選ばれし者達(38)
愛子は仕方なく、しばらくの間学校を休む事になり暇を持て余していた。
腕の方がまだ少し痛みがあるが、パソコンには幸いにもトラックボールにもなるマウスを使っていたので、不慣れだがパソコンも使える様になってきた。愛子としては香織が立ち上げた掲示板の設定だけは早く済ませたい気持ちがずっとあり、やっと設定を終える事が出来た。
早速アクセスをしたが、まだ書き込みをするにはだ辛いが掲示板を見るだけならなんとか出来る状態になっていた。
香織から話しがあった、情報収集に使っている班を1つくれると言う話しについては何の連絡もないままだった。
ここ数日はパソコンで掲示板を見たり、携帯で意味もなくゲームをしたり、携帯電話で裏サイトの掲示板を見たり、また通院したりの日々が暇な様で暇ではなく、続いていた。
そしてやっと、学校に行ける日が明日となったその晩に香織から電話が掛かってきた。
「愛子、明日学校に来るんでしょ?」
「うん、行くよ。大分空いちゃったから勉強心配なんだけどね。」
「大丈夫。愛子は頭いいし私がノート見せてあげる。」
「わかったけど、香織そんな事して大丈夫なの?」
「まぁ明日学校に来ればわかるよ。もう私の事は、虐めようと思わない様に完璧にコントロール出来ているから。」
「あんまりよく意味がわからないんだけど。」
「つまりね、私が仮に愛子と仲良く話しをしても、誰ひとり、私が愛子と仲良くしてるから私を無視しようよ。なんて思う考えを起こさない様な感覚になっていると言えばわかるかな?」
「すごい。マインドコントロールみたい。」
「うん。そこまで大袈裟な事が出来る力があるといいんだけどね。まだそこまではいかないんだよね。愛子なら出来ると思うけど?」
「え?私が?」
「まぁ、それは先の話しかな?それより、前に出した課題覚えている?多分もう出来るはずだから、学校に行ったら答えを教えてね。」
「あぁ、あの《民》には至らないけど、少し力がある人がクラスにいるから誰だか当ててってやつ?」
「そう。多分今の愛子ならあっけなく出来るはずなんだけど、一様これも区切りだからね。」
「うん、でも自信ない。」
「大丈夫だって、今の愛子の力、前と比べ物にならない位に上がっているんだよ。出来たら約束した力の使い方を教えるから…」
「うん。わかった。」
「でもあれは教えると言うよりは、コツを教える位で出来るレベルの事だから愛子なら1分も掛からないかもよ。」
「そうなの?」
「うん、でも直接会わないとうまく教えられないから、何にしても明日以降だね。」
「そうなんだ。」
「うん。まずは早く腕を直さないとね。例の《民》の班を譲る話しもあるしね。」
「そうそう。そっちどうなったの?」
「もうメンバーは揃って話しは済んでいるよ。後は班長を愛子に会わせて、二人で調整する位かな?結局、全部で《民》が数人その下にそれぞれ《草》が4人は就く事になるから、班としては10人くらいになるかな?」
「それって私が10人を動かすって事?」
「まぁ実際には愛子が班長に指示を出すと10人が動いて調べてくれると言う訳。でも《民》が4人いるから、個別に指示を出す事も当然出来るよ。まぁその辺も相談して決めてよ。それより、班長をなんて呼ぶか考えておいてよ。班長って言葉は普段使ったら不自然だから、個人名やあだ名みたいなのがいい。」
「香織はなんて呼んでいるの?」
「私?…ダーリン。」
「ん?ダーリン?」
「そうダーリン。他人からは彼氏の事だと思うでしょ?だから人のいる前で、連絡をとっても不自然じゃないし、あまり印象にも残らない。そういう事。」
「なるほどね。」
「愛子もそういう名前を考えておいてよ。」
「そんな事言われても難しいよぉ。」
「まぁそんな複雑に考えなくていいからさぁ。電話とかメールで後から何か見られても怪しまれない名前ならいいんだから…」
「あーちゃんとか、ちぃーちゃんとかでも平気かなぁ?」
「そんな感じでいいよ。ただ、さすがに、ポチとかタマとかミケとかは勘弁してね。それじゃペットだから。」
「猫じゃないんだから、そんな名前は付けたりしないよ(笑)」
「じつは、昔そういう人がいてね。まぁ実質的には支障ないけど、電話の時に不自然でね。猫が電話に出る訳ないんだから…」
「大丈夫。何か考えておくよ。」
「そうそう愛子。明日の朝迎えに行くよ。いろいろ直接話しをしたい事もあるし」
「え?でも大丈夫なの?」
愛子はわざわざ迎えに来る事に驚いていた。
「大丈夫。大事な話しをしたいんだ。」
香織はそう答えた。
「うん。わかった。じゃあ一緒に行く。」
「じゃあ明日ね。」
香織は明るく答えると電話を切った。
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