選ばれし者達(36)
香織の携帯に電話をしたがなかなか電話に出なかった。10回ほどコールした時に電話が繋がった。
「もしもし…。」
愛子が呼びかけたが、何も返事がない。
「もしもし…香織、起きてる。」
もう一度呼び掛けた時に反応があった。
「ふぁ〜…。ん〜…。」
「香織。寝てた?」
愛子はバツが悪そうに聞いた。
「あ〜愛子?こんなに早くどうしたのぉ?まだ頭の中、寝てる。」
香織は寝ぼけている様子だった。
「香織、ごめんね。起こしちゃったみたいだね。」
「うん。大丈夫。今起きた。」
「香織、メール読んだよ。」
「あ、メールね。」
「香織、いろいろとごめんね。みゅーみゅーが来た時は注意するね。
それより、私このままじゃ、ブタになっちゃうよ?」
「え?な〜に?」
香織は自分がメールした事を忘れていた。
「だって、ケーキバイキングに、スベシャルハンバーガーに、びっくりパフェに、焼肉食べ放題をご馳走してくれるんでしょ?(^_^)」
愛子は香織がお詫びとしてご馳走すると言ったメニューを並べて言った。
「ははは、そんなに沢山になった?それたげ食べたらブタになるね。ごめんごめん。あのメール、昨日の晩あの電話を貰った時から今日の明け方までかかって調べた事をそのつどメールしてたから、あんまり考えてなかった。」
「まぁいいよ。今度何かご馳走楽しみにしてるね。それよりメールみたけど、とりあえずは気をつければ《民》の事は平気みたいだね。」
「まだ、確定とは言えないけど、多分大丈夫だと思う。」
「ありがとう。それじゃね。2度寝すると遅刻するよ。」
「ありがとう。多分大丈夫。」
そう言うと香織は電話を切った。
電話が終わる頃にちょうど起きる時間になっていた。
朝食を家族でとっている時、母親から、今日の午後に先生が家に来る事を聞かされた。
愛子は《民》の事もあり念のため先生達には会いたくないと母親に伝え適当な理由でごまかして欲しいと頼んだ。
午後になり、担任の先生とみゅーみゅー、それに何故か学年主任までついて来ていた。
愛子はすぐに帰ると思っていたが、意外にも話しが長くなり時間を持て余していた。
『早く帰らないかなぁ』
こんな事を考えながら携帯電話で香織が作ってくれた裏サイトを見ていた。
相変わらずのくだらない根も葉も無い噂レベルの話題で盛り上がっている中、愛子の家に担任が行くと言う話しが出ていた。
その書き込み以後、盛り上がっていた掲示板の雰囲気が変わり、神妙な雰囲気の書き込みが並んでいた。
愛子自身、どういう事なのか不思議だったが、遠回しに書かれた内容からどうやら、いじめの事がバレるのではないかと言う不安がある様だった。
この事を知り愛子はやっと学年主任がついてきた理由が何と無くわかった気がした。
掲示板の中で一番不安がっていたのは、いじめを主導していた4人だった。必死に口裏合わせをするように、細かくお願い事を書き連ねていた。
そもそもの事件に一番関係している香織の事は全く触れていない事に愛子は違和感を感じていたが、掲示板には、いじめの事実を隠す事で必死な書き込みが並んでいた。
夕方になり先生達がやっと帰って行った。
愛子はいじめの話しが出ていろいろと聞かれると思い、心の準備をしてからリビングに下りて行った。
片付けをしている母の様子はいつもの様だった。
「お母さん、随分話し長かったね」
愛子は恐る恐る言った。
「うん。案外に保険の書類ってややこしくてね。先生達も詳しくないみたいで、書くのに苦労しちゃったの。」
「とりあえずはいくらかは保険がでるみたいよ。」
愛子はいじめの事かと思っていたので安心した。
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