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選ばれし者達(47)


その時《草》の通称タマの身には想定外の事が起きていた。

元々《草》の中でも《探りし者達》の下で情報収拾役になるには特別な条件があった。
オーラのコントロールは第一条件だったが、さらに他人から印章に残らない目立たない存在でなくてはならなかった。
ごく普通にいる女の子。体型、身長も普通。さらに存在感が無く、影が薄いと普段言われる位の存在感が要求されていた。

タマは、ダーリンの下に付いている《草》の中でも1番目立たない存在だった為に、ダーリンは今回のターゲットの田中先生に、もっとも近い位置での監視役に付ける事にしていた。

ところが、予想外の事態が起きた。

その時タマは、電車の中でターゲットの田中先生の斜め後ろに立つ位置にいた。始めは全く気付かなかったが、なんと腕を組む振りをして胸を触ってきたのであった。

タマ自身、胸は決して大きい方ではなく、日頃同級生の男子には胸の無さを指摘されて精神的に凹む事も良くあり、いつも気にしていていた。
また、普段の存在感の無い印象を持たれている事からして、まさか自分が痴漢をされるとは夢にも思っていなかった。

タマ自身はこんな事を考えつつ、自分の身に起きている事態を飲み込めずにいたその時に、タマの横にいたミニスカートを履いた女性がいきなり田中先生の腕を掴み、「痴漢!」と言うと同時に、さらに後ろにいた男性が「確保!」と言う声を発し、あっと言う間にその男性が紐を取り出し腕を縛りあげた。

実はタマ自身、全く気付いていなかったのだが、痴漢警戒中の警察官に囲まれる形で自分が位置していて、なんとタマ自身が囮の様になってしまっていた。

次の駅でターゲットと共に駅員室に行く事になり歩いていると、なんと途中に各駅の駅員室の前に待機していた仲間の《草》と目が合ってしまった。

お互いに意識しない様にしていたが、まさか、監視役自身が痴漢に合うなんて言う事態は互いに予想もせず、互いに動揺しているのが感じとれた。

タマの動揺している姿は同行していた婦人警官には、痴漢に遭い動揺していると見えていたらしく、「大丈夫だからね。」などと優しい声をかけてくれていた。

幸か不幸か、タマは、ターゲットの様子を間近で見る形になり報告は楽になるのは確かだったが、痴漢の被害者と言う、想定外の事にホトホト困り果てていた。

その時、タマは気付かなかったが、実は駅員室に入る所は、田中先生に取って不幸な事に学校の生徒にも見られていた。

男が腕を掴まれ、後ろを「大丈夫。」と綺麗な女性が女子学生に声を掛けられながら入る様子を見れば、痴漢とその被害者と言う関係だと言う事は容易に察しがつく訳で、田中先生には不幸な事だが、捕まったわずか数分で、痴漢で捕まったと言う事実は、裏掲示板へと載せられてしまった。

猛烈な勢いで痴漢の情報が広がっていった同じ頃、駅員室前にいた《草》からダーリンを経由して香織の元に第一報が入っていた。

駅員室の中に入ったタマは、電話を掛けたいと伝えると、詳細をダーリンに報告、それが第二報として香織に入った。

香織はこの報告の時点で、愛子に家の電話から電話をかける事にした。

「もしもし、愛子。」

「あ、香織だったんだ、何?」
愛子は携帯電話にメモリー登録されていない見慣れない番号がいきなり表示されたので誰からの電話か、始めはわからなかった。

「田中先生が捕まった。痴漢した相手がなんと監視役に配置した《草》だって!」

「え?監視役を痴漢しちゃったの?」
愛子は意外な成り行きに驚いていた。

「うん。まさか同じ《民》が痴漢に遭うとはね。それより、今メールが携帯に、じゃんじゃん入っているんだけど、もう痴漢した事が漏れているみたい。」

「え?もうバレたの?」

「うん、そうみたい。あ、ちょっと待ってね。あ、理由わかった。痴漢で駅員室に入る所を見た生徒が居たんだって。それで早速掲示板にアップしたらしい。この感じじゃあ、生徒みんなに一気に広まっちゃうね。」

「あらら。」
愛子はそう話している時に、パソコンからチャイム音がして、画面に痴漢をした事の書き込みが上がった。
「あ、香織、今パソコン点いてる?」

「今、映画見てたから、点いてない。」

「今、掲示板に痴漢の話しが出たよ。早速チャットルームで話しが始まったみたい。凄いよ!一気にログインする人が増えてる、今チャットルーム、凄い事になってる。えっと、ざっと20人はいるかなぁ?」

「わかった。こっちもアクセスしてみるね。」
香織はパソコンを起動してサイトにアクセスをして、管理者モードでチャットルームの監視を始めた。

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