな波長を使っていたからバレないと思ったのに…やっぱりオーラの波動のコントロールに強い《輝ける者達》の人なのね。」

「そんな話はいいから、教えてよ。」
愛子は早く答えを知りたかった。

「分かったわ。あれ少しづつ私のオーラの波長に慣れさせる為の方法の一つなの。それで波長が合ったらこっちからコンタクトをするとうまく意思が通る様になるの。簡単に言えばマインドコントロールかな?
実はね。いずれは話すつもりだったんだけど、私は愛子と違って読取りの幅は愛子と同じ位はあるんだけど、発する方の波長の幅が狭いんだ。だから相手の波長を自分の波長に合わせる事が必要になる時があるの。まぁこれも民の能力の差なんだけどね。」

「そうなんだ。私知らなかった。」
愛子は香織より自分の方が優れている事があった事に驚いた。

「愛子。実は私より愛子の方が能力的には上なんだよ。今は私が教えている段階だけど、いずれは私より凄い事が出来る様になるから、多分愛子が私を使う様になる。あなたの《輝ける者達》って言うのは、実はエリートなんだよ。」
香織はこう諭す様に言ったが、愛子は改めて驚く事実だった。

香織はさらに続けた。
「そういえば最近、愛子何か変わった事やってるみたいじゃない?私からは何をやってるのか全く分からないんだけど。」香織は最近変わった事を始めた愛子の様子が気になっていた。

「あぁ。やっぱり香織、気付いているんだぁ。最近ね、視覚に頼らないでオーラの力を感じる事をしているの。端からは寝ているみたいに見えるけど、はっきり位置とか個人個人の力の強さとか分かるんだよ。」
愛子は素直に今出来る様になった事を話した。

「そうなんだ。今視覚に頼らずに感じる事をやってるんだ。じゃあ、答えが分かる時が来るのも時間の問題だね。やっぱり私の予想より早いね。流石にエリートだから違うのかな?」
香織はこう言った。

愛子は自分のやっている事が間違っていなかった事に嬉しくなった。

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選ばれし者達(22)

2章 民へ


香織の下で《輝ける者達》になる為の修行がいよいよ始まる事になった。

愛子は朝一番で香織に携帯で電話を掛けた。
「ねぇ香織、あんまりいじめないでよ?」

「愛子、そんな訳いかないでしょ?残念でした。」

愛子はいきなり甘えたお願いをしたが、あっけなく却下された。
「じゃあ、まず簡単な所から、実は同じクラスの中に以前のあなたの様に民になる途中の人がいるわ。それが誰か答えて。ただ今までと違って探す相手の力はかなり弱いわよ。だからそう簡単にはいかないと思ってね。期限は区切らないつもりだけど、半月位にしましょう。まぁそんなにかかる事は無いと思うけどね。」
香織は早速課題を出した。

「分かった。頑張ってみる。」
愛子は心配ながら答えて電話を切った。

愛子が学校に着くと早速見回して探してみた。しかし愛子には朝の時点では発見出来なかった。

休み時間を使い課題に取り組んでいたが、香織は相変わらず、愛子とは仲が良い事を思わせる様な事が無い様に全く無視をしているかの様に振る舞っていた。しかし、愛子は香織が気にして様子を探っているの事を十分に感じる事が出来た。
当の香織の方に目をやると周りの人と全く変わらない程度のオーラしか発していなかった。他の同級生も同じ様に見て見たが、特に変わった感じがする生徒はいなかった。
『やっぱり簡単にはいかないなぁ』
愛子は、この方法では埒があかないと思い何か別の方法を考えて見る事にした。

『香織はその人の事はすぐに分かったのかなぁ?当然見つけるのが役目だから見つけたのは確かだろうけど。香織は確かに力は私よりは上だけど、香織は草の民を使い探す事もしていると言っていたから草の民の力で見つけられると言う事は確かなんだろうなぁ。そもそも出来ない事をいきなり課題にする筈も無いし。多分、今までに私が身に着けた事の応用で出来ると言う事なんだろうなぁ…』
愛子は必死に考えてみたが分からなかった。
『分かんないよぉ』
愛子は訴える様な目で香織にヒントを求めたが、アッカンベーをされてしまった。

発想を変えて愛子は、能力がある人が出来そうな事を考えてみる事にしたが、どう考えても思い当たる事を考えてみたが分からなかった。

仕方なく、取りあえず課題を中断をして、香織の行動をしばらく観察すれば何かわかるのではないかと思った。

しかし香織の行動を見続けて数日は全くヒントになる様な事は無かった。香織自身は愛子が自分の行動を見ている事にはすぐに分かったが、普通に振る舞っていた。

さらに数日経った時に愛子は香織のオーラを見ていた時に今までに見た事が無かった現象を見る事が出来た。
『え!何?』
香織のオーラの一部が球体になり飛んで行き、同級生の一人に当たった瞬間にその人のオーラの一部が球体になり弾けた様になった。

オーラを球体にして飛ばすなんて言う事は愛子は初めて見る事だったし、やった事も無かった事だった。
しかし、香織がやったと言う事は何か意味が有ってやった事なんだろう。時を見て聞いて見ようと愛子は決めたのだった。

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選ばれし者達(21)

「ねぇ、それでおばあちゃんの《輝ける者達》《愛の民》って何?」
愛子が尋ねた。

「私の《輝ける者達》と言うのは、力が元々強くて他から輝いて見えるから、そう言われているの、《愛の民》と言うのは、恋愛を操るのが主な目的で他人の恋愛感情を自由に操れる力があるわ。ただあまりにも力が及ぼす影響が大きいから、いつも監視をされているの。その監視をするのが、ここにいる香織ちゃんの《探りし者達》がそう。ここからは香織ちゃんに説明して貰った方がいいわね。」
ミツは香織に後の説明を託した。

「わかったわ。私の《探りし者達》と言うのは前に話したけと、民になる人を見つけるのが1つ。後はお祖母さまが話した、民の監視役もそう。後は、今回お祖母さまから承諾を貰った育てる事もするわ。他にも頼まれた事を手伝う事もあるわ。」
香織は今までとは違い力強く説明をした。

「凄いんだね。」
愛子は関心して言った。
「ねぇ、従姉妹の光の所は《千里眼の民》って人が来たみたいだけど、香織の《闇蜘蛛の民》とはどう違うの?」
続いて愛子は質問をした。

「私も《千里眼の民》については詳しくは知らないけど《千里眼の民》は遠くから監視とか出来る民よ。透視とかも出来るみたい。私の《闇蜘蛛の民》は人海戦術かな?大勢の民に協力して貰って探しているの、草の民も使うわ。大勢の情報網を使って動いているの。まるで蜘蛛の巣みたいでしょ?でも表に出ない様に裏で動いているのだから《闇蜘蛛の民》って言われているわ。」

「ねぇ、香織も大勢の人を使っているの?」

「えぇ、同じ《闇蜘蛛の民》の人の下で動いている草の民とか入れると10人以上は動かしているわよ。」

「凄い!ねぇ香織って偉いの?」
愛子は真面目な顔をして聞いた。

「うーん。偉いと言えば偉いのかな?一様、民としての候補の判断権もあるし、民を育てる事も許されているしね。もし、愛子があまり伸びなかったら私がコキ使ってあげるから安心してね。」
香織は笑いながら言った。

「そういえば、おばあちゃん、光も継承者になるの?」
香織は心配になって聞いてみた。

「そうね。まだ考えているんだけど、多分合格にすると思うよ。一度光に会ってから決めるつもりよ。」

「そうなんだ。安心した。」
ミツの答えに愛子は笑顔で答えた。

「ねぇ、香織。民って能力によってランクとかあるの?」
愛子が香織に聞いた。

「うんあるよ。《目覚めし者達》と言われる《草の民》は一番下かな?他にも民は沢山あるみたいなんだけど、お互いの存在はなかなか分からないから、あんまり良く互いにはわからないんだよね。ただ、お祖母さまの《輝ける者達》とか、私の《探りし者達》なんかはかなり上の方だよ。それだけ求められる力が強くないと出来ない事が多いから…でも逆にそれだけ役目も大変な事もそうだし、人数も少ないし、民として動けるまでの訓練も大変だけど…」
香織が説明をした。

「そうなんだ。凄いんだね。」
愛子は関心をしていた。「ねぇ、私も《輝ける者達》になれるかなぁ?」
「心配しなくて平気だよ。私がしっかり教えてあげるし、ここまでかなりのハイペースで出来る様になったから、見込みはあるよ。」

「良かった。香織にコキ使われるのなんて嫌だもん。」
愛子は笑いながら言った。

「質問はこれくらいでいいかな?」
ミツが割り込んで言った。

「そうね。また何かあれば、香織に聞くね。」
愛子はこう言い質問を終わりにする事にした。

「じゃあ、私そろそろ帰るね。愛子、明日から可愛がってあげるから、覚悟してね。」
笑いながら言って香織は帰って言った。

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選ばれし者達(20)

愛子の部屋には、祖母のミツ、愛子、香織がいた。
部屋に入って座布団に座るなりミツが香織に声を掛けた。
「あなた…もしかして…。」

「はい。そうです。」
香織は小さく返事をして間を置いて言った。
「初めまして香織と言います。愛子の友達です。お祖母さまにお目に書かれて光栄です。」

ミツは、しばらく間の後に言った。

「愛子の事はありがとう。あなたが手伝ってくれたのね。」

「いいえ。私は何も、ただ役目を果たしているだけですから。」
香織は恐縮しながら言った。

「そう。」
ミツは小さく答えた。

「では正式にお伝えします。愛子さんを合格にしたいと思います。」
香織はミツに向かい直して、はっきりと告げた。

「ありがとう。これで安心したわ。」
ミツが言った。

横で見ていた愛子は、二人のやり取りがどういう事なのか全く理解出来なかった。

改めて香織が愛子に告げた。
「愛子、おめでとう。正式に合格よ。」

愛子はただ見つめていたが、香織に尋ねた。
「ねぇ、おばあちゃんとの会話って何だったの?」

「そうね。あれじゃわからないよね。あなたのおばあちゃんはね。次の継承者候補を選ぶ役目を持っているの。愛子は知っていたと思うけど…。それで私と会った瞬間に私が《探りし者達》って事がバレちゃったの。元々、私は愛子のおばあちゃんか、お母さんに愛子が合格した事を話さないといけなかったんだけど、あなたのおばあちゃんは、正式な継承者候補の選定者って事がわかったから、今伝えたの。」

「そういう事なんだ…」愛子は何となく納得した。

ミツが話出した。
「それにしても、香織さん、まさかこんな愛子の近くに《探りし者達》がいたなんて驚いたわ。」
「はい。実はそれでお願いがあります。」
香織がいきなり切り出した。

「何かしら」

「愛子さんのこれからの指導を私にさせて貰えないでしょうか?もうお分かりの様に私は指導役の資格も有りますので、ある程度は指導出来ます。《闇蜘蛛の民》ですので情報網もありますし、まだ狭いですが、他の民との連絡も出来ます。
お祖母さまの様な指導役には育てる事は出来ませんが、《輝ける者達》として動けるだけの指導は出来ます。だから、宜しくお願いします。」

ミツはしばらく黙っていたが口を開いた。
「そうね。あなたなら任せられそうね。」

「ありがとうございます。」
香織は嬉しそうに言った。

「ねぇ、おばあちゃん。民の事でもう聞いたら教えてくれるんでしょ?」愛子が突然に話し出した。

「そうね。丁度《探りし者達》の人もいるしね。」
ミツが答えた。

「ねぇ、彼氏が出来ない事と民の事が光が関係しているって言っていたけど、どういう事?」
愛子は前から聞きたいと思っていた事を聞いてみた。

「その事ね。継承者になる為に恋愛は最大の障害なの。だから、ある程度力が身に着くまでは自然に相手が寄り付かない様になってしまうの。継承者候補としての訓練の弊害みたいな物よ。でも、もう愛子は自分のオーラのコントロールが出来るから、彼氏も出来るわよ。安心して平気よ。」
ミツはニコニコしながら答えた。

「後、私は何と言う民になるの?」

「それね。まだ確定では無いからはっきりは言えないけど、私達は《輝ける者達》の《愛の民》と言われる者で最終的な目標だと思ってね。でもまだあなたは、《愛の民》としての力は全然無いわ。今のままの力で確定してしまうと、《目覚めし者達》の《草の民》と言われる民になるの。この民は、様々な民から、能力的に成長出来なかった人達が集まって、様々な民の協力をする事が目的の民よ。悪く言えば使い走りかな?」
ミツは答えた。

「そうなんだ。」
愛子は相槌をした。

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選ばれし者達(19)

愛子は継承者になる為の条件の最後の課題に取り組んでいた。これが出来れば継承者の候補として合格を事になるが、難しい内容だった。
【何時もオーラを小さく保て、無意識で出来た時3段階を終了とする。】
愛子の頭の中では、この最後の課題の文字が離れないでいた。

愛子が学校に行き椅子に座っている時に、香織が丸めた紙を投げ付けて来た。

紙には
【ばか!恨みの念を込めて、いじめっこより】
と書かれていた。

愛子は、どういう事だろうかと疑問に思っていた。香織が投げ付けて来たのは何か理由があるのは明白だった。
『これも香織が出した私を試す為の試験なんだろうか』こんな事を考えていた。

それにしても余白が多い。書かれた文面も不自然な気がする。何度も読み返していた時に気付いた。
『恨みの念を込めて』『念?』
愛子は紙のオーラを見て見た。文字に何かがある。文字に指を置いた時に香織のメッセージが分かった。
『とうとうここまで出来る様になったね。これからはこの方法で連絡をするね。愛子からメッセージがある時は、愛子の波長で、マーキングをする時に念じればそれで伝わるよ。』
心に流れ込んで来る様な感覚だったが、香織の声が聞こえた様な感じもした。

愛子は、紙を広げ手のひらで机に押しつける様に手のひらをのせ、『分かったよ。』と念を込めてから、丸めて香織に投げ付けた。

香織は拾うと、にっこり笑い、ゴミ箱に紙を捨てに行った。

授業が終わり、家に帰ってドアを開けるなり母の光子が、声を掛けた。
「おばあちゃんが、明日来るわよ。」

「おばあちゃんが来るんだ。10年位になるから多分驚くね。でも明日、香織が来るんだけど、平気かなぁ?」
愛子は母に聞いてみた。

「大丈夫じゃない?しばらくこっちに泊まるみたいだから…」
光子は答えた。

部屋に入った愛子は香織に電話をした。
「香織。明日うちのおばあちゃんが来るんだけど、約束どうする?」

「そうなんだ。ねぇ私がいたら邪魔かなぁ?」
香織が答えた。

「別に構わないと思うよ。」
愛子は気にする事は無いと思って返事をした。

「分かった。じゃあ家に遊びに行くね。」
香織はこう言い電話を切った。

愛子は、久しぶりにおばあちゃんに会えるので、ワクワクしながら一日を終えた。

翌日、愛子は香織を連れ一緒に家に帰って来た。
「ただいま!」
愛子は元気良く言いながら家に入った。

「お帰り。おばあちゃん来てるよ。」

「あぁ、今日は香織も来ているの。」
愛子は母に香織の事を話した。

「香織ちゃん。久しぶりね。」
光子は笑顔で迎えた。

「おばあちゃん!」
愛子は大きな声で、おばあちゃんを呼んだ。

「まぁ、大きくなって…」
ミツは10年ぶりに孫に会い成長に驚いていた。
「ねぇ、おばあちゃん。これ友達の香織。」
愛子は香織を紹介した。
「こんにちは。まぁ可愛いお嬢さん…」
ミツは香織に挨拶をしかけて、驚いた顔をした。「あなた…」

「はい。」
香織は小さく返事をした。

「おばあちゃん、部屋で話をしようよ。」
愛子は、香織と祖母のミツの間で何が有ったのか気付かずに部屋に行こう促した。

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選ばれし者達(18)

愛子は香織から聞いた電話の内容を整理していた。

『私はもう少しで継承者として選ばれる候補としての条件を満たす。』

『それからの先の事はまだわからない。』

『私はなんらかの≪民≫の血を引き継いでいるから、力があるし、継承者になる為に頑張らないといけない。そしてなんらかの≪民≫として動く様になる』
『香織はもう探りし者達として≪民≫の一人になっていて、闇蜘蛛の民として動いている。』

『私がなんと言う≪民≫になるかは、香織は大体分かっているみたいだけど、私の家系、おばあちゃんかなぁ?から伝えれられる。』

『全ては、今のこの力が完全にコントロール出来た時に動き出す』

愛子は頭の中で整理してみた。

『そういえば今度おばあちゃんが来るって言っていたなぁ』
こんな事を思い出していた。

ふと、光が『≪民≫の判断で私か光が継承者になる』と言ったのを思い出した。

『光も《探りし者達》に会ったのかなぁ?』
ふと疑問に思い聞いてみようと思って光に電話を掛けてみた。

「光、ねぇねぇ。教えて欲しい事あるんだけど。」

「何?」

「あのね、継承者の候補の事なんだけど、光は継承者の候補としての条件を満たしていないから、私に継承者の候補になるように、訓練をして欲しいって事で私に話が来たんでしょ?」
愛子は光子から聞いた事をそのまま話した。

「あぁ、その事ね。実は私自身、あの今愛子がやっている教材のあれをクリアしたから条件を満たしていると思っているんだけど、民の人が継承者候補としての合格をくれなくて、判断をおばあちゃんに預けたの。」

「ねぇ、その民の人って《探りし者達》って言う人?」

「愛子はもうその辺の話も聞いているんだぁ。確かにそうだよ。えっと《千里眼の民》って言ったかな?いきなり、家に来てね。お母さんと話をして、急に呼ばれてね。それで、候補としては保留にするって言われて、お母さんがおばあちゃんに電話して、それから民の人とおばあちゃんが話をして、愛子の方も考え見ようって話になったんだ」
愛子はこの時に初めて愛子に矛先が向いた理由を知った。

「え!《闇蜘蛛の民》じゃないんだ。私ね。《探りし者達の闇蜘蛛の民》の人から、もうすぐに継承者の候補としての条件を満たす、って言われたの。」

「え!それって合格って事?」
光は、あまりにも早い展開に驚いた。

「多分、そうだと思うけど…でも今度おばあちゃんが来るから、その時にその民の人に会って貰おうと思ってるの。」

「何?その《闇蜘蛛の民 》の人って簡単に会えるの?」
光は自分の時の事を思い出し愛子に聞いてみた。

「うん。毎日学校で会ってるよ。」

「なに?そんなに近くにいるの?」

「うん。同じクラス」

「え!!」
光にとって愛子の周りに民がいた事は衝撃的な事だった。

「何どうかしたの?」

「だって《探りし者達》でしょ?そんなそばにいるなんて…」

「私もね。始めは民だなんて全然分からなくて、単なる親友だったんだけど、急に民だなんて言われて驚いたの。なんでもずっと前から見ていたんだって」

「そんなの事があるんだ…」
光は《探りし者達》の民によってこんなにも違う事に驚いていた。

「そういえば《探りし者達》にもいろいろ民があるって言っていたから、探し出す方法もいろいろあるのかもしれないね。」
愛子の説明を聞いて光は納得した。
「そういう事なんだ。」

「何にしてもおばあちゃんに会って貰えば継承者の件はっきりすると思うんだ。決めるのはおばあちゃんなんでしょ?」
愛子は光に聞いた。

「確かにそうだけど。」
光が言った。

「なんにしても、事情が分かったわ。ありがとう。」
愛子は光に電話をして良かったと思った。

その頃、光の方は愛子が継承者としての候補に合格した事に驚き、また継承者としての道がこんなにも様々な事に関心をしていた。

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選ばれし者達(17)

気がつけば香織に電話を掛けていた。

「香織。あなた…」
愛子がつぶやいた。

「愛子…。そっか…もうわかっちゃったんだね…私から先に言えなくてごめんね。」
香織は静かに答えた。

「うん。でもいつから分かったの?」
愛子は香織に聞いた。

「だいぶ前だよ。でもわかるでしょ、言えなかったのはお互いの決まり事だからね。」

「あの『≪民≫は、≪民≫以外には≪民≫である事を知られてはいけない』でしょ?分かってるよ。」
愛子が答えた。

「あのね。私から伝えないといけない事があるの。」
香織は冷静に言った。

「何?」
愛子は何を言われるのか不安になった。

「愛子ね。もう少しで継承者になる為の条件をクリアするわ。つまりね。継承者としての条件に合格したと思っていいわ。それを伝えるのが私の役目なの…」

「ありがとう。でも香織の役目ってどういう事。」
愛子は尋ねた。

「私、まず力がある人の中から民の人を探し出すのが役目なの。《探りし者達》の1つ《闇蜘蛛の民》と言われているの。」

「香織、良く分からないわ。」
愛子は香織に尋ねた。

「そうよね。少し説明するわ。愛子は生まれながら、力を持っている家系に生まれたのは知っているわよね。ただ誰がどの様に引き継ぐかと言うのは、民と言われるグループによって違うわ。愛子の場合はおばあちゃんからお母さんと言う風に女の子が継いでいるみたいね。」

「そうみたいね。」

「民には《何々の者達》と言う大きなくくりがあってその中に《何々の民》と言われるものがあるの。私なら《探りし者達》の1つの《闇蜘蛛の民》」

「そうなんだ」
愛子は必死に理解しようとした。

「私の《探りし者達》って言うのはね、力がある人の中から民の人を探し出して監視して時期が来たら教えるのが役目の1つなの。他にも幾つか探し出す為に動いている民は幾つかあるの。私はその中の1つで《闇蜘蛛の民》」

「じゃあ私も≪民≫なの?」
愛子はなんとなく聞いてみた。

「実はまだ分からないの。どの≪民≫になるかは最終的に決まる事で、今の愛子の力は≪民≫として動くのに必要な最低のレベルの基礎的な事が出来たにすぎないわ。実は大体はもう決まっているんだけど、これ以上の事はまだ私から話せないの。」

「じゃあ何時わかるの?」

「それも分からないの。ただ、愛子の家系を継いでいる人の誰かからは話して貰えると思うわ。私の場合はちょっと違うんだけど、普通はすでに≪民≫として今動いている人か、昔≪民≫で今は継承をする為に先生役をしている人から話があるわ。多分、愛子なら誰か大体察しがついていると思うけどね。」

「まずは、私どうしたらいいの?」

「簡単よ。まずは今の力を完璧にする事。それからの事は心配しなくて平気よ。」

「ありがとう。でも私この先どうなるの?」

「大丈夫よ。そんなに気にする事はないわ。まずは力の方を頑張ってね。私がついているから。」
「うん。」
そういうと電話が切れた。

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選ばれし者達(16)

愛子は連日、訓練に励んでいた。
そのお陰で無事2段階目をクリアして3段階目に入っていた。

3段階目に入ってからは指南書だけでは無く、さらに道具を使い訓練に励む事なった。
オーラを見る事については補助道具を使う事で見える様になってきたが、光が電話の中で秘密と言った、もう1つの難関、それに苦労をしていた。
愛子自身、力を使っている時には自分のオーラがとても大きくなってしまっていた。
それは自らの力の強さを表しているに等しい事だったが、3段階目の終了条件は力を使っていてもこのオーラの大きさを平常時と同じがそれ以下にしないといけないと言う事だった。

これは愛子にとって最大の難関であった。

元々力が強かった故に簡単にここまでクリア出来ていた。しかし、今回の課題はそれが最大の障害になるものだった。

力を押さえればオーラは小さくなるが、力を発揮出来ない。いろいろと試行錯誤を繰り返していたが、完全に行き詰まっていた。

「ねぇ、最近元気ないじゃん。」
いつもの様に漫画喫茶でたわいもない日頃の話をしていた時、香織が言った。

「まぁね…」
愛子はこう言うと、すかさず香織は
「愛子、今まで隠していた事があるんだけど…」いきなり切り出した。

「何?」
愛子は疑問に感じつつ尋ねた。

「あのね。体操着の鍵の事だけど、私秘密、わかっていたんだ…」
香織はたどたどしく言った

「え?どういう事?」
愛子は少し驚いて聞いた。

「お互いに話せない事だと思うから、今愛子が悩んでいる事のヒントを教えるね。」
愛子はこれを聞いても意味が理解出来なかった。
「あのね。手や目に集中するんじゃ無くて、全てお腹に集中して出来る様にしてごらん。」
香織はこう言った。

「え?何の事?」
愛子は何の事を言っているのか全く分からなかった。

「これが解決のヒントだよ。」
香織はこう言うと、その後はこの話題に触れなかった。

そして帰り際に
「愛子とはまた別の形でこれからも付き合う事になるね、きっと…」
香織は言ったが、愛子にはさっぱり何の事なのか分からなかった。

愛子は家に着くと、早速訓練を始めた。
相変わらず全く進展が無く、休憩をしていた時に香織の言った事を思い出していた。『手や目じゃなくてお腹…?』愛子は自分の手を見つめていた。
すでに補助道具を使わずにオーラを見る事はもう出来る様になっていたので、手のオーラを見ようと集中しようとした時に衝撃が走り気付いた。
『え!香織があの事に気付いている?』
愛子は、香織が言った事を全て思い出そうとした。
『鍵の謎』
『お互いには話せない事』
『手や目じゃなくてお腹に集中する』
『これからも別の形で付き合う事になるかも…』
全てが繋がった時に背中に電気が走った。

試しに今まで手と目に集中してやっていたオーラ視をお腹に集中してやってみた。
『まだ集中にばらつきがあるけど見える!』
すかさず、鏡の前に立ち自分の姿を見て自分のオーラ視をやってみた。
今までとは比べにならない位に自分から出るオーラが小さい。それにコントロールも出来そうだった。
『これなら出来る』
確信に変わった途端に香織の顔が頭に浮かんだ…
『お互いに話せない事…お互いに??』
『お互い…』

『え?!…』
『香織も力がある?』
愛子は驚いた。
もし、香織が力があって今の私の位だったら鍵の波長のマーキングは見えるから、秘密は当然わかる…。愛子はとても驚いた。

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選ばれし者達(15)

自分の部屋に入って愛子は、早速続きを始めた。
思った程難しいと感じる事は無く、無事に1段階目終了と言う文字を目にする事が出来た。
『案外、簡単じゃん』こうつぶやくと、久しぶりに光に電話をしてみる事にした

「光、やっほー」

「何?愛子。そういえば、あれやってるんでしょ?」

「うん。今日始めて一気に1段階目は終わったよ」

「そうなんだ。まぁ1段階目は、始めから愛子なら出来る事だったからね。」
愛子は光が驚くと思っていたのに、そっけない返事に少し意外だった。

「なんだ。少しは驚くかと思ったんだけど」
愛子は言った。

「まぁ、確かにそうなんだけど、1段階目は波長を感じる事が目的だから愛子、始めから出来たじゃん。だから一気に出来て当たり前だよ。」
光からこう言われて、当たり前と言った意味がやっとわかった。

「ねぇ3段階目って何が目的なの?」
愛子が尋ねた。

「内緒なんだけど、ちょっと教えると、オーラの波長を見て読み取る事と後1つあるけどこっちは内緒。」

「へぇ、見ただけでわかるんだ。じゃあ私もそこまでは出来る様になるんだね。」

「まぁそうだけど、まだまだ先があるみたいだしね。」
光が答えた。

「ねぇ、光は継承者になれそうなの?」
愛子はずばり聞いてみた。

「正直、まだ分からないんだよね。おばあちゃんの話だと可能性はあるんだけど、なんとも言えないんだって。」
光が答えた。

「そうなんだ。ねぇ、継承者ってどっちか一人だけなのかなぁ?」
愛子は率直な疑問を聞いてみた。

「どうなんだろうね。案外二人共に選ばれる可能性もあるかもよ。」

愛子はその時、光と共に継承者になれたらいいなぁと思った。

「どうやって選ぶんだろうね?」
愛子が尋ねた。

「知らない。」

「そうなんだ。ねぇ光は≪民≫の人って会った事あるの?」
愛子は光にまた尋ねた

「まだ無いよ。でもおばあちゃんは会ったみたい。なんでも一見すると全くの普通の人らしいよ。だから全然分からないんだって。そもそも、この力の事も民の事も誰にも話してはいけない事だしね。」
光が答えた。

愛子は自分が継承者に選ばれるかより、民の人ってどんな人なのか、そっちの方が気になっていた。

「愛子、それより早く、あれクリアしないと…駄目だよ。あんまり時間が無いしね。おばあちゃんとかの話だと、学校よりも、友達よりも、継承者の事の方が重要なんだって。詳しくは教えてくれないんだけど、凄い大事な事で、選ばれた人の中からしかなれないみたいと言う話だよ。あとね、愛子も彼氏出来ないでしょ?なんかこれも継承者の事に関係あるみたい。」

「え!彼氏が出来ないのと関係あるの?」
愛子は驚いた。

「うん。どうやら、ある条件をクリアするまで彼氏が出来ないみたいな事をおばあちゃんが言っていたんだよね。」

「何それ?ヒドい」

「でもこれってお母さん達もそうだったみたい」
愛子は、彼氏が出来ない事に関係あるなんてショックだった。しかし、お母さん達もそうだったと聞いて、何か奥が深い何がある事なんだと改めて感じた。

「ねぇ、今度こっちにおばあちゃんが来るみたいなんだけど、聞いたら教えてくれるかなぁ?」
愛子は光にまた尋ねた。
「無理みたいだよ。私も聞いたんだけど、まだ話せないんだって。なんでも、継承者に決まったら、力の事も≪民≫の事も全て教えてくれるみたいだよ」
光は知っている限りの事を答えた。

「そうなんだ。じゃあ継承者にならない事にはどうにもならないんだね。」

「そうみたい。」

「ねぇ、頑張って継承者になろうよ。ね!」
光は愛子共々継承者になって、この先も頑張りたいと思っていた。

「そうだね。私も頑張らないとね。」
愛子は言った。

「こっちも頑張るから、愛子も頑張ってね。」
こう光は言って電話が切れた。

愛子は再び、続きに挑戦することにした。

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選ばれし者達(14)

光子は、昨日のバソコンのごたごたで、継承者の話が出来なかったので、今日こそは話をしようと朝から思っていた。
しかし、結局朝は何かと慌ただしく話す事が出来ず、帰ってきたら今度こそと心に決めた。

昨日までのごたごたの間、光子自身、一人で力の回復に向けてなんとか、完璧ではないが2段階目まではなんとか、マスターをした。
だが、未知のその先の3段階目には苦労していた。『やっぱり私はこの辺が限界なのかなぁ』こんな事を考えていた。
すぐに愛子が帰ってきた。
「ただいま…」
何故かあまり今日は元気が無かった。

「珍しく元気ないじゃん」
光子が話掛けた。

「たまには、そんな時だってあるのよ。」
愛子は、言った。

「愛子、ここ最近ごたごたしてたけど、継承者の件考えてるの?」
光子はやっと切り出した。

「分かってるよ。もう届いているんでしょ?光が使っていたやつ。」

「これがそう。」
光子は愛子に訓練用の教材を見せた。

「これが、指南書?」
愛子が指南書を手に取り表紙を開けた。
「へぇ面白い。字が浮いてでてくるだ…なんか魔法の魔術書みたい」
こうつぶやき関心していた。

難なく表紙を開けた愛子の様子を見た光子はとても驚いて言った。
「愛子。あなたこれ開いたの?」

「え?なんで、開くって開かない物なの?」
愛子はこの指南書自体を開く事さえ、ある程度の力が無いと開かない事を知らなかった。

光子が呆気に取られていると。
【まず、この本の波動を感じてみよ。出来たら、自ら発せよ。さすれば次を示す。】
愛子は、あっさりと指南書の内容を読み
「こんなの簡単じゃん!」
と言いあっと言う間に
【次の文字を読め、何時の波動を変えて見よ。さすれば、次の指示を示す。後は波動を合わす事にて次を示す。心得よ。】次の指示のステップまでの指示を読んでしまった。

あまりにも、簡単に1段階目の始めの難関をクリアしてしまった姿を見て、光子は開いた口が閉じなかった。
「愛子、あなた…」
光子はつぶやいていた。
「何?母さん。」
愛子は、自分が今自分がやった事の凄さに全く気付いていなかった。

「愛子、あなた波動のコントロール出来るの?」光子が尋ねた。

「あぁ、それなら出来るよ。光がやったって聞いて自分でもやってみたら出来ちゃったよ」

「出来ちゃったって言ったって…」
光子は唖然として続けた。
「だって、これが出来るって事は波動を読んで、自分で同じ波長に合わせられるって事よ。そんな事も出来るの?」

「そんな事も何も、波長を変えてマーキングみたいな事も出来るよ。」

光子は聞いてさらに驚いた。その内容は完璧に1段階をクリアしたという内容だった。そしてあまりにもあっけなくこなしてしまった愛子に唯唯驚くしか無かった。

「母さんもこの位は出来るんでしょ?」
愛子は光子に尋ねた。

「もちろんよ。」
あっさり答えたが、昨日なんとか苦労して再び出来る様になったばかりだった。
「それより、いつそこまで出来る様になったの?」
光子は不思議でならなかった。

「もうだいぶ前だよ。それより、これ私のなんでしょ?部屋に持って行っていい?」

「それはそうだけど…」光子はあまりにも早い展開に戸惑っていた。

「あ、そうか…お母さんも出来ないと格好悪いよね。」
愛子は笑いながら言った。

「もう持って行っていいから、一人で出来る様に頑張りなさい。」
光子はこう言うのが精一杯だったが、心の中では愛子がもしかして本当に継承者になるのかもしれないと感じていた。

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選ばれし者達(13)

翌日、朝から教室内ではあちこちにグループが出来『例の書き込みをしたのは、愛子じゃないか?』という事でまとまりつつ有った。
しかし、親づたいに流れた『愛子の家にパソコンは1台しか無く、しかも感染していなかった』という情報で、犯人が愛子と言う説はすぐに消えた。

学級委員が自発的に感染した人の人数と宿題の提出が出来た人数を調べた。
感染して動作不能になったのは31人。しかし、パソコンが複数台、家にあり宿題が出来なかったのは26人と言う事がわかった。

同じ頃、職員室では担任と情報の教科の先生で、宿題の提出者が15人程しかいない事で、何が起きているのか?成績をどうするか?で話し合いをしていた。

しばらくして、ウィルスに感染したらしいと言う情報が入り、急きょ臨時に簡単な職員会議になった。そこでパソコンが動作不能になった人数を全校で調べる事になった。
この人数によっては、今回の成績の評価について検討しないといけないのではないか?と言う話も上がっていた。

いつもより早めにホームルームの時間が始まりパソコンが動作不能になった人数が調べられた。
しかし、パソコンが動作不能になったのは愛子のクラスが31人とずば抜けて多かったが、他のクラスでは数人程度で殆どのクラスは0と言う状況に教師達は、成績については特別な処置をしない事を決めた。

1時間目は愛子のクラスは情報の授業であり、宿題の件について、先生が生徒達に決まった事を話していた。

「知っての通り今回はウィルスに感染して宿題が出来なかったのは知っている。しかしこのクラスのみの出来事なので、特別な配慮はしない事になった。よって出来なかった者には、赤点を付ける事にする。」
先生は授業の冒頭にこう言い、さらに続けた。
「ウィルスの感染経路は知らないが、このクラスの生徒だけがずば抜けて多かった。つまり裏の掲示板か何かでの繋がりから感染が広まったんだろう。
どうせ、「先生がうざい」だの「宿題が面倒臭い」などと散々悪口や嫌味を書いて楽しんでいるんだろうが、そういう事をしているから、こういう事になるんだと思え!
とは言え、まさか26人に赤点を付ける訳にもいかないから、何か考える事にする。但し、簡単な事だと思うなよ。お前達が悪いんだからな。」
先生はこういうと授業を始めた。

休み時間や昼休みなど、どんな救済策がでるのかの話題で、もちきりだった。

今日の授業が全て終わり香織が帰る為に下駄箱を開けると、中に赤いマグネットが付いていた。

香織はマグネットを外して鞄の金属部分に付けた。

この赤いマグネットは、愛子からのいつもの漫画喫茶で待つと言う、待ち合わせの話が出来なかった時の最後の連絡手段だった。

香織は愛子が待ついつもの漫画喫茶に入った。

愛子は香織に言った
「ねぇ、本当にこれで良かったのかなぁ?」

香織は
「いいんだよ。みんなが愛子を理由なく苛めているんだから」

「でも…」
愛子は不安な顔をしていた

「大丈夫だって…」
香織はたいして気にしていない様子だった。

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選ばれし者達(12)

「ねぇねぇそれより、親達が大騒ぎしちゃってさぁ…」
香織は続けた。
「もう、あちこちから電話が掛かってくるし、こっちからも電話を掛けまくってるし、家の電話だけじゃ無くて携帯電話も持ち出して、大変な事になっているよ。
でもさぁ、今更大騒ぎしてもどうにもならないよね。」

確かにそうだった。
消えてしまったファイルはどうにもならないし、後はリカバリーしてパソコンを初期化する位しか救済策は多分ない。

「まぁ、今日の所はそろそろ落ち着くと思うよ。問題は明日かな?宿題の事もあるしね。多分宿題が出来るのは、私達とパソコンが家に無くて学校でやった人と、あのサイトにアクセスをしなかった慎重な人くらいだから、10人くらいじゃないかな?でもまさか宿題をやった人が10人じゃ先生も困っちゃうよね。」
愛子はそうだなと思った。

「それより、あのきっかけになった香織が書いたあのサイトの紹介の書き込み、香織ってバレないの?」
愛子は心配になって香織に聞いてみた。

「大丈夫だよ。あれね、昨日の夜中にアクセスして消したんだ。だって一通りあそこにみんなアクセスしたみたいだから残して置く必要ないし、みんなで盛り上がっているうちなら、消しても誰が書いたかとか、いつ消したとかバレないし、そもそも書き込みはしたのが、漫画喫茶からじゃ探すにも分からないしね。」
香織の考えは的を得ていた。

「なんにしても、愛子はあの裏掲示板の存在は知らない事になっているから、宿題が出来ても不思議じゃないし、私も弟が使っていてアクセス出来なかったって書き込みをしたから、あのサイトにアクセスしていないのはみんな知っているから、宿題が出来て当たり前だし、私達二人は宿題が出来て当たり前の人達なんだから、ウィルス騒ぎについては、全く関係ないと思われているから疑われる事はないよ。」

確かにそうだった。
私は裏掲示板を知らないんだから、今回のウィルス騒ぎには全く関係ない。香織は弟が使っていて、運良くアクセス出来なかったから感染しなかった。それだけの事。
まさか、ウィルスの感染に関係しているとは誰も考えない。

完璧に事が動いている事に自分でも怖くなった。

丁度電話の内容が一段落した頃に部屋をノックして父親が部屋を覗いて愛子に尋ねた。

「バソコン、ウィルス騒ぎが有ったみたいだけど、大丈夫だったのか?」
「全然問題ないよ。それより今電話中だから、あっちに行ってよ!」
こう愛子が父親に言うと父親はすぐに引っ込んだ。

「じゃあ明日ね」
愛子は香織に言って電話を切った。

愛子は再びネットにアクセスをするとあちこちのサイトで、クマのアニメに注意という注意喚起の情報が出ているのを見た。

この情報は裏掲示板にも書かれて、掲示板ではきっかけの書き込みをした犯人捜しが始まっていた。

真っ先に愛子の名前が上がったが、じゃあ誰がこの掲示板の存在を教えたのかという事については分からず答えが出なかった。

そもそも、あのきっかけの書き込みは実際に見ないと書けない内容が含まれていたので、書き込みをした本人も感染している筈だという間違った認識を持ってしまった為に、愛子が犯人説は愛子が宿題が出来たかどうかで明日わかるだろうと言う事で落ち着いた。

もし、出来ていたら?と言う仮説も上がったが、そんな事は有り得ないと言う流れに押し切られ誰も追及しなくなっていた。

愛子は明日宿題を無事に提出した事をみんなが知ったらどうなるのだろうかと、思い一人ウキウキしていた。

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選ばれし者達(11)

愛子が家に着くと母の光子は掛かってくる電話でパニックになっていた。
「愛子、何がおきているの?」
光子は事情が飲み込めていない様子で、頻繁に入る「お宅のパソコンは大丈夫?」との内容の電話の受け答えに四苦八苦していた。
光子自身は機械に弱くパソコンについては全く理解不能だった。しかし掛かって来た電話の内容から愛子に向かい、いきなり
「愛子、早く手洗いとうがいをしなさい!今コンピュータウィルスが流行ってるみたいだから、あなたにも感染したら大変でしょ!!」
光子は愛子に叱る様に言った。しかし聞いた愛子は目を丸くして、きょとんとしていた。
10秒位してから愛子は、突然にお腹を抱え転げ回って笑いだした。

光子は、突然の愛子の変化にウィルスに感染しておかしくなったと思い真剣な顔をして
「愛子!愛子!大丈夫!!」
と呼び掛けた。

その様子に愛子はさらに増して笑い転げた。
「お願い…もう駄目…、これ以上…笑わせないで…お腹苦しいぃ…」
と笑い転げながら言った。

笑い過ぎてヘロヘロになった愛子は、コンピュータウィルスについて母に丁寧に説明をした。
「なんだ、人には感染しないのね。私はてっきり愛子に感染して、それでおかしくなって笑い転げて笑っていたかと…」
光子はやっと理解した様だった。

「それにしても何が起きたの?」
光子は愛子に聞いた。

「知らないわよ。」
愛子は全て事情を知っていたが、面倒なので知らない事にした。

「それでうちのパソコンは大丈夫なの?」
光子は愛子に尋ねた。

「多分大丈夫だと思うよ。」
愛子が答えた。

「私、宿題があるから部屋に行くね。」
こういうと愛子は部屋に行った。

光子は今日こそは継承者の件で力の訓練について話をするつもりだったが、この騒動ですっかり忘れてしまっていた。

部屋に入ると愛子はパソコンを立ち上げ、裏掲示板にアクセスをした。愛子のパソコンは当たり前だが問題無く動いていたが、掲示板には悲鳴に似た書き込みが並んでいた。

書き込みは携帯電話からが殆どで、パソコンが動かなくなりどうにもならない人が殆どだった。中には、親の大切なファイルが消えてしまい、親から散々怒られパソコン使用禁止になってしまった人もいた。

愛子は、宿題をテキパキと済ませ先生のメールアドレスにメールをした。
一段落してから香織の携帯電話に電話を掛けたが話中で繋がらず仕方なくメールで【落ち着いたら話をしたい】と書いて送った。

夕食も終わっても家にはまだパソコンの事で電話が頻繁に掛かってきていた。しかしうちのパソコンが無事だとわかると、『壊れないで良かったわねぇ。』などの羨ましいと言う話に変わっていた。

お風呂から出て、髪を乾かしていた時に香織から電話が掛かってきた。

「凄い事になってるね。」
愛子は香織に言った。

「でもこれで苛めてた人に仕返しが出来たじゃん。明日が楽しみだね。みんな赤点だよきっと…」
香織は言った。

「ねぇ、感染して大騒ぎしているのってうちのクラスだけなの?」
愛子は尋ねた。

「そうみたいよ。だってあんな外国のサイトなんか誰もアクセスしないから多分掲示板に来ている人だけだよ。」
香織は答えた。

愛子は確かにあんな一般的では無いサイトにアクセスするのは、情報を知って興味本位でアクセスした人位だと思った。

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選ばれし者達(10)

体育の次の授業は情報の授業だった。
パソコンを普段から使っている愛子にとっては息抜きに近い授業だった。
しかし、授業が終わる頃先生はワープロソフトを使いクリスマスパーティの案内のポスターを作ると言う内容の宿題を出した。

先生は家にパソコンが無い人を確認し、その人には学校のパソコンを使う為のパスワードを書いた紙を渡した。それ以外の者は家のパソコンで作ってくる事になった。
提出は明日の朝8時45分の始業開始までにメールか印刷をして先生の元に持ってくる事になった。

「いいかぁ。今回の宿題は今までのまとめだから成績に響くぞ!提出しなかった者には赤点をつけるからな!」
先生は大きな声を出し言った。

一人の生徒が先生に質問をした。
「先生!最近、家のパソコンの調子が悪いんですけど…」

先生はこれを聞くと
「他にパソコンの調子が悪い奴はいるか?いるのなら今の内だぞ!いないな?締め切った後は、ウィルスに感染してみんな消えたとか、パソコンが壊れたとか、コーヒーを飲ませたとか、そういう理由で出来なかったなんて事は一切受け付けないぞ!いいなぁ!!」
他に名乗り出た生徒は無く先生は質問をした生徒を呼びパスワードの紙を渡した。

愛子はこの先生の話を聞き、密かに微笑んだ。

今日の授業が全て終わり、愛子は先に香織と待ち合わせをしていたいつもの漫画喫茶にいたが、すぐに香織も走って入って来た。

香織は会うなり第一声
「やったじゃん!まさかこんな展開になるとはね。今晩はみんなパニックだよきっと…。ねぇそろそろ時間じゃない?」
香織はそういうと、パソコンで裏掲示板にアクセスをした。

掲示板には、相変わらず愛子の悪口に並んで、今日出された情報の宿題について【かったるい】【面倒臭い】など書き込みが有った。まだ何事も起きていない様だった。

香織はチャット画面にアクセスをした。すでに数人チャットをやっていて香織も割り込みチャットに参加した。
丁度宿題の事についてチャットをしていた時に突然相手からの返事の書き込みが無くなった。画面には【おーい!起きろ!笑】などの冗談混ざりの会話の書き込みが並んでいだが、一人減り二人減り、とうとう相手が誰もいなくなった。

それと同時に香織の携帯電話が鳴った。

「香織!チャットごめん!パソコンが急におかしくなって動かなくなって…」
相手は何が起きているのか分からずパニックになっていた。

「何が起きたの?」
香織は意外にも冷静に会話をするものの、右手で愛子に向かってピースサインをした。
「何?ふざけた冗談やめてよ。」
香織は事実を知りながらあえて冗談を言っているかの様に会話を続けた。
「パソコンが壊れちゃったよぉ〜。」
電話の相手はこう言い、半べそ状態になっていた。

香織はやっと真面目に
「ちょっと大丈夫?」
と心配するかの様に話をし始めた。

次々と香織の携帯には今チャットをしていたであろう相手からと思う留守電が入った事を示すメールの着信が入り始めた。
香織は落ち着いて「ごめんね。留守電が入ったみたい」と言い電話を切った。
香織の携帯の留守電センターに残された内容は、今会話した内容と同じ様な物ばかりだった。

香織は愛子に向かい「とうとう始まったね」と言い両手でピースをした。

香織の携帯には、その後もメールや着信などが殺到し、流石に店内には居ずらくなり漫画喫茶を出る事にした。

香織は愛子に携帯で電話をしながら『ごめん』と言うジェスチャーをしてからバイバイのジェスチャーをした。
愛子は両腕でガッツポーズをして見せ、そして別れた。
愛子はいつもより早く家に向かった。

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選ばれし者達(9)

鍵の謎は他人にはわかる筈が無かった。

愛子は光とのメールのやり取りの中で、光が継承者になる為に学んでいる事について聞いていた。
その中の1つが、自分のオーラの波長を変動させる事とその波長の読取りだった。

人には固有のオーラの波長を持っていて、普通は変えられないし読取りも出来ない。

しかし光は、その波長の変え方や波長の読取り方を訓練したとの事だった。

愛子自身、光からのメールを読んで身近な物で自分なりに訓練をしてみたら波長の読取りは案外あっさりと出来てしまった。
その応用で母の物や友達の物など誰かが長期間使っていた物はその波長から誰の物か特定出来る様になっていた。
また自分の波長を変えて物にその波長を植え付ける事も多少苦労はしたが出来る様になった。

実はこれが鍵の謎であった。

愛子は南京錠と開ける鍵とを同じ波長でマーキングをした。適当に選び出した南京錠の波長を読取り、同じ波長の鍵を選びだせば、その鍵は必ず開く。

見えないマーキングと言う理由は簡単だが他人には絶対に分からない方法が答えだった。

光は品物を持った瞬間に波長の読取りが出来ると言っていたが、愛子は数秒掛かってしまう事が悔しかったが、この鍵の謎がわかるのは≪民≫の人か、同じ様に訓練した人くらいだと思っていた。

当然クラスの中に力を持った人はいる筈は無かったし、あの数秒で何をしているかは分かる筈も無かった。

体育の授業が終わり教室に戻ると、椅子の上に画鋲が3つ置いてあり、背もたれにも1つ張り付けてあった。
さらに机の右奥には【ばか!】と書いてあった。

実は椅子に置いてある画鋲3つと机の右奥に書いた【ばか!】の落書きは香織からのメッセージがある時のサインだった。
多分、背もたれの画鋲は誰かが便乗したのだろう。

「椅子の画鋲と【ばか】の文字。それぞれは有り得るイタズラだから、2つ組み合わせてサインにするね。」
香織はこう言い、二人で決めた事だった。

愛子は、予め決めて有った、メッセージがあるトイレの用具入れに行った。奥にトイレットペーパーの芯が置いて有り、芯の中にいつもの様に小さい紙が入っていた。素早く紙を取り出すとトイレの個室に入り読んだ。
【今日もいつもの所で待ってます。(^^)v】
それは香織からの待ち合わせの連絡だった。

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選ばれし者達(8)

翌日、愛子はいつもの様に起き、いつもの様に朝ご飯を食べ、学校に行く為に家を出た。
光子は昨日届いた荷物について全く触れない愛子の様子が不思議でならなかった。

愛子は家を出ると、駅前にある月貸しのコインロッカーに向かった。慣れた手つきで自分のロッカーを開けると中には教科書などが入っていた。
愛子は苛めの経験から様々な対策をしていた。
『隠される前に自分で隠すか、隠される様な物を置かない』
愛子は学校のロッカーには何も入れていない。大抵の物はこのロッカーに入れていた。手早く時間割りを見ながら教科書を揃えて自分の鞄に入れた。また今日は体育があるので体操着も取りだし別のバックに入れた。
実はこの体操着を入れたバックは一見普通に見えるが、海外で良くある鞄を切り裂き財布をスルという犯罪対策の為に作られた刃物では切れない生地で出来ていた、また直接旅行に使える様に施錠出来る様にもなっている特別な物だった。

学校についた愛子は真っ先に焼却場に向かった。愛子はそこで自分の私物が捨てられていない事を確認すると、続いて粗大ゴミ置き場に向かった。案の定、自分の机が捨ててあった。

自分の机を持ち、荷物を背負い下駄箱に向かった。

下駄箱についた愛子は自分の鞄から上履きを取りだし、自分の履いて来た靴をビニールに入れ鞄に入れた。
まだ生徒は誰も来ていない時間だった。靴を下駄箱に残さないのは、学校に来ているのと、靴を隠されるのを防ぐ事が目的だった。

愛子は教室に着くと机を置き、荷物を持ち屋上に向かった。そして授業が始まるまで時間をつぶした。そして始業時間に遅刻ギリギリに学校についたかの様に慌てて教室に駆け込んだ。

今日の3時間目は体育だった。
着替えの体操着が入ったバックを出しながら、愛子はいつも持ち歩いている鞄からやや大きめのボシェットを取りだした。
中には幾つもの南京錠やダイヤル錠、チェーン錠が入っていた。
その中から適当に南京錠とチェーン錠を1つづつ取り出した。南京錠を軽く握り目を数秒閉じ、それから自分の持っている鍵の束から鍵を選び出すかの様に1枚ずつ確認する様にして鍵を1つ選び出した。その鍵を履いている靴下の中に入れた。そして南京錠とチェーン錠、体操着の入ったバックを持って更衣室に向かった。

更衣室に着き、着替えを済ませた愛子は、一番端の棚に体操着のバックを置き、棚の奥に配管ミスなのかムキだしになって上下に棚を貫いている水道管にチェーン錠を巻き付けバックに鍵を掛けた。
そして靴下に隠した鍵を取りだすとバックに鍵を掛け、左足の靴下を脱ぎ手にした鍵の穴に髪止めのゴムを通し足首に通してから靴下を履き直した。

これで苛め対策は完璧だった。
バック自体を隠そうにも水道管とチェーン錠で繋いである。バックは施錠してあり、バックは刃物では切れない素材で出来ている。苛めをしているグループにはどうにも手出しが出来なかった。

それより、苛めをしている人達は、どうやって愛子が正しい鍵を選び出しているのかがどうしても謎だった。

いつも鍵が入っているボシェットの中には南京錠だけでも鍵がざっと10個以上入っており、全て同じ南京錠で見た目に違いは全く無かった。南京錠を選ぶ時は適当に選んでいる様だし、当然開ける鍵も全てそっくりで、あれだけの鍵の束からいつも開く鍵を確かめもせずに選び出している事が不思議でならなかった。

もしも愛子が1つしか鍵を持っていなかったら、隠してしまえば鍵を掛ける事は出来ないし、開ける鍵も簡単にわかるからそれを取り上げてしまえばいい。

しかし複雑の鍵からいつも無造作に選んでいる事と鍵を複数持っている事が、鍵に手を出せない最大の要因になっていたし、難関でも有った。

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選ばれし者達(7)

光子は、愛子が家に帰ってくるまでの間に少しでも力を回復させようと必死になり訓練をしていた。

いつもならそろそろ愛子が帰ってくる時間に、なんとか指南書の1段階の途中まで出来る様になった。実はもう少しやりたかったが夕食の支度を始める時間になり諦める事にした。

しかし、いつもの時間になっても愛子が帰って来ないので、少し心配になりながらも夕食を作り上げ帰りを待っていた時だった。

「ただいま!」
いつもと変わらぬ様子で愛子が帰ってきた。

光子は愛子が今日あたり、力の訓練の荷物が届く事を知って筈だったので、その話が出るかと思い構えていた。しかし、全くその話題には触れずに忘れているかの如く、いつもの様に学校での些細な事や電車の中にいた変わった人の話などをしながら食事を済ませると、いつもの様に部屋に行ってしまった。

光子は今日一日必死になり、力の訓練に励んだのに触れられる事が無かったので拍子抜けした感じだった。

部屋に戻った愛子は、パソコンを立ち上げ裏掲示板を覗いていた。

掲示板は、今日の午後に香織と共に仕組んだウィルスが潜んでいるアニメの話で賑わっていた。
まだ誰もウィルスが潜んでいるとは知らずに次々と【面白い】とか【可愛いい】といった書き込みが並んでいった。
その書き込みに紛れて香織の書き込みも有った。
香織は今日は弟の順番の日で、バソコンからアクセス出来ないから見れなくて残念と言う内容の書き込みを携帯電話からしていた。
香織は自分のパソコンではアクセスしないで済む口実をうまく作り上げて、感染から逃れる事に成功したのだった。

書き込みを一通り見た後、愛子は自分のパソコンも感染しては困ると思いソフトの更新をした。

その後に他の気になるホームページを見てから、寝る前に香織に携帯から電話を掛けてみた。

「あれうまくいったみたいね。」
愛子は、うかれた様子で言った。

「うん。明日には消えるからあさっての朝が楽しみだね。」
香織も嬉しそうだった。

「香織の書き込み見たよ。うまくごまかしたじゃん。」

「うん。私だけ掲示板に書き込みをしていないと変に思われると困るしね。そういえば、掲示板の書き込みを整理してみたんだけど大体30人位は感染したと思うよ。」

「そんなになったんだ。」愛子は驚いた様子で言った。

「もう遅いから、そろそろ寝るね」
香織はこう言い電話を切った。

愛子は久しぶりに楽しい夢が見れそうな気分になりそのまま眠りについた。

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選ばれし者達(6)

光子が家で力の復活に励んでいた頃、愛子は漫画喫茶で親友の香織と待ち合わせをしていた。

愛子と香織が親友だと言う事は学校では誰も知られていない事実で二人だけの秘密だった。

待ち合わせの漫画喫茶は漫画喫茶といっても漫画は大して置いて無く、あるのはHな漫画ばかりで女子高生が来る様な店では無かった。その為愛子には絶好の隠れ家になっていた。

香織が来るまで時間を持て余していた愛子は、自分の悪口が書かれた裏掲示板を見ていた。

家では明るく振る舞っていたが、実は学校ではかなり陰湿ないじめにあっていた。

しばらくして香織が漫画喫茶に来た。

「あいかわらす、ヒドい事書いてるね。ねぇ今日は大丈夫だった?いつもより今日はいじめが凄かったから…」
香織が話し掛けてきた。

「うん。大丈夫。」
答えながら、愛子は何処を見るとなく、マウスをクリックして何気なくネットサーフィンをしていた。

突然香織が「ちょっと待って!」と言った。
画面には
【クマのアニメに注意!ウィルス対策ソフトでは感知せずに感染しファイルが消去される事例が多発】
こんな見出しの記事が表示されていた。
【フラッシュプレーヤーの脆弱性を突くトロイの木馬につき至急バージョンアップをして対策を】
香織がマウスを操作して詳細画面を出した。

「ねぇこれで仕返し出来るかもよ?」
香織が言いながら画面を下にスライドさせた。

【現時点では、日本語版は未対策。英語版のみ対策済みの為、英語版の最新版をインストールするのが望ましい。なお英語版でも日本語版Windowsにインストールしても支障なし。日本語版の最新版が出るまでの繋ぎとして利用可能】

「ねぇ、これって知らない人がみたら感染するって事でしょう?みんなまさか対策をした英語版なんか入れている人なんかいないから、みんな引っ掛かるよね?」
香織が言った。

確かにそうだった。
まさかこの情報を知ってあえて対策をした英語版なんか入れる様な事をしている人はクラスの中にはまずいない。ましてこれはバソコンに詳しく無いと知らない最新の情報だった。

「ありがとう。いいかもしれない。」
愛子は嬉しくなり言った。

香織は早速、通りすがりの人を装って裏掲示板に【可愛いアニメがあるよ。】と注意喚起の記事に書かれたアニメの内容をほぼ丸写しして書き、掲示板に書き込みをした。

数分後【可愛い!!みんな超可愛いいよ?見てごらん!】と掲示板に書き込みがあった。そして次々と同様の書き込みが並んでいった。

香織は愛子の方を向いて満面の微笑みを浮かべピースサインをした。

香織はパソコンを続いて操作し、このウィルス情報を表示させ愛子に言った。
「感染して24時間後にパソコン内のファイルがみんな消えるんだって。明日の夕方にはみんな大騒ぎだよ!」
香織は笑いながら言った。

愛子は久しぶりに心が軽くなった気がした。

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選ばれし者達(5)

光子は、届いた物をまじまじと見つめ昔の記憶を呼び起こしていた。
そして指南書を手に取り何気なく開けようとした。『え?開かない!』目の前で起きた現実を受けるのに少し時間が掛かった。『なんで?』子供の時には難なく開ける事が出来ていた。しかし今は開かない。半分パニックになっていた時に継子からの白い封筒が目に入った。中には手紙が入っていた。

【光子へ
母から言われた物の一式を送ります。まずは光子が先に有る程度出来ないと愛子ちゃんに馬鹿にされるわよ。頑張ってね。
PS まさか指南書が開かないなんて言わないでよね。そこまでドシじゃないと思うけど…】

手紙の内容は図星だった。

光子は完全に困り果てていた。指南書はそれぞれのステップをこなす事によって次にすべき事が示される様に出来ていた。
つまり運良く開いたにしても、運で出来たくらいの修得なら次に何をすべきかは分からない。完全に行き詰まっていた。

時間はそろそろ昼になろうとしていた。
主婦である光子は取りあえず家事をこなす事にした。
買い物から帰りポストを見ると母のミツから手紙が届いていた。

ひとまず、昼食を簡単に済ませ、届いた母からの手紙を読むことにした。

【光子へ
そろそろ荷物が届いた頃かと思います。電話の様子ではかなりの期間力を使っていなかったみたいなので、一様封印解除が出来るまでの訓練手順を書いた物を送ります。まさか指南書が開かないなんて言って泣きべそをかいているなんていう事は無いとは思うけど、昔からあなたはドジばかりしていたから気になります。
まずあなたには必要の無い物だとは思うけど、これは愛子ちゃんにも必要な事。まずは愛子ちゃんに渡しなさい。

来月にはそっちに行くからそれまでは、二人で頑張って励みなさい。】

光子は、愛子に渡す前にすがる思いで、封印解除までの訓練手順をよみ必要な物を集め早速書かれている事を始める事にした。

いざ始めると、そういえば子供の時にゲームとして同じ事をしたのを思い出した。
改めて、あれが大切な訓練になっていた事に気付き驚いた。
書かれている事をやっているうちに段々感覚を思い出してきて2時間程で書かれていた事が出来る様になった。
そこで改めて指南書に挑戦してみる事にした。
今後はあっけなく開ける事が出来、ほっと胸をなで下ろしたのだった。

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選ばれし者達(4)

翌日愛子が学校に行っている間に荷物が届いた。
光子は早速梱包を解いた。段ボールの中は子供の時に見た懐かしい物が入っていた。

光子は継子に電話を掛る事にした。
「もしもし、姉さん?」
「あぁ光子?ごめんね、今回の事…。光、本人はかなりショックだったみたいだけど、昨日愛子ちゃんからメールを貰ってだいぶ元気になったみたいよ。」

「そう。あ、今日荷物届いたわ。取りあえずこっちで頑張ってみるわね。」

「本当にごめんね。それより光子、力の方大丈夫なの?私が継ぐ事になっていたからあなた全然でしょ?」

「うん。そうなんだけど、やっぱり鈍っているみたいね。」

「そう。取りあえずはあの荷物は3段階まで訓練が出来る物だからあなたが前に身に着けた2段階までは戻せる筈よ。それより愛子ちゃんには最低でもあれを完璧にマスターしてもらわないといけないわ。でもね、それから先は《民》の協力が必要なの。実は母さんが行くって言っていたけど、それでも心配なのよね。」

「そうなの?でもそれからの事は取りあえずはこっちでなんとか考えるわ。」

「本当にごめんね。うちの光は3段階まで身に着けたんだけど、その先、覚醒するかが微妙なのよ。それで《民》の人が悩んじゃってさぁ…だから、愛子ちゃんも早くあれで3段階まで身に付けてその先に覚醒出来る事に期待するしか無いのよ。
二人しかいないから、光か愛子ちゃんかのどちらかしかいないからね…」

「わかったわ。頑張ってみるわね。じゃあまた電話するわ。」

光子は電話を切ってから事の重大性を改めて認識したと同時に先の事について不安を覚えたのだった。

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選ばれし者達(3)

光子は食事中に継承者の話をするつもりだったがなかなか言い出せずにとうとう夕食が終わってしまった。
食事の片付けが終わり一段落してから椅子に座り再びスプーンを手に取り再度意識を集中してみた。

しばらくして目を開けスプーンを見つめて、変化が無かったのを知りまた溜め息をついた。

そんな時に愛子が通り掛かって声を掛けてきた。「お母さんどうしたの?スプーンなんか持って超能力の練習?」
半分冗談のつもりで愛子が言った。

「愛子、実は大事な話があるの」
光子は話を切り出した。
「何?」
怪訝そうな顔をして愛子が尋ねた。

「光ちゃんの事なんだけど…」

「あ、もしかして継承者の話?」

「愛子、何で知ってるの?」
光子は驚いた。

「何言ってるの、今の時代メールだよ?光とはメールをやってるからみんな知ってるよ」

「じゃあ愛子が候補になるかもって事も?」

「うん。力の事もみんな知ってるよ。それに今回の事はしょうがないじゃん。二人しかいないんだし、私の方が3日お姉さんだし…」
割り切った様に愛子が答えた。

光子は誕生日の事についてすっかり忘れていた。愛子と光は同い年だったが、愛子の方が3日早く生まれたのだった。継子の方が姉だったので継承者として継ぐ事が事前に決まっていたので、すっかり継子の子の光が継承者になる者と決まっていると思い込んでいたが、実は愛子の方が先に生まれた、だから継承者としての可能性は始めからあった。

「私は平気だよ。」
愛子はあっけらかんとして答えながら今まで光子が手にしていて今は机の上に放置されたスプーンを手に取り、数秒目を閉じて「はい、あげる」といいスプーンを光子に渡した。

見るとスプーンはなんと柄の部分に2回転捻りがあった。その変化に一番驚いたのは光子だった。
光子自身、確かに愛子の年頃の時はすでに力を持っていたが、今の愛子と比べると出来る事に雲泥の差があった。

「愛子、実は今度おばあちゃんが家にくるの。」光子は言い忘れていた事を思いだし言った。

「え!おばあちゃん?もう10年位会って無いなぁ…。うれしいなぁ」
愛子は微笑んで言った。

「実はね。継承者の件でくるの」

「あ、そうなんだ…」
すっかり遊びに来るかと思っていた愛子は意気消沈して返事をした。

「それでね。継承者として愛子と光のどちらかを最終的に決める事になるんだけど…」

「その話は光から聞いてるよ。光の所から引き継いだ荷物をこっちに送るって言っていたから…それより、お母さん大丈夫なの?スプーン位曲げられないんじゃ力どころじゃないじゃん」

「そうね。正式な継承者としての力は無いにしても、2段階位の力は有ったんだけど20年も使っていないから、鈍っているみたいね。荷物がついたら、頑張って回復させないとね。」

「そうだね。」
そう言うと愛子は部屋に戻って行った。

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選ばれし者達(2)

光子は、スプーンを手に取り何度も試したが、一向に変化する気配が無かった。
時計を見上げ、仕方なく夕食の準備を始める事にした。

「たたいまぁ~」
今時のミニスカートの様な制服を着た、ピンクのマフラーを巻き、黄色の手袋をした愛子が学校から帰ってきた。
「母さん。晩ご飯なに?」
そう話し掛けると同時に冷蔵庫を素早く開け、何か物色するかの様に眺めた。

「今日は、トンカツにするつもりよ。」
テーブルの上にはボールいっぱいのキャベツの千切りが出来ていた。

「何このキャベツの山?幾らキャベツが特売で安かったからって、今日でキャベツ連続3日目よ。おとといがロールキャベツ。昨日が回鍋肉。それで今日がトンカツの付け合わせに大量の千切りキャベツ?ねぇどうにかならないの?」

「うるさいわね。文句があるなら、お好み焼きでもいいわよ。」

「もう…どっちにしてもキャベツじゃない。」

そう言うと愛子は部屋に行ったしまった。

光子は、冷蔵庫の残り野菜を処理するかの様にさらに大量のキャベツと余った人参、玉葱など、適当に入れてさらに野菜炒めを作りあげた。

「お父さん、今日も遅いの?」
部屋着に着替えを済ませた愛子が話し掛けた。

「最近、遅いみたいね。いいから先に食べちゃいましょ!。いただきま〜す。ねぇ、ちゃんとキャベツ食べてよ。最近野菜足りていないし…」
光子が言った。

「何言ってるのよ。ここ最近、毎日キャベツじゃない。私はインコじゃないんだから、もぉ…」
愛子は大量のキャベツの千切りの山にマヨネーズを掛けながら言った。

「キャベツまだまだ沢山あるわよ。」
光子が言った。

「もう…」
「父さんにお好み焼きでも作ったら?」
愛子はキャベツの山に呆れていた。

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選ばれし者達(1) 1章 継承者

1章 継承者

「プルルルル プルルルル」
夕食の献立を考えながら冷蔵庫の中を覗いていた時に突然に電話がなった。
「もしもし、光子。元気してる?」

「あぁ、お母さんどうしたの?こっちは相変わらずよ。」

「突然に電話してごめんね。実は、継子(けいこ)の所の光(ひかる)ちゃんの所に、《民》(たみ)の人が突然に来て…」

「ち、ちょっと待って!《民》ってまだその時にはかなり早いでしょ!どうして?」

「それもそうなんだけど、実は光ちゃんなんだけど、実は継承者としての力がまだ不足しているみたいで、継承者の候補として、光子の所の愛ちゃんが…」

「そんな…だって、継子姉さんが、継承者の血を受け継ぐ者として、今までそのつもりで、全て伝えてあるんでしょ?急に私の所に来ても愛子は全然訓練していないし、困るわよ。」
「私どうしたら、いいの?」

「事情はわかるわ。でも時が来てしまったみたいなの。知っての通り愛子ちゃんは昔から光ちゃんより、優秀だったのは知っているでしょ?
光が無理なら、愛子しかいないんだから分かってよ。」

「でも私…」

「取りあえず、継子にあづけた基礎の覚醒レベルの継承指南書と訓練道具を急いで送る様に頼んだわ。だからあなたの所で愛子ちゃんを継承者としての候補になる様に訓練させて」

「でも…」

「大丈夫よ。最終的な覚醒試験は《民》の人がやる事だし、どちらも駄目だったら、私が光か愛子かどちらかを選ぶ事になってるし、いざとなれば私がその先を伝える様にするわ」

「わかったわ」

「それより、愛子ちゃんに力の事は話していないんでしょ?大丈夫?」

「そうねぇ…。あの子おばあちゃん子だったから、母さんが話はした方がいいかもしれないけど、急ぐ事だからまずは簡単に私から話すわ。」

「そうね。それじゃ近々そっちに行く事にするわね。それまでにまずは届く指南書を読んで、あなたも力を使える様にして置きなさいね。あなた、高校の時以来、力は使っていないんだから、今直ぐに使えるかわからないでしょ?」

「そうね。まさかこんな事になるなんて予想もして無かったから…」
「20年ぶりに久々に頑張ってみるわ」

「それじゃまた。」

電話を切ってから、小さな溜め息をついた光子は、手元にあったスプーンを取り、深く深呼吸をしてから、目を閉じスプーンに意識を集中した。
そして、全く変化をしなかったスプーンを見つめ大きな溜め息をつき一人つぶやいた。
「はぁ…私本当に大丈夫かしら…」

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