« 2009年3月 | トップページ | 2009年5月 »

2009年4月

選ばれし者達(47)


その時《草》の通称タマの身には想定外の事が起きていた。

元々《草》の中でも《探りし者達》の下で情報収拾役になるには特別な条件があった。
オーラのコントロールは第一条件だったが、さらに他人から印章に残らない目立たない存在でなくてはならなかった。
ごく普通にいる女の子。体型、身長も普通。さらに存在感が無く、影が薄いと普段言われる位の存在感が要求されていた。

タマは、ダーリンの下に付いている《草》の中でも1番目立たない存在だった為に、ダーリンは今回のターゲットの田中先生に、もっとも近い位置での監視役に付ける事にしていた。

ところが、予想外の事態が起きた。

その時タマは、電車の中でターゲットの田中先生の斜め後ろに立つ位置にいた。始めは全く気付かなかったが、なんと腕を組む振りをして胸を触ってきたのであった。

タマ自身、胸は決して大きい方ではなく、日頃同級生の男子には胸の無さを指摘されて精神的に凹む事も良くあり、いつも気にしていていた。
また、普段の存在感の無い印象を持たれている事からして、まさか自分が痴漢をされるとは夢にも思っていなかった。

タマ自身はこんな事を考えつつ、自分の身に起きている事態を飲み込めずにいたその時に、タマの横にいたミニスカートを履いた女性がいきなり田中先生の腕を掴み、「痴漢!」と言うと同時に、さらに後ろにいた男性が「確保!」と言う声を発し、あっと言う間にその男性が紐を取り出し腕を縛りあげた。

実はタマ自身、全く気付いていなかったのだが、痴漢警戒中の警察官に囲まれる形で自分が位置していて、なんとタマ自身が囮の様になってしまっていた。

次の駅でターゲットと共に駅員室に行く事になり歩いていると、なんと途中に各駅の駅員室の前に待機していた仲間の《草》と目が合ってしまった。

お互いに意識しない様にしていたが、まさか、監視役自身が痴漢に合うなんて言う事態は互いに予想もせず、互いに動揺しているのが感じとれた。

タマの動揺している姿は同行していた婦人警官には、痴漢に遭い動揺していると見えていたらしく、「大丈夫だからね。」などと優しい声をかけてくれていた。

幸か不幸か、タマは、ターゲットの様子を間近で見る形になり報告は楽になるのは確かだったが、痴漢の被害者と言う、想定外の事にホトホト困り果てていた。

その時、タマは気付かなかったが、実は駅員室に入る所は、田中先生に取って不幸な事に学校の生徒にも見られていた。

男が腕を掴まれ、後ろを「大丈夫。」と綺麗な女性が女子学生に声を掛けられながら入る様子を見れば、痴漢とその被害者と言う関係だと言う事は容易に察しがつく訳で、田中先生には不幸な事だが、捕まったわずか数分で、痴漢で捕まったと言う事実は、裏掲示板へと載せられてしまった。

猛烈な勢いで痴漢の情報が広がっていった同じ頃、駅員室前にいた《草》からダーリンを経由して香織の元に第一報が入っていた。

駅員室の中に入ったタマは、電話を掛けたいと伝えると、詳細をダーリンに報告、それが第二報として香織に入った。

香織はこの報告の時点で、愛子に家の電話から電話をかける事にした。

「もしもし、愛子。」

「あ、香織だったんだ、何?」
愛子は携帯電話にメモリー登録されていない見慣れない番号がいきなり表示されたので誰からの電話か、始めはわからなかった。

「田中先生が捕まった。痴漢した相手がなんと監視役に配置した《草》だって!」

「え?監視役を痴漢しちゃったの?」
愛子は意外な成り行きに驚いていた。

「うん。まさか同じ《民》が痴漢に遭うとはね。それより、今メールが携帯に、じゃんじゃん入っているんだけど、もう痴漢した事が漏れているみたい。」

「え?もうバレたの?」

「うん、そうみたい。あ、ちょっと待ってね。あ、理由わかった。痴漢で駅員室に入る所を見た生徒が居たんだって。それで早速掲示板にアップしたらしい。この感じじゃあ、生徒みんなに一気に広まっちゃうね。」

「あらら。」
愛子はそう話している時に、パソコンからチャイム音がして、画面に痴漢をした事の書き込みが上がった。
「あ、香織、今パソコン点いてる?」

「今、映画見てたから、点いてない。」

「今、掲示板に痴漢の話しが出たよ。早速チャットルームで話しが始まったみたい。凄いよ!一気にログインする人が増えてる、今チャットルーム、凄い事になってる。えっと、ざっと20人はいるかなぁ?」

「わかった。こっちもアクセスしてみるね。」
香織はパソコンを起動してサイトにアクセスをして、管理者モードでチャットルームの監視を始めた。

|

選ばれし者達(46)


愛子は家に着くと、パソコンを起動し、香織の立ち上げた掲示板を見ていた。

掲示板の内容は、今日話しが有った試験の日程の話題で盛り上がっていた。

ふと画面のはじを見ると、掲示板のタイトルの横にあるバージョン表示のバージョンが上がっている事に気付いた。
『新しく機能を追加したらバージョンが上がるから上がっていたら、管理人モードて入り直してね。』香織が掲示板の説明をした時に、こんな話しをしていたのを思い出し、管理者モードでログインし直してみた。

すると、香織よりメールが届いていた。
【いろいろと機能を追加したよ。あと、愛子も私同様に掲示板の管理や制限を出来る様にしたよ。でもあんまり掲示板を増やしたりしないでね。】
愛子はメールを読み終わると早速、管理画面に入ってみた。

以前と比べ、コマンドやメニューが格段に増えていて驚いた。

試しに、掲示板ログイン者情報を見ると今アクセスをしている人の名前と横に何だか不明の時間をカウントしていた。

別にウィンドウを開いて、掲示板の内容を表示させてみてやっとカウントの意味がわかった。

書き込みをした瞬間にその人のカウントがゼロになりリストの順次が1番上に移動した。
リストの下の方には、10分を越えた人の名前が赤くなり15分を越えるとリストから名前が消えていた。

『なるほど、これで誰が今アクセスして書き込みをしているか分かるんだ…』
愛子は関心をしていた。

さらにチャットルーム管理画面に入ると、同様に名前と時間が出ていた。

チャットの内容は愛子が学校に来た事を話していた。

偽名を使ってチャットをしているとは言え、愛子には誰が何を言っているのか、まる見えの状態に少し優越感があった。

同時に開いていた、ログイン者総合リストに香織の名前があるのを見つけたと同じ頃、愛子の携帯電話が鳴った。電話は香織からだった。

「なんだ、愛子ログインしていたんだね。」

「うん。時間があるから覗いてみた。なんか大分、機能が増えたね。」

「うん。今ね、過去のログイン情報の統計が取れる様に改良中。」

「へぇ…。」

「そうそう、ちょっとこれからしばらくチャットルームの部屋数を制限するね。」

「え?なんで?」

「だって田中先生の話しを見たいじゃない?チャットルームが沢山あると話しが分散するでしょ?」

「あ、そういう事ね。」
愛子が返事をするとしばらくして、掲示板やすべてのチャット画面に管理者からのお知らせとして、チャットルームの臨時メンテナンスのお知らせが表示された。

愛子はチャットルームに行くと部屋数が3つに制限されていた。

「ねぇ香織、これからどうするの?」

「え、私?実はこの前DVD借りてきて、まだ見てないから見ようと思っていたんだけど…。愛子は?」

「うん、今日、学校に行ってみて勉強がヤバそうだから、ちょっとやらないとね。」

「そうなんだ。何にしても夕方までまだ時間があるしね。なんか情報が有ったら知らせるよ。」

「うん。わかった。」
愛子はそう返事をすると電話を切った。

愛子はパソコンをどうしようか少し考えてから、一様、チャットルームに人が着たときに音で知らせる設定にしてそのままにしておく事にして、勉強を始める事にした。

しかし、いざ勉強を始めても香織の田中先生が痴漢をするという話しが頭から離れなず、なかなか進まなかった。

一方、香織の方はこれからの事は全く気にしていない様子で、学校帰りに買ってきた、スナックの袋を手に取り、楽しみにしていた映画のDVDを見始めてていた。

実は同じ頃、ダーリンからの指示で田中先生の様子を伺っていた《草》は、実は以外な事態に陥っていたが、愛子も香織も、知るよしも無かった。

|

« 2009年3月 | トップページ | 2009年5月 »